この記事をまとめると

■かつてクルマを評価するうえでよく語られた単語などを紹介

■技術がまだ発展途上だったために、かつてのクルマはネガな要素が目立っていた

■最近では技術が進歩したのでかなりネガな部分は解消され、それを表す単語も少なくなった

懐かしいあの単語もいまではほぼ死語に

 クルマの評価にも流行り廃りがあるというか、技術の進歩で近頃ではあまり耳にしなくなったフレーズもある。今回はそうした最近聞かなくなってきたネガティブな用語を拾っていってみよう。

FF=フロントヘビー

 車体の前方にエンジン、ドライブトレインが集中するFF車は、どうしても前後の重量バランスがフロント寄りになってしまう。フロントの慣性重量が大きいということは、直進性に優れる反面、曲がりにくくてアンダーステア傾向になるのが宿命。そのため、FF車はいつも「フロントヘビーだから云々」との評価がついてまわったものだが、昨今そのことが強調されるクルマは少なくなった。

 これはフロントヘビーのFF車が減ったからではない。

 たとえば、スズキのスイフトスポーツの前後重量バランスは、64:36。ホンダ・シビックタイプRもFK2が65:35、FK8が62.5:37.5ぐらい。ルノーメガーヌRSが63:37なので、FRの理想とされる50:50に比べれば、はるかにフロントヘビーだが、重量配分が悪いという話はあまり聞かない。それはボディの進化、タイヤの進化、サスの進化、エアロの進化、etc.で、アンダーステアが抑えられ、「曲がる」FF車になってきたからだろう。

テールハッピー

 テールハッピーとは、お尻を振りやすいクルマのこと。コーナーリング中に簡単にリヤタイヤが横滑りしやすい特性のことだが、ESC(横滑り防止装置)が標準のいまのクルマではまずあり得ないし、ESCをカットしたとしても、自動車メーカーとしては、スピンしやすいクルマを量産するのはタブーとしている部分があるので、テールハッピーなクルマが姿を消してもうずいぶん久しい。

トルクステア

 駆動力の左右差によって、ハンドルを切っていないのにクルマが曲がろうとする現象のこと。FF車もしくは4WDで、発進および加速時に生じるもの。

 原因は、左右のドライブシャフトの長さの違いや重量の違いで、トルクの大きいエンジンを積むクルマほどトルクステアが発生しやすい。とくにコーナーリング加速時に発生することが多いので、スポーティなクルマほど喰らわれる悪癖だったが、力学的な問題なので、等長ドライブシャフトなどを採用することで、ほとんどのクルマが気にならないところまで改善されている。

ドッカンターボ

 国産乗用車のターボエンジンは、1979年の日産セドリック(5代目430型)からはじまるわけだが、1980年代初期のターボエンジンは、まだターボの制御技術が未熟で、エンジンの排気量に対しターボチャージャーのサイズが不釣り合いだったこともあり、負圧域はただの低圧縮NA=どん亀で、インターセプトポイントを超えると、ドンといきなりトルクが出るクルマが少なくなく、こうした特性を“ドッカンターボ”と呼んでいた。

 いまではレーシングカーやチューニングカーでもドッカンターボは絶滅に近い状態で、ドライバビリティのいいターボが全盛期を迎えている。

当時の人たちからすれば苦い思い出にも

ターボラグ

 ターボチャージャーは、エンジンの排気ガスを使ってコンプレッサーをまわす仕組みなので、コンプレッサーを力強くまわし、ターボを効かせるためにはある程度の回転数が必要。しかし、クルマは走行中、加速と減速を繰り返すので、減速時、アクセルをオフにして回転数を下げてしまうと、低回転からアクセルを踏んで、再びターボが効きだす回転数になるまでは若干のラグが生じてしまう。これがいわゆるターボラグ。

 しかし、最新のターボ車は、レスポンスのいいボールベアリングタービンを使ったり、多段ATが増えたり、ダウンサイジングターボを中心に、少ない排気エネルギーでも効率よく回転する、小径タービンを採用しているので、ストレスを感じさせるほどターボラグラグが大きなクルマはかなり少数派だ。

トルクがスカスカ

 エンジンのトルクには山があり、回転が上昇するにつれてトルクが大きくなっていくが、やがてピークを迎えて、あとは回転数が上がっても、トルク自体は小さくなっていく宿命にある。そのため、実用域を重視すると、低速トルクは大きいが、高回転ではスカスカになり、反対に高回転を重視すると低回転がスカスカに……。

 しかし現在は、技術の進歩で、可変バルブタイミングやホンダのVTECのようにバルタイだけでなくリフト量まで可変させたり、ターボチャージャーと組み合わせたりすることで、ピークトルクが1600回転から4500回転までキープさせるような、トルクバンドが幅広いエンジンも登場して、虚実でいえば、アイドリングに近い低回転から高回転までスカスカ領域のない、全域「実」のエンジンに近づいてきている。

ガソリンがぶ飲み

 環境性能、燃費性能が重視される昨今と違い、バブルの頃は燃費を気にする人も少なく、ガソリンをがぶ飲みする大食らいなクルマも多かった。

 ターボ車では3ローターのユーノスコスモやRX-7、スカイラインGT-R。これらは街乗りだとリッター5km以下のことも!

 NAではスバルのアルシオーネSVX(街乗りでリッター4〜5km)。じつはユーノスロードスター(NA6)も1.6リッターのNAで120馬力しかないのに、リッター10kmも走らないことが多かった! もうこういうガソリンがぶ飲みのクルマは出てこないだろう。

ボディがヘロヘロ

 ボディ剛性が低いクルマのこと。ボディ剛性の重要性はメーカーも知り尽くしているので、「ボディ剛性がいまひとつ」とか、「サスの取り付け剛性がやや足りない」といわれるクルマがあったとしても、「ヘロヘロ」「やわやわ」とか、ボディ剛性がまったく足りないと酷評されるクルマは、今後出てくるとは思えない。

 以上、いまでは懐かしいネガティブフレーズだが、これからも指摘され続ける点があるとすれば、ブレーキの容量不足。それから車重の重さとか、車体が大きすぎるといったところだろう。あとはカッコ悪いとか、エンジン音が寂しいといった主観的な部分。

 なかなか完全無欠のクルマを作るのは難しいので、ネガティブフレーズがなくなる日は遠いのかもしれない……。