ビールの「秋味」は普通のビールと何が違う?実際に飲んで検証してみた

ようやく暑さもやわらいできた昨今。秋になるにつれ、スーパーやコンビニのアルコール棚も赤く色づく――。そう、ビールの秋商品が各社から続々と登場してきます。夏にも負けないくらい、秋だけの限定品は多いようです。
そもそも、ビールには四季による味わいの違いがあるのでしょうか? というわけで今回は、「秋味ってなんだ?」と銘打って、大手ビールメーカー・キリンの広報の方にお話を伺いました。どうやら赤を基調としたラベルだけではない、秋ならではの魅力があるようです。
◆「秋味」ってなに?
「まず当社の秋味の一番の特徴は、麦芽の使用量が通常の『キリンラガービール』の1.3本分だということ。それによって、実りの秋が感じられる、濃厚で力強いボディが生まれるんですよ」と、広報ご担当者さん。
なおパッケージには「この商品が紅葉狩りのように秋の風物詩になれば」という想いが込められているのだそうです。
飲み方としては、「夏のビールと同じ感覚で、喉の渇きを潤すように流し込むというよりは、ひと口ずつちびりと飲みながら、リッチな味の広がりを堪能してほしいです。そのためにも、食事と一緒にではなく、まずはビール単体で味わってみてください」とのこと。
◆「秋味」を実飲!
というわけで実際に飲んでみました。
夏のバーベキューで肉かっ食らいつつ飲むビールも最高ですが、ここは料理やアテなしのビール単体で味わってみることにしましょう。
缶のままだと鉄臭さを若干感じてしまうので、味わって飲みたいビールほど、グラスに注ぐひと手間をかけたいところ。
久しぶりに飲みましたが、麦芽の自然な甘みと旨みがかなり濃い! まろやかなクリーミーさすら感じます。一気に喉に運ばずに、口の中でしばし味わっていると、ふくらみのある麦の風味も上がってきますね。そのぶん苦みや発泡は控えめに思えるので、ビールが苦手な方もトライしやすいかもしれません。
温度が少し上がると、麦の香りと甘みがいっそうふくよかに。むしろキンッキンに冷やさないほうが魅力を堪能できそうです。
◆ホップにも“旬”がある!
そして実はもうひとつ、秋のビールならではの特色があるんです。注目するのは、麦芽と並びたつビールの二大要素「ホップ」。日本で収穫時期を迎えるのは、7月〜9月初旬ごろなんです。特に、収穫してから24時間以内に醸造工程に回されるものは“フレッシュホップ”と呼ばれ重宝されています。
つまり製造期間を加味すると、ちょうど夏の終わりから秋口に、旬のホップを使ったビールが出始めるというわけです。
そもそもホップってなに? という方も少なくないと思うので、軽く補足しておきましょう。ホップとは麻科の蔓性植物で、小さい松ぼっくりのような楕円形の毬花(きゅうか)をつけるのが特徴。その毬花を醸造過程で加えることで、ビール独自の苦みと香りが生まれます。ハーブやトロピカルフルーツが入っているかのような華やかな個性を、ホップで演出することもできるのです。
なお、ホップの新鮮さが体感できる『キリン一番搾り とれたてホップ』も11月に限定リリースされる予定とのこと。こちらも通常のビールと飲み比べると、旬のホップの個性をより感じられるかもしれません。
◆少しずつ飲みたいリッチな味
濃厚な麦芽の味わいと、旬のホップの鮮やかな香り。秋の限定ビールは、この二点に注目して選んでみると、いっそう楽しめそうです。
これから気温が下がってくる季節のビールの飲み方として、「ゆっくりと、少しずつ味わう」というのをぜひとも試してみてください。冷蔵庫から出してすぐに飲まなくても、むしろ温度が少し上がったくらいのほうが美味しい、ということも意識してもらえるとよいでしょう。
だんだんと涼しくなってくる秋の夜長は、ビール片手にベランダで月を眺める――なんていうのもオツかもしれません。
取材・文/川瀬章太
【川瀬章太】フリーライター。神戸・大阪の編プロに8年勤務し、グルメ・街ネタ誌や飲食業界誌などを手がける。取材経験は1500件以上。某純文学新人賞の最終選考に3度残ったことがある。現在はWEBサイト「LIQLOG」などで、ビギナーにやさしいお酒の基礎知識や取材記事を執筆中