写真はイメージです(写真:ペイレスイメージズ1/PIXTA)

生活習慣病の方々は往々にして、脂肪を肝臓にため込んだ「脂肪肝」という状態になっています。モノクロの超音波検査の世界で言えば、肝臓が真っ白の状態です。超音波検査専門の検査技師として30年間、述べ15万人の内臓を見てきた高渕維斗氏は、「脂肪肝は軽く見られがちですが、まったく侮れません」と言います。本稿は、高渕氏の著書『内臓がきれいになる自分の整え方 「感情習慣」が病をつくる』より一部抜粋・再構成のうえ、「脂肪肝」の不都合な真実をご紹介します。

痛くはないが明らかに異常な状態

摂取したのに余ってしまったエネルギーは、脂肪という形になって肝臓にも蓄えられます。ここまでは誰でもそうなのですが、あまりにもエネルギーが過剰になると、異常な量の脂肪が肝臓に蓄積されます。肝細胞にどんどん脂肪がたまっていき、全肝細胞の30%以上が脂肪化している状態を「脂肪肝」と言います。検査技師は診断はしませんが、超音波検査では、プローブを当てた瞬間に、脂肪肝かどうか判断できます。

検査中、そんな方に「今まで何か異常を指摘されたことはありますか?」と聞くと、多くの方は「ありません」と答えます。ところが「脂肪肝と言われたことはありますか?」と聞くと「それは毎年言われます」と答える方が多いのです。つまり、脂肪肝を異常ととらえている方が少ないのが現状なのです。

何の症状も出ないので、気楽に考えていらっしゃるかもしれませんが、残念なことに脂肪肝は、画像で見ても明らかに異常な状態です。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、脂肪肝になっていても痛くなったりはしないのです。

痛くなれば、お医者さんに行こうという気にもなるでしょうし、真剣に改善しようととり組むでしょうが、痛くもかゆくもないのですから、そんな気持ちには、なかなかなれません。しかし脂肪肝は、さまざまな病気の入り口に立っているというサインなのです。

実際、放っておく方が多い脂肪肝ですが、一体何がいけないのか、詳しく見ていきましょう。


(出所)『内臓がきれいになる自分の整え方 「感情習慣」が病をつくる』

肝臓は、エネルギーを蓄える以外にも、たんぱく質の合成、有害物質の分解や解毒、そして、消化に必要な胆汁をつくって消化液として分泌しています。実にさまざまなことをしてくれているんですね。そんな肝臓に負担をかけ続けることになるのが、脂肪肝という状態です。

余ったエネルギーを脂肪に変えて肝臓に蓄えていくと、ちょっと専門的に言えば、細胞膜の透過性が高くなったり肝細胞が壊れたりします。血液検査での酵素の値AST(GOT)、ALT(GPT)は、肝細胞の壊れ具合と比例しています。肝細胞が壊れると、細胞の中にある酵素AST(GOT)、ALT(GPT)が血液中に出てくるためです。このように、脂肪をため込むことによってどんどん肝細胞が壊れていきます。

さらに内臓脂肪組織は、人体最大の内分泌臓器とも言われ、善玉ホルモンと、悪玉ホルモンを分泌します。脂肪細胞が大きくなると、ホルモン分泌のメカニズムに異常がおこり、悪玉ホルモンの分泌が増えます。

この、悪玉ホルモンが過剰に肝臓に流れ込むことにより、肝臓で炎症が起きて不純物の処理が追いつかなくなり、酸化ストレスが発生します。すると、さらに炎症が強くなるため、慢性肝炎から肝硬変、ひいては肝臓がんを引き起こします。実際、超音波検査で見つかる肝臓がんの方々は、脂肪肝を放っておいた方がほとんどです。

肝臓がんの約1割は食べすぎが原因

アルコール性の肝硬変は、お酒を飲むことによって脂肪肝になった後、慢性肝炎になり、肝硬変になる、という道をたどります。ですので、お酒を飲む方は、脂肪肝と言われた段階で、異常は始まっています。アルコール性の肝硬変のうち、14%は肝臓がんになるとのデータがあります。

肝臓がんの原因のうち、割合が多いのはウイルス性の肝硬変で、全体の約7割。次にアルコール性の肝硬変で約2割。残りの1割がそれ以外、すなわちNASH(非アルコール性脂肪肝炎)からの肝硬変です。

NASHは、平たく言えば、アルコール以外の原因で脂肪肝になった状態が長く続くことによって起こる肝硬変。甘いものや脂っこいものが原因というわけです。その数は、肥満人口の増加に伴い、急増しています。そしてNASHと診断された人の11.3%が、肝臓がんになるとのデータがあります。「食べすぎでがんになる」なんて、信じられないかもしれませんが、実際にあり得ることなのです。

成人男性の約4割、女性の約2割が脂肪肝

NASHの手前の状態である脂肪肝も、当然、年々増加傾向です。データでは成人男性の約4割、成人女性の約2割となっていますが、私が検査をしている東京都内に限って言えば、もっと多い印象があり、肌感覚では検査に来た方の半数近くが「内臓が汚れている」という印象があります。

脂肪肝とは、シンプルな言い方をすれば、

 .┘優襯ー過多(食べすぎ)の状態が過去にあった、または今現在その状態が続いている

◆_甬遒某瓦簑里紡擇蠅あった、または今現在その状態が続いている

 今現在糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞など生活習慣病の入り口に立っている

ということなのです。

つまり、脂肪肝は、今、なんとかしなければならないシロモノであり、絶対に放置してはいけないものだということです。脂肪肝は、エネルギー過多=食べすぎ、飲みすぎを改善したり、ストレスを減らすことで改善します。


(高渕 維斗 : 検査技師)