本を上手に活用できる人は、ストレスが緩和され、「悩み事」でクヨクヨすることから解放されます(写真:rainmaker/PIXTA)

人間誰しもが抱えている「悩み事」。誰かに相談しなければ解決しないかと言ったらそうでもありません。精神科医である樺沢紫苑氏が脳科学的な裏付けをもとに「記憶に残す、どんどん頭がよくなる読書術」をまとめた著書『読書脳』から一部抜粋、再構成してお届けします。

本を読めばストレスと不安から解放される

本を上手に活用できる人は、ストレスが緩和され、「悩み事」でクヨクヨすることから解放されます。しかし、この事実は、ほとんどの人が知りません。

なぜなら、読書家は問題や悩み事に直面しても、「本」を参考にして、早期のうちに解決してしまうので、大きなストレスや厄介な悩み事に煩わされること自体がないからです。

一方で、滅多に本を読まない人は、「悩み事」を抱えたとしても、「本を読んで問題解決をしよう」とは思いません。

過大なストレスに支配され、大きな「悩み事」を抱えたとき、人は「視野狭窄(しやきょうさく)」に陥ります。目先のことしか考えられなくなり、頭に思いつく選択肢が減っていくのです。普段から本を読む習慣がない人は、「本を読んで問題解決しよう」という発想すら浮かばないということです。

人間の悩み事というのは、だいたい共通しているものです。人間関係の悩み、仕事上の悩み、恋愛の悩み、金銭のトラブル、子供の教育、成長の悩み、病気や健康に関する心配や悩み……。こうした悩みに対する解決法は、ほとんど全て既刊の本に書かれています。

本に書かれている通りの方法を忠実に実践すれば、ほとんどの場合、悩みは解決するか、少なくとも軽減するはずです。

しかし不思議なことに、悩みの渦中にいる人は、問題解決のために本を読もうとしません。悩みの渦中にいる人が本を読まない大きな理由は、「それどころ」ではないから。

「悩み」や「ストレス」を抱えた場合、心理的に余裕がなくなってしまいます。普段から滅多に本を読まない人が、そんな心理状況で本を読めるかというと、読めないのです。

精神科の患者さんは、自分の病気について山ほど質問を投げかけてきます。精神科の外来には、いくつかの病気ごとに「患者さん向けにわかりやすく書かれたQ&A集」が置かれているので、ある程度口頭で説明したうえで、「詳しくは、こちらをお読みください」とその小冊子を渡します。

次回、「小冊子は読みましたか?」と聞くと、多くの方は「読んでいません」と言います。「なぜ読まなかったのですか?」と聞くと「それどころじゃなかったからです」と。

それで結局また、小冊子に書いてあることと同じ質問を、何度も繰り返し聞いてきます。

自分の病気について心配があれば、1冊本を読むだけで、その疑問のほとんどは解決しますし、病気に対する不安や心配もとりのぞかれます。しかし、自分から書店に行って病気の本を買って読んで勉強する、という人は非常に少ない。それどころか、小冊子を渡しても読まないのです。

普段から本を買う習慣、本を読む習慣のない人が、病気になり切羽詰まった状態で本を読めるはずがないのです。

解決法を知るだけでストレスは軽減する

この話をすると、次のように反論する人が必ずいます。

「いくら解決法を学んでも、実際に問題が解決されないと意味がないし、ストレスも減らないじゃないか」

悩み事の解決法がわかっても、悩み自体が解決しなければストレスは続く。

この考え方が間違っていることは、脳科学的に証明されています。

ある動物実験をご紹介しましょう。

2つのケージ(AとBとする)にそれぞれ1匹のマウスを入れて、そのマウスに電気ショックを与えます。Aのケージにだけ、電気ショックを止めるレバーがついています。そのレバーを踏むと、両方の電気ショックが止まる仕組みになっています。したがって、電気ショックを受ける回数、時間は、AとBのマウスは全く同じになります。

何度か電気ショックを与えると、Aのケージのマウスは、電気ショックを止める方法を学習します。レバーを踏んで自分で電気ショックを制御できるマウス(A)と、何もできなくて、ただ電気ショックにおびえるマウス(B)では、どちらがよりストレスの影響を受けるでしょうか? 

結果は、電気ショックを受ける回数や時間は全く同じであったにもかかわらず、何もできないBのマウスのほうは、ストレスによって猛烈な早さで衰弱し、よりストレスの影響を受けたのです。

ストレス(電気ショック)を受けた時間、回数は全く同じです。しかし、苦痛を制御する方法を知っただけで、不安とストレスが大きく軽減したのです。

つまり、「どうしていいかわからない」状態において、最もストレスが強くなる。

対処法、解決法を調べて「何とかなる」(コントロール可能)とわかっただけで、状況は全く改善していなくても、ストレスの大部分はなくなるということです。

言語情報が不安を消し去ってくれる

解決法を知るだけでストレスや不安が軽減される。もう1つ、科学的根拠を示しておきましょう。

不安というのは、脳の「扁桃体」という部分と関連しているということが脳科学の研究でわかっています。「扁桃体の興奮」=「不安」という図式です。

うつ病とは、ストレスに長期にわたってさらされたために、「扁桃体の興奮」のスイッチが持続的にオンになって戻らなくなってしまった状態だと考えられています。ですから、うつ病の患者さんは、常に不安で、何でも悪いほうに考えてしまいがちです。

逆にいうと、「扁桃体の興奮」を鎮めれば、不安を減らせるということです。脳機能イメージングを使った研究によると、「言語情報」が脳内に入ってくると、扁桃体の興奮が抑制され、それにともないネガティブな感情は静まり、気分も改善され、決断能力が高まることが観察されました。

子供がケガをしたときに「痛いの痛いの飛んでいけー」とおまじないをかけると実際に痛みが軽減するのは、暗示効果もあるでしょうが、「言語情報の流入による不安の除去」の結果でもあるのです。

医者からただ「この薬を飲んでください」と言われても不安なままですが、きちんと薬の説明をされるとそうした不安は軽減します。

「情報」は、人間の不安を和らげてくれるのです。

「脳への言語情報の流入」というのは、「話す」「聞く」「読む」などさまざまなパターンがあります。その中でも人に相談する、人から情報を得るのが最も効果的なのですが、「話す」「聞く」には相手が必要です。

しかし、「読む」のに相手は必要ありません。本1冊分のお金があれば、誰にでも、自分1人で、すぐに実行可能です。

6分間の読書でストレスが3分の2以上軽減

心配事があれば、その対処法について書かれた本を1冊買ってきて読めばいい。「言語情報」によって不安は軽減し、「解決法を知る」ことでストレスも軽減するのです。

本を上手に利用すれば、不安やストレスのかなりの部分を減らし、そしてコントロールできるようになります。


読書には、ストレスや不安を解消する効果がある。では、実際に読書をした人を対象にした研究ではどういう結果が出ているのでしょう。

イギリスのサセックス大学でのストレス解消についての研究では、読書、音楽視聴、1杯のコーヒー、テレビゲーム、散歩、それぞれのストレス解消効果を、心拍数などをもとに検証しました。その結果、読書は68%、音楽視聴は61%、コーヒーは54%、散歩は42%、テレビゲームは21%のストレス軽減効果が見られ、読書が最も高いストレス解消効果が得られるということがわかりました。

また、静かなところで読書を行えば、わずか6分間でストレス解消効果が得られ、即効性があることもわかったのです。つまり、静かな場所で 6分間読書をすれば、ストレスを3分の2以上軽減できるということになります。

(樺沢 紫苑 : 精神科医、作家)