目玉「ドすべりコーナー」には大量のPOPが掲示されている(ドミセ渋谷道玄坂通店)

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「ドミセ」に早くも“異変”発生か!? ディスカウントストア「ドン・キホーテ」の新業態が話題を集める中、流通ウォッチャーの渡辺広明氏は早くも5回目となる店舗視察を敢行。最大の目玉「ドすべり」コーナーを高く評価しつつも「意外なところでドンキの底力を見た」と豪語した。激安ジャングルに何があったのか――。

「ドミセ」のコンセプトは、ドン・キホーテのプライベートブランド(以下PB)「情熱価格」を中心にオリジナルブランドを含めた計約3200点を品揃えする「おドろき専門店」。

 8月24日に1号店となる「ドミセ渋谷道玄坂通店」が開店すると今月8日に「ドミセ アリオ八尾店」(大阪府八尾市)もオープンし、ごった返すほどの買い物客が殺到した。また、同日放送された経済ドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」(テレビ東京系)には創業者の安田輶夫氏が出演し「ドミセを世界中に広げていきたい」と壮大なプランを語った。

 最大の目玉は全然売れなかった商品を値下げ販売する「ドすべり」コーナーだ。開発者が失敗の要因を赤裸々に告白するPOPが面白い。たとえば「一撃掃快ダブコロリーナ」は定番の粘着クリーナーが2本並んだ商品で、単純に2倍の面積を一気に掃除できるのがウリだった。ところが片方のみ使える構造ではない点が欠点だった…。

 渡辺氏は「ずぼらでめんどくさがりな僕も開発しそう! おそらく分離して使えるほうがいいと開発者もわかっていたんだけど、そうするとコストが上がりすぎるから諦めたんでしょう」と苦笑い。「でも、『ドすべり』というコーナーがあるから商品開発者は攻めたPBを開発できるようになることがいい」とメリットを訴える。

 PBの歴史を振り返ると、1980〜90年代にナショナルブランド(NB)に対抗するお得な商品としてダイエーの「セービング」やイオンの「トップバリュ」が誕生。2010年代には「セブンプレミアム」を代表に本当に良いもの、食べたいものの価値を訴求する「PB2.0」へ進化を遂げた。


「マスを対象にせず、一部の人に突き刺さるドンキの商品群は『PB3.0』と言ってもいいでしょうね。たとえ失敗をしても値下げして売り切ることができるドンキはメーカーとの関係も良好に保てる。加えてお客さまの『ダメ出し』をもとに次の開発で改善していけば次に売れる商品を開発していくことができる。もちろんPBだから利益もしっかり確保できる」(渡辺氏)

 失敗を隠すことなくエンタメとして昇華できる点こそがドンキの魅力というわけだ。だがドンキの底力はそれだけではない。

 開店初日を含め5回となる売り場チェックを行っている渡辺氏は“異変”に気づいたという。

 ドンキは昨年「情熱価格」を浸透させるべくロゴを一新し、「ド情ちゃん」という新キャラクターまで登場させた(その後ドンペンファンの熱い要望により公式キャラ交代は即撤回された)。あらゆるPBに「ド」のロゴが入っているが、ドミセにはシンプルで機能や付属品を最小限に絞り込んだ「ドスパ!」という謎のバリカンが並んでいたのだ。

「あれだけ情熱価格の『ド』のロゴにこだわっていたのに、ロゴがまったく入っていない商品がもう誕生していたとは驚きました(笑い)。さらに言うとPBを中心に置く方針だったはずのドミセの化粧品コーナーにもうNBが交じって陳列されていました。でもこれは悪いことではありません。シェービングフォームやボディーソープなど一部を除いてそもそも化粧品のPBはなかなか厳しいものなのです。コンセプトに縛られ過ぎず、状況に応じて刻々と売り場を変えていける柔軟性はさすがドンキです!」

 PB中心のドミセでは通常店と違って同様のNBが隣に並ばないことからどうしても価格の優位性を示すことが難しくなる。だからこそ値札だけでないドンキらしいPOPの数々で買い物客を楽しませる仕掛けが随所に施されている。

 ドンキおなじみの焼き芋コーナーでは定番4種に加え「焼き芋マイスター」が選ぶ月替わりのサツマイモ4種の計8種が販売されていた。また大ヒット商品のナッツを完全に自分好みにカスタマイズできる量り売りコーナーもドミセならでは。

 普段は物欲がない人でもきっとワクワクして何かカゴに入れてしまうに違いない。ちなみに記者は取材後、ドミセ限定ドンペンTシャツを含め5000円以上の買い物を楽しんだ。

 わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「Live News α」レギュラーコメンテーター。Tokyofm「ビジトピ」パーソナリティー。