ランキング100位以内で人数が最多だったユニクロ展開のファーストリテイリング(撮影:今 祥雄)

「障害者雇用支援月間」をご存じだろうか。毎年9月に国や地方自治体を中心に、さまざまな障害者の雇用促進イベントやセミナーが開催されている。

東洋経済でも毎年「障害者雇用支援月間」に合わせて、障害者雇用率ランキングを発表している。今回も『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2023年版掲載企業1702社のうち、2021年度に障害者を3人以上雇用している企業1195社を対象にランキングを行った。

なお、『CSR企業白書』2023年版には同ランキング上位800社まで掲載している。また、電子書籍『東洋経済CSRデータeBook2023 障害者雇用取り組み編』には、障害者雇用率だけでなく、特例子会社の有無、各社の障害者雇用への取り組み情報など1642社のデータを掲載している(企業により情報量に差はある)。ランキングと詳細情報を併せてご活用いただきたい。

ランキング1位の雇用率は15.55%

ランキング1位はゼネラルパートナーズ。雇用率は15.55%(雇用人数は41人、以下同様)で6年連続1位となった。同社は障害者向けの人材紹介や求人情報サービスを提供するほか、農業生産事業も行う。農業生産事業では、うつ病・統合失調症のある人を中心に、菌床シイタケの生産・販売をする就労継続支援A型の「アスタネ」を運営。「誰もが自分らしくワクワクする人生」というビジョンを掲げ、社会課題解決型の事業・サービスを展開する。


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2位は食品トレーや弁当・総菜容器最大手のエフピコ。雇用率は12.6%(365人)で上場企業ではトップだ。特例子会社エフピコダックスを中心に、使用済み容器の選別工場および折箱容器の生産工場など、全国16カ所の事業所で障害者に雇用機会を提供する。

ユニバーサルスポーツであるフロアホッケーの活動を2010年より行っており、障害の有無を超えた交流を目的にグループ全体で定期的に活動。日本フロアホッケー連盟と連携した競技大会の運営および大会スポンサーとしての活動も行う。

3位はRIZAPグループ傘下のMRKホールディングスで8.0%(4人)。「すべての女性の心と身体の美の追求」という企業理念のもと、女性向け体型補整下着、化粧品、サプリなどの商品やサービスを総合的に提供し、障害者雇用にも取り組む。

4位は工場用などの搬送機器メーカーのキトーで6.89%(35人)。5カ年計画を策定し、継続して障害者雇用を推進している。障害者の配属においては、障害だけでなく個性も重視し、支援者・家族とも連携しながら職場定着に取り組む。聴覚障害者には、情報保障として手話通訳の派遣や支援機器の導入をし、より働きやすい環境を構築している。

5位はEC・通販物流支援サービスを手がける関通で6.29%(26人)。障害者の雇用者数30人を目標に掲げる。

ユニクロのファストリは1111人

6位は樹脂発泡製品の専業大手、JSPで5.78%(49人)。特例子会社JSPモールディングを中心に障害者雇用に取り組む。JSPモールディングでは、障害者職員への指導体制の整備をするほか、適材適所の配置のため複数サポーターによる業務指導とマネジメントを実施。適性に応じてリーダーを任命し、就労を通じた成長機会を提供する。

7位は建設向けダイヤモンド工具大手、コンセックで5.37%(13人)。2025年3月期までの中期経営計画では、ESGへの取り組みとして「働きがいのある職場環境の醸成」などを掲げる。

8位はAOKIホールディングスで4.89%(6人)。障害者雇用率5.0%を目標に掲げ、積極的に障害者雇用に取り組む。本社施設のバリアフリー化のほか、障害者オフィスの設立も行う。

9位はユニクロを展開するファーストリテイリングで4.6%。人数は1111人と非常に多いのが特徴だ。障害者雇用率の目標について「1店舗1人以上の雇用」を掲げており、障害者支援の専用窓口を設置し、障害者雇用の専任者が採用だけでなく職場定着まで対応をする。さらに、店長・エリアマネージャー等を対象に障害者雇用に関する研修を実施している。

10位は女性中心の下着のネット通販会社、白鳩で4.59%(7人)。京都府による障害者雇用推進認証企業(京都はあとふる企業)として、障害者雇用の積極的な推進と、同一労働同一賃金の実施に取り組む。

ランキング100位以内で人数が最多だったのは、9位にランクインしたファーストリテイリングで1111人だった。次いで、85位のセブン&アイ・ホールディングスの1068人(2.98%)が続く。

また、800位以内で人数が最多だったのは、いずれもグループ合算の数値ではあるが、日本郵政グループの日本郵政とかんぽ生命保険の6402人(2.35%)。次いでヤマトホールディングス2829人(2.62%)、イオン2065人(2.42%)が多かった。

2021年度の業種別の障害者雇用率を見ると、まず全体平均は2.13%(2021年度の障害者雇用率を開示している1382社が対象)で、2020年度の2.11%(対象1281社)から微増した。詳細は『CSR企業白書』2023年版に掲載している。


『CSR企業白書』2023年版(東洋経済新報社)。書影をクリックすると東洋経済STOREのサイトにジャンプします

対象社数が10社以上で平均雇用率が高い業種は、食料品2.44%(60社)、化学2.38%(111社)、小売業2.37%(95社)、その他製品2.35%(38社)、銀行業2.35%(46社)、陸運業2.34%(32社)、医薬品2.33%(31社)、鉄鋼2.33%(16社)など。これらの業種は、法定雇用率(2.3%)を上回っている。

一方、低い業種は、不動産業1.28%(44社)、情報・通信業1.69%(116社)、証券・商品先物1.70%(11社)、サービス業1.91%(121社)、保険業1.95%(14社)、倉庫・運輸関連業1.95%(15社)などである。

また、企業の法定雇用率「2.3%」を達成している企業は1195社中672社で、2020年度の559社(対象1113社)から増加している。

法定雇用率は段階的に引き上げ予定

2023年版「障害者白書」の推計によると、身体障害、知的障害、精神障害の3区分について、国内の障害者の概数は、身体障害者436万人、知的障害者109.4万人、精神障害者614.8万人となっている。障害には先天的なものもあるが、事故やストレスなどで後天的に生じる場合も多い。誰もが障害を抱える可能性があること、障害は身近にあるものだと改めて認識しておきたいものだ。

厚生労働省からは、障害者の法定雇用率の段階的な引き上げが予定されており、民間企業においては2024年度に2.5%、2026年度には2.7%となる方針が公表されている。障害者雇用率の引き上げに伴い、企業と障害者がうまくマッチングし、より雇用が促進されるような仕組みが重要になるだろう。

ダイバーシティ&インクルージョン、多様性といった言葉が浸透し、それぞれの個性や能力を生かして、誰もが活躍できる社会の実現が当たり前に望まれるようになった。その実現の1つとして、今後さらなる障害者雇用の拡大を期待したい。

1〜48位


51〜100位


業種別平均


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(伊東 優 : 東洋経済『CSR企業総覧』編集部)