和田秀樹氏が考える「健康診断は不要」な理由。“ムダな医療”が増えるほど、あなたの給料が減る

年に一度、体の状態を知らせてくれる健康診断に今、疑問の目が向けられている。厚生労働省が内容の見直しを検討するなど、「本当に効果があるのか?」という声が高まっているのだ。健康診断の結果は本当に鵜呑みにしていいのか。その裏にある“医療のホンネ”に迫った!
◆「ムダな医療」が増えるほど、あなたの給料が減る
「今、日本では院外処方が原則で、薬をいくら出しても収入が同じなので、病院は薬では儲かりません。稼げるのは、検査やワクチン注射薬。特に腫瘍マーカーなどは“ドル箱検査”なので、エビデンスが怪しいにもかかわらず、検査メニューに載せる病院がなくならないのです」
そう話すのは、精神科医の和田秀樹氏だ。「健康診断は不要」と言う和田氏だが、では63歳の現在はどのように健康と向き合っているのか?
「年を取れば健康診断の基準値をはみ出すのは当たり前。なので、私は自分が気になるところだけを定期的にチェックして数値を追っています。例えば私は重度の糖尿病なので、合併症が起こっていないかを調べるために腎機能の検査を3か月に一度、眼底の検査を半年に一度と、あとは心臓ドックを5年に一度受けているぐらいです」
◆値を下げすぎると…
薬との関わり方にも和田氏ならではのルールがある。
「血糖値を抑える薬を普段飲んでいますが、値を下げすぎると今後は意識障害を引き起こす危険性が出てくるので、数値は基準値よりも高めでコントロールしています。
血糖値を抑える薬は血糖値が300を超えると飲みます。医師の言うままに常用薬を増やす人が多いですが『多剤併用』と言って、6種類以上の薬を飲むと意識障害を引き起こす可能性がグンと増えるのです」
言うなれば、オーバードーズに近い状態になるわけだ。
「昼間なのに寝ぼけたような状態が続いてしまうのが意識障害の症状で、それが家の中ならいいんですが、もし車の運転中に起こったらどうなるか。これはあくまで私見ですが、頻発している高齢者による自動車暴走事故は多剤併用が原因で起きている可能性もあると思っています」
◆過剰服薬の温床に…
健康診断はこのような過剰服薬の温床にもなっている。
「自由診療の場合は、どれだけ高くても個人の選択なのでまだいいです。ただ、健康診断は国が強制してやっていること。それによってムダな医療が増えるのはおかしい」
◆健康保険料、赤字になれば…
ムダな医療が増えることは、当事者以外にも不利益を生む。
「日本は国民皆保険だからコスト意識が低いですが、健康保険料は赤字になれば、それだけ翌年の健康保険料負担が増えます。つまり、ムダな薬や検査・治療が増えれば増えるほど、あなたの手取り額が減るわけで、みんな他人事ではありません」
健康診断の罠にハマることは、自分の体だけでなく財布も痛めることになるのだ。
【精神科医 和田秀樹氏】
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。30年以上にわたり、高齢者医療に携わる。著書『80歳の壁』は’22年年間ベストセラーに
取材・文・撮影/週刊SPA!編集部
※9月26日発売の週刊SPA!特集「[健康診断]の罠」より