今、医療の現場では薬の欠品が相次いでいる(写真:Satoshi KOHNO/PIXTA)

今、クリニックを受診する38℃以上の発熱患者のほとんどは、コロナウイルス感染症だ。かと思うと、インフルエンザの患者さんもちょこちょこ交じってくる。今シーズンは特に、この2つの感染症をあらゆる手を尽くして避けていただくほうがいい。実はクリニックでもよく出している「薬」が、すでにあれもこれも全然足りていないのだ。

咳止めは1カ月欠品、抗生剤も解熱剤も入ってこない

ナビタスクリニック川崎の近隣の薬局では、ここ1カ月ほど咳止めはずっと欠品だ。さらにこの1週間で、あらゆる抗生剤の欠品が始まった。最もスタンダードな薬が最初になくなり、セカンドチョイスの薬がなくなり、そして通常は使わないような抗生剤を使うしかなくなってきている。

昨日はとうとう、アセトアミノフェンという、一番誰にでも使いやすい解熱鎮痛剤がなくなった、と薬局から連絡が来た。

日本でも世界でも、コロナや季節外れのインフルが流行しっぱなし、影を潜めていたさまざまな感染症も一気に勢力を盛り返している。とにかく風邪薬も抗生剤も解熱剤も、「在庫がどこにもない」という状況が現実味を帯びてきた。ニプロによると、咳止めの流通が改善するのは2年後とのことだ。

例年では9月は最も受診者が少ない月で、スタッフも一息つけるのだが、今年はその気配はない。それどころか新学期で学校が始まり、新型コロナやインフルエンザで学級閉鎖も相次いでいる。このまま本格的な流行に突入するのだろう。このような悪条件が重なった年は、正直クリニック開業以来初めてだ。

というわけでやはり、感染を回避したいならワクチンが有効、というか人類の武器はそれしかない。新しいコロナワクチンやインフルエンザワクチンがもうすぐ接種開始となるし、帯状疱疹ワクチンの公費助成も始まっている。

では、どれから打ったらいいのか?

コロナ、インフル、帯状疱疹のお勧めスケジュール

私が自信を持ってお勧めする接種スケジュールなら、2回の受診で、コロナ、インフル、帯状疱疹の3つのワクチンがすべて済む。

【受診 
不活化の帯状疱疹予防ワクチン1回目+コロナとインフルワクチンの同時接種

【受診◆2カ月後 
不活化の帯状疱疹予防ワクチン2回目 (+コロナとインフルワクチンの同時接種※)

※受診,妊灰蹈覆筌ぅ鵐侫襯錺チンを打たなかったら、受診△虜櫃砲い辰擇鵑紡任討个いい掘▲灰蹈覆肇ぅ鵐侫襪鬮,鉢△吠けて打ってもいい。

ワクチンには、生きた病原体そのものが入っている生ワクチンと、そうでない不活化ワクチンの2種類がある。ワクチン接種間隔の基本的ルールは、「生ワクチン同士は28日間隔」とされている一方で、「不活化ワクチン同士や、不活化ワクチンと生ワクチンでは、接種間隔を空ける必要はないし、同じ日に接種することも可能」となっている。

ただ、そうした医学的理由に基づく間隔のほかに、行政手続きとして接種間隔を空けることが求められるものもある。コロナワクチンがそれだ。予防接種法における臨時接種として実施されている特殊性がある。

現状ではできないが、科学的にはコロナワクチンも他のワクチンとの同日接種は可能。アメリカやイギリス、カナダでは、コロナワクチンと他のワクチンの同日接種には制限を設けておらず、日本も制限をなくす方向で議論が進んでいる。同日でない場合は、他のワクチンと2週間の間隔を空けることが求められている。また、任意接種であるインフルや帯状疱疹予防ワクチンは、そもそも接種間隔について法律の制限を受けない。

【2023年9月28日14時25分追記】初出時からワクチンの同日接種の記述について一部文言を修正しました。

特に帯状疱疹は、このところ発症する人が増え、ワクチンへの関心が高まっているようだ。だがまだその恐ろしさを知らない人も多い。

今日もちょっと薬に詳しい知人に、「もし帯状疱疹になったらすぐ『ゾビラックス』などの薬をもらえば、ワクチンは打たなくても平気でしょ?」と聞かれた。私は、すぐさま「それは甘く見すぎですねぇ」と即答した。

とにかく帯状疱疹にやられた人は皆が皆、「ワクチンを打っておけばよかった」と後悔する。

つい最近では、夏休みに家族でキャンプの最中に発病した、という方がいた。あまりの痛みに急遽キャンプを取りやめて受診したそうだ。また、年末年始の医療機関が休みのときに発病した方は、救急病院を受診したが、臨床経験に乏しい当直医が帯状疱疹と診断できなかった。正月明けを待って皮膚科を受診し、「何でもっと早く受診しなかったの」と言われたという。

また、激しい頭痛で脳外科を受診したが、帯状疱疹との診断を受けた人もいた。幸いなことに、看護師が髪に隠れた頭皮の帯状疱疹に気づいてくれて、すぐに診断・治療を受けられたとのこと。「体の片側に、帯状に赤い斑や水疱ができる」といった典型的な症状なら診断はつきやすいが、典型的でない帯状疱疹の診断は難しい。

だから私は50歳以上の人には、帯状疱疹ワクチンの接種をお勧めしている。

帯状疱疹予防ワクチンは2種類あるが、私のお勧めは生ワクチンではなく、迷わず不活化ワクチンの「シングリックス」だ。帯状疱疹を予防する効果がより高い。

接種後1年目の予防効果は、生ワクチン70%程度、シングリックス97%と、生ワクチンもそれなりに健闘してくれる。だが、接種から3年後には、生ワクチンの予防効果は40%以下に低下してしまう。

不活化ワクチンは、2回接種で5万円前後と、費用が高いと敬遠される方も多い。ただし10年は効くと考えると、月々400円程度の負担でしかない。また自治体によっては帯状疱疹予防ワクチン費用の補助があり、それを利用すれば月々200円程度の計算だ。

毎月、高級どら焼き(補助があればスーパーのどら焼き)1個分程度の費用で、帯状疱疹という厄介な病気が防げる。「安心」という自分へのご褒美は、どら焼き以上の価値があるはずだ。

「10月接種」が断然お勧め

冒頭のとおり、このところは診察室でノドと鼻を診て、肺の音を聴き、鼻から綿棒を入れて抗原検査して、「はい新型コロナです、5日間休みましょうね」、というのをひたすら繰り返している。5類になって日々の感染者数公表はなくなったが、去年の今頃にこの規模で流行が起きていたら、世の中はもっと大騒ぎになっていたに違いない。


9月20日から初回接種を終了したすべての人を対象に、オミクロン株(XBB.1.5)対応のワクチン接種が始まった(厚生労働省ホームページより)

これから接種が始まるコロナワクチンは、変異ウイルスのXBB.1.5に対応したワクチンだ。ファイザーとモデルナが製造し、当局の承認を受けた。ワクチンの製造は必ず変異ウイルスの出現に遅れるものだが、新たな変異ウイルスも、先祖たるオミクロン系統と似たり寄ったりの部分が多く、ワクチンは有効と考えられている。

もちろん、理想的にはあらゆる変異コロナウイルスに効く「ユニバーサル・コロナワクチン」を開発することだが、まだ研究の途上だ。

現在、日本ではオミクロンXBB.1.9.2系統のEG.5という変異型が流行している。これについて新ワクチンは中和抗体を生成することがわかっており、発病予防効果が期待できる。また、変異がとても多いことで注目されているBA.2.86に対しても、発病予防効果があることがわかっている。

これまでの経験から、新ワクチンの効果は少なくとも3カ月程度もつことがわかっている。10月に接種すれば、年末年始の人出や宴会の多い時期まで効果が期待できる。であれば、必要なら速やかに予約を取り、接種を受けるのが賢いタイミングだ。

『Science』誌によれば、取材した専門家全員が、「高齢者、免疫力が低下している人、または特にウイルスによる被害を受けやすい病状を抱えている人」であれば、接種したほうがいいのは議論の余地もないと答えている。また同誌は、打ってから4〜6カ月は保護されるとしている。

インフルワクチンの効果、今年は高め?

折しも10月からは、インフルエンザの予防接種も始まる。こちらも冬からの流行が収束しないまま、再拡大が始まってしまった。やはり速やかに接種を受けたほうがいいだろう。

2023年の夏、つまり南半球の冬では、インフルエンザワクチンの有効率は51%との報告だった。とくに、H1N1pdmという主流ウイルスに対しては、55%と高い有効率だった。南半球で流行したウイルスが北半球に移動してくることを考えると、今冬のインフルワクチンも、同様の予防効果が期待できそうだ。

コロナは大人、とくに高齢者がかかりやすいのに対し、インフルエンザは子どもが多く発病する。熱性痙攣を起こしたり、インフルエンザ脳症になるなど、重篤化することもある。

ただし、インフルエンザでもかかった場合に重症化しやすいのは、やはり高齢者だ。

子どものいる家庭の親御さん、高齢者と同居している方など、自身は発病や重症化のリスクが低い方も、家族からもらったりうつしたりしないよう、予防接種を受けておきたい。

(久住 英二 : 内科医・血液専門医)