「iPhone 15」迷う人に伝えたい3つの進化と注意点
9月22日に発売されたiPhone 15シリーズ。写真はフレームにチタンを採用したiPhone 15 Pro(筆者撮影)
9月22日に、iPhone 15シリーズが発売された。Lightningに代わって4機種共通で採用されたのが、「USB-C(USB Type-C)」端子。AndroidやWindows PCなどでもおなじみの共通仕様で、充電ケーブルや周辺機器との互換性が高まったのは大きな特徴だ。また、「iPhone 15 Pro/Pro Max」は、デザインも一新。ボディにチタンを採用したことで、軽量化も果たしている。
カメラ機能が進化したiPhone 15シリーズ
また、Proモデル2機種は側面にアクションボタンを備え、特定の機能を一発で呼び出せるようになった。アクションボタンは、2022年に発売された「Apple Watch Ultra」に導入されていたが、アップルはこの仕組みをiPhoneにも援用した格好だ。「集中モード」の呼び出しや、カメラの起動といった動作をボタン一発ででき、操作性も向上している。
さらにiPhone 15 Pro Maxのみ、新たに120mm(5倍)の望遠カメラを搭載。一般的に高倍率の望遠レンズはレンズが暗くなりがちだが、iPhone 15 Pro MaxのそれはF値2.8と比較的明るく、光量の少ない場所でも利用しやすい。
望遠カメラのない「iPhone 15」や「iPhone 15 Plus」もメインカメラのセンサーを4800万画素に増やし、2倍ズームを可能にするなど、シリーズ共通でカメラ機能が進化している。iOS 17で実現した機能の多くは過去のモデルでも利用できる一方で、ハードウェア依存の機能はiPhone 15シリーズだけの特徴。
このような進化点に魅力を感じれば、買い替える価値があると言えるだろう。ここでは、そんなiPhone 15シリーズの特徴をUSB-C、アクションボタン、カメラの3つにフォーカスしてそのメリットや仕組みを解説していく。
USB-Cをシリーズ共通で採用したのは、iPhone 15シリーズの大きなトピックの1つだ。
USB-C対応は、大きなトピックの1つだ。ただし、Proの場合、同梱のケーブルだと10ギガビット秒の転送速度が出ない点は要注意(筆者撮影)
背景には欧州がスマホへのUSB-C搭載を2024年末から義務づけたことがあるが、LightningからUSB-Cに変わった結果、ユーザーの利便性も高まっている。
ケーブルを他の機器と使い回せるのは、そんなメリットの1つだ。アップル自身もiPadやMacでUSB-Cを採用しているほか、Androidのスマホ、タブレットやWindowsパソコンでもUSB-Cが一般的になりつつある。こうした機器を併用する際に、ケーブル1本で済むので経済的だ。
USB-C対応で広がる周辺機器、転送速度もアップ
また、周辺機器による拡張性の高さも、USB-C採用のメリットと言えるだろう。例えば、USB-Cを採用したメモリを直接挿してデータを移したり、ディスプレーに映像を出力したり、MacとiPhoneをつないでMac側でシャッターを切る「テザー撮影」などが簡単にできる。Lightning版を発売している機器もあったが、USB-C対応によって周辺機器に広がりが出るのと同時に、よりリーズナブルな製品を選択できるのは魅力と言っていいだろう。
iPhone 15 Pro/Pro MaxのUSB-Cは「USB 3.2 Gen 2」という規格に準拠しているため、最大で10ギガビット秒の転送速度を実現している。このスペックを生かし、データサイズの大きくなる「ProRes」フォーマットの4K、60fpsの動画を、iPhoneにつないだストレージに直接書き込んでいくこともできるようになった。高速化しているため、撮った動画をパソコンで編集するために取り込むことが多い人にとってiPhone 15 Pro/Pro Maxは必須と言ってもいいだろう。
ただし、ProモデルではないiPhone 15/15 Plusは、転送速度が480メガビット秒にとどまる。これは、USBの仕様が「USB 2.0」のままのためだ。iPhone 14シリーズまでのLightning搭載モデルも、USB 2.0だったため、転送速度は同じ480メガビット秒。転送速度を重視してiPhone 15シリーズを購入するのであれば、iPhone 15 ProかiPhone 15 Pro Maxのどちらかになる。
注意点として、同梱されているUSB-Cのケーブルが10Gbpsの転送に対応していないことが挙げられる。iPhone 15 Pro/Pro Maxの実力を引き出したければ、別途USB 3.2 Gen2対応のケーブルを購入しなければならない。どのケーブルがどこまでのスペックに対応しているかがわかりづらいのが、USB-Cの複雑なところ。安いものなら1000円台で販売されているため、大きな負担ではないものの、ひと手間かかることは覚えておきたい。
iPhone 15 Pro/Pro Maxに搭載されたアクションボタンも、ハードウェアとしての大きな変更点だ。iPhoneは、初代モデルから消音モードに切り替える「着信/サイレントスイッチ」が採用され続けてきたが、この2モデルでは、ついにそれが廃止された。アクションボタンは、その代わりとして採用されたものだ。このボタンは着信/サイレントスイッチと同じ物理キーだが、スイッチではなく、押し込むタイプのボタンになっている。0.5秒の長押しで、あらかじめ指定した機能が起動する。
アクションボタンには、さまざまな機能を割り当てることが可能。ショートカットを使えば、アプリを一発で呼び出せる(筆者撮影)
カスタマイズで価値が高まる「アクションボタン」
着信音のオン・オフだけしか制御できなかった着信/サイレントスイッチとは異なり、アクションボタンでは、ユーザーがある程度自由に機能を割り当てることができる。これまでと同じ着信/サイレントの切り替えに加え、カメラの起動やフラッシュライト、集中モードのオン・オフ、ボイスメモの起動など、多彩な設定項目が用意されている。よく使う機能を割り当てておけば、操作がスムーズになるはずだ。
ただし、標準では、好きなアプリをアクションボタンに割り当てることができない。例えば、iPhoneでPayPayなどの決済アプリをよく使う人は、それを設定しておき、支払いの際にサッと呼び出したいはずだ。SNSの利用が多い人は、X(旧Twitter)やFacebook、Instagramをボタン1つで呼び出せると便利。ビジネスユースでメールのチェックが頻繁という人なら、メールアプリを割り当てておきたいはずだ。
任意のアプリを呼び出したいときには、アクションボタンに設定できる「ショートカット」を活用する。ショートカットとは、特定の操作や動作をあらかじめ記録しておき、それをワンタップで実行するための標準アプリ。任意のアプリを起動させるだけのショートカットを作成しておき、それをアクションボタンに割り当てれば、アクションボタンをそのアプリの専用ボタンにすることが可能だ。
ショートカットの作成方法は次のとおり。まず、ショートカットアプリを開き、画面右上の「+」ボタンをタップ。「アクションを追加ボタン」を押し、「すべてのアクション」か「スクリプティング」の中から、「アプリを開く」を選択する。これで、ショートカットが追加される。リンクになっている「アプリ」をタップし、起動させたいアプリを指定する。最後に「完了」をタップすると、ショートカット一覧に「アプリを開く」が追加される。
ここで追加したショートカットを、アクションボタンに割り当てればいい。最初から用意されているアクションボタンの動作だけでは、できることが限られてしまう。せっかくの新機能をより便利に使いたければ、ショートカットをフル活用するのが正解だ。この応用で、アクションボタンだけでスクリーンショットを撮ったり、特定のサイトを開いたりといったことも可能になる。応用の幅が広いため、自分なりのカスタマイズをしてみることをお勧めしたい。
もう1つハードウェアで大きく変わったのが、カメラだ。特に、iPhone 15 Pro Maxは新たに120mm(5倍)の望遠カメラを採用し、高画質なズームが可能になった。1倍から5倍までの間はデジタルズームで補うが、メインカメラの画素数が4800万画素と高く、2倍までは切り出しで画質劣化のないズームが可能。また、デジタルズームを併用すると、最大で25倍までズームができる。ここまで引き延ばすと画質の劣化は目立つが、10倍程度までなら許容範囲。被写体に近づきづらいようなシーンで、重宝する。
大きく変わったカメラ、Proの画角切り替え機能も便利
これまで、型番に「Pro」とつかないスタンダードモデルのiPhoneは、望遠カメラを搭載していなかった。iPhone 15/15 Plusでも、そのカメラ構成は変わっていない。一方で、両モデルとも、メインカメラを4800万画素に刷新。この高い画素数を生かし、中央部分を撮像素子から切り出すことで、2倍まで劣化のないズームができるようになっている。「iPhone 14 Pro/Pro Max」以降のプロモデルでも同様のことはできるが、望遠カメラがないiPhone 15/15 Plusでは貴重な機能と言える。
画素数の高いセンサーを搭載することで、1倍と2倍の画角を1つのカメラで補えるようになったというわけだ。2倍ズームといっても、それほど被写体に寄れるわけではないが、料理など、近くのものを写す際に、影が映らないよう被写体から離れて撮ることが可能だ。「iPhone 14/14 Plus」でもデジタルズームで同様の撮影はできたが、わずかだが画質が劣化していた。このようなカメラのクオリティを求めるなら、過去のモデルからiPhone 15/15 Proに乗り換える意義はある。
カメラ機能も、シリーズ共通で大きく進化している。iPhone 15 Pro/Pro Maxは、標準の画角を3つから選択できるようになっている(筆者撮影)
また、iPhone 15 Pro/Pro Maxは、一部カメラのユーザーインターフェイスが変わり、メインカメラの画角の変更をしやすくなっている。この2モデルは、メインカメラを24mm、28mm、35mmに変更することができる。レンズの画角は24mmだが、約1.17倍の28mmや1.46倍の35mmを選択し、それを標準設定にすることができる。これは、ズームのための機能というより、レンズ交換式カメラのように画角を調整するための機能だ。
被写体にある程度近づいてポートレートを撮る際に35mmを選択したり、少し背景を広く写せる28mmにできたりと、撮影の幅が広がる。他のiPhoneでも同様のズームはできたが、ズームリングを微調整していく必要があった。これに対し、iPhone 15 Pro/Pro Maxでは、「1倍」と書かれたボタンをタップするだけで切り替えができる。レンズ交換式カメラと相性のいい操作体系なだけに、カメラに慣れた人にもお勧めできる1台と言えそうだ。
(石野 純也 : ケータイジャーナリスト)