待望の新型なのに「なんだよコレ」! フルモデルチェンジで「ファンが落胆」した国産スポーツモデル3選
この記事をまとめると
■従来の駆動方式から変更が入るとイメージが激変することがある
■デザインが大幅に変更されるとユーザー離れが加速するケースもあった
■フルモデルチェンジはメーカーが威信をかけて行うので正常進化である場合が多い
フルチェンしても思ったような反応が得られなかったケース
「モデルチェンジでファンの反感を買ってしまったスポーツモデル」というテーマで、とくに国産スポーツカーを振り返ると、いの一番に思いつくのはトヨタのカローラレビン/スプリンタートレノではないだろうか。
いまでも伝説的な人気を誇るAE86型は、その名前を受け継いだFRスポーツカー「86」「GR86」が登場するほどだが、AE86の後継モデルであるAE92型レビン/トレノは、名前や写真などを見かけることがほとんどないほど、存在を忘れられてしまっている。
その理由をシンプルに突き詰めると、駆動方式がFRだったAE86から、AE92ではFFに変わってしまったことにある。
もっとも、AE92がFF化によってパフォーマンスを落としたのかといえば、さにあらず。当時のグループAなど市販車改造レースを観戦していたファンならご存じのとおり、AE92はAE86より明らかに速かった。
1.6リッタークラスで速さを求めると、FFのほうが合理的というのが当時のスタンダードであり、「スポーツカーは速いほうがエライ! 」という視点からすると、AE92への進化は正しかった面もあるが、逆にいうとAE86は最後のFRレビン/トレノという点で伝説的モデルになったという見方もできる。
1.6リッタークラスでレビン/トレノがFF化を選ばざる得なかったのは、4ドア版カローラ/スプリンターとアーキテクチャーを共有しなければ生産性の面で意味がないという部分もあったのだろうが、ライバルであるホンダ・シビック/CR-Xとの勝負権を得るには、軽量なFFプラットフォームが必須という面もあっただろう。
大幅なイメチェンがむしろ仇に……
とくに1989年のマイナーチェンジで登場したVTECエンジンを積んだCR-X(EF8型)は、実質2シーターといえるほどのコンパクトで軽量なボディと相まって、1.6リッタークラス最速マシンとして知られる存在。とくにジムカーナ界ではクラス王者として君臨した。
ホットハッチの大本命といえるCR-Xは、しかし1992年のフルモデルチェンジで大きく方向性を変えてしまう「CR-Xデルソル」となった。スペイン語で「太陽」を意味するサブネームがつけられたのは、CR-Xデルソルがオープン2シーターに生まれ変わったから。
上級グレードではトランストップと呼ばれる電動のルーフ収納機構が備わり、いわゆるデートカーとしての魅力は高められたが、オープンボディゆえの重量増や剛性感のダウンというのは、モータースポーツ派からは嫌われた面があったのは否めない。
さらに、1997年にはシビックタイプRが登場したこともあって、CR-Xデルソルにスポーツのイメージは完全に薄れたというのが市場の評価だった。結果として、CR-Xの名前はこのモデルを持って途絶えることになってしまった。
モータースポーツでの活躍がスポーツイメージを高め、それによって市販車が売れるというのはスポーツカーにとって理想的なサイクルといえるが、モータースポーツ活動が休止されたことで存在意義を失ったといえるのが、ランエボの愛称で知られる三菱ランサーエボリューションだ。
ランエボの歴史を簡単に振り返ると、1992〜1995年が第1世代、1996〜2000年が第2世代、2001〜2006年が第3世代となり、2007年に発売されたランエボXは、小改良を受けながら、2015年のファイナルモデルでその名前を終えることになった。
第1〜第3世代まではWRC(世界ラリー選手権)に参戦するためのホモロゲーションモデルという位置づけで毎年のように改良されていたことがランエボ最強伝説を作っていたが、WRCのレギュレーション変更により、市販車を毎年進化させる意味がなくなり、三菱自動車が2006年をもってワークス活動を休止したことで、ランエボXはモータースポーツによるブランディングのできないモデルとなってしまった。
とはいえ、ランエボXはトルク切れのないデュアルクラッチトランスミッション「SST」が採用され、電子制御センターデフや後輪のトルクベクタリング機構なども大幅に進化。「誰もが乗りやすくて速い」というフレンドリーなパフォーマンスカーになっていた。
WRCとの関係性を失ったことで、「ランエボという名前がふさわしくない」というファンからの批判も受けたランエボXだが、メカニズムとしては三菱の4WDスポーツカーとして正常進化を遂げていたことは間違いなかった。