言葉を発する時、人は器用に舌や喉、鼻などを駆使して任意の音を出すことができます。ただし、こうした発声方法はほとんど無意識に行っており、自分が声を出している時に舌や喉をどのように動かしているかを常日頃から把握できている人は少ないはず。「Pink Trombone」は口の中を操作することで、実際にどのような音が出るのかをブラウザ上で確かめられるシミュレーターです。

Pink Trombone

https://dood.al/pink-trombone/



アクセスすると以下のように口の中の断面図が表示され、同時に「アー」という声が流れます。断面図は右側の「lip」が唇で、上部の「nasal cavity」が鼻腔(びくう)、下部の「oral cavity」が口腔(こうくう)です。ただし、歯茎と歯は用意されていません。



右下の「always voice」をクリックすると、常時発声のオン・オフを切り替えることができます。また、「pitch wobble」をクリックすることで、再生される声の音程に乗るゆらぎのオン・オフを切り替え可能。一番下の「voicebox control」は、長方形のスライダーを左右に動かすと音程が、上下に動かすと音量が変化します。



口の中のモデルはドラッグすることで変形します。たとえば「tongue control」は舌の動きを変化させることができます。前舌・中舌・後舌と、舌の位置を変えると、「アー」という発声の母音が変化することがわかります。



鼻腔と口腔の間にあるのは口蓋(こうがい)で、後方(左)が「soft palate(軟口蓋)」、前方(右)が「hard palate(硬口蓋)」になっています。軟口蓋と硬口蓋のちょうど間あたりをクリックし、わずかに舌で隙間を作るようにすると音が「シー」というようにsの子音となる摩擦音が再現されるのがわかります。



唇をクリックすると閉じ、発声が止まります。この状態で勢いよく唇を開くとpの子音が再現されます。



硬口蓋をクリックすると、舌の先端が触れます。舌を一瞬硬口蓋に触れさせることで、nあるいはrの子音を再現可能。



喉の奥にある声門を締めると声は止まります。少し開けると、「ハー」というhの子音が再生されます。



Pink Tromboneで実際に声の出し方をシミュレーションしているところは以下のムービーを見るとよくわかります。

「声を出している時の口の中」を再現する「Pink Trombone」で発声のシミュレーションをしてみた - YouTube

Pink Tromboneの開発者であり、チェコ共和国科学アカデミー数学研究所の研究者でもあるニール・ターペン氏によると、自身の娘が言葉を話し始めたことが開発のきっかけだとのこと。ターペン氏はIT系ニュースサイトのDigital Trendsに、「Pink Tromboneはインタラクティブな調音音声合成装置です。人間の声道の物理的形状と動きをシンプルにモデル化することで、音声を作り出します。同様のプログラムはこれまでにも存在しましたが、インターフェースが不親切な傾向にありました。そこで、私が使って楽しいものを作ってみました」とコメントしています。