経団連による「財政再建のために消費増税すべし」の主張が、偽善まみれの「お為ごかし」と断言できる2つの理由

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「異次元の少子化対策」の財源として

日本の大企業の連合体である経団連(日本経済団体連合会)は9月11日、2024年度税制改正に向けた提言を発表しました。

その中で、岸田政権が進める「異次元の少子化対策」など社会保障政策の財源としては「消費税」が有力な選択肢の一つだと公表しています。

経団連の十倉雅和会長(Gettyimages)

多くの国民は、経団連のこうした動きに対して、不思議な気持ちをお持ちなのではないかと思います。

そもそも経団連は日本企業の団体で、日本企業の主力のマーケットは日本経済です。消費税を増税してしまえば内需が縮小し、日本経済が低迷してしまい、そのあおりを受けて、経団連の各社も損失を出してしまうことは明白だからです。

しかし、彼らが消費増税を主張するのは今回だけの話ではありません。彼らはかねてから一貫して、消費増税を政府に要求し続けてきました。

例えば、経団連の十倉雅和会長は、新聞等のインタビューで常に「消費増税」の必要性を主張してきましたし、2012年には「財政再建の提言書」をとりまとめ、この中で、消費税率を2025年までに19%にまで引き上げることが必要だという、大胆な主張を公表しています。

言うまでも無く、日本経済における重要な役割を担う経団連のこうした消費増税アピールが、これまで消費税率が引き上げられ続けてきた重要な推進力の一つとなっていたことは間違い有りません。

営利追求を目指す民間企業連合がなぜ?

では、なぜ、経団連は消費増税を主張するのでしょうか?

彼らは表面的には「財政再建は待った無しである」というメッセージを発し続けていますから、タテマエとしては、「財政破綻は恐ろしい。だから、財政破綻による巨大な国益毀損を回避するためには、消費増税は致し方ない。だから私たちはニッポンのためには消費増税に協力せねばならない」と考えているという体裁をとっています。

しかし、それは単なるタテマエであって、天地神明に誓って彼らがニッポンのために消費増税を主張しているなぞということは絶対にありません。

Gettyimages

彼らは営利を追求する民間企業の連合体です。しかも彼らはグローバルなマーケットで活躍する世界的大企業群なのですから、とりわけ彼らは「冷徹」に営利追求を目指しているのです。

では、そんな経団連企業達にとって、消費増税はなぜ、そんなに「オイシイ」ものなのでしょうか…?

理由はももちろん、「政府に消費税増税をしてもらうことで、各企業の利益が増えるから」というものです。つまり、増税で利益が増えるメカニズムが、少なくとも2つ存在しているのです。

以下、その2つの理由を一つずつ解説致したいと思います

社会保険料や法人税を上げられるよりも

【理由1】社会保障費や法人税という企業負担の増加を回避するため

第一番目の理由は、至ってシンプルなものです。そもそも岸田政権は今、異次元の少子化対策を進めていますが、彼らはその「恒常的な財源」が必要だと議論し続けています。その結果、彼らは社会保険や税金等、何らかの国民負担を増やそうとしています。

そういう動きを察知した経団連は、自分たちが直接負担している社会保険料や法人税が上げられることを回避することを画策しています。そしてその結果、消費増税を主張するに至っているのです。

ただし、今の日本は長い不況にあるわけで、普通ならばその不況から脱却しさえすれば経済が成長し、税収が増えるのですから、「恒常的な財源」が必要だというのなら、政府に一定の理性があるのならば、増税等を言い出す前に“不況脱却を目指す”ということになるはずです。

しかし、岸田内閣は決してそう考えません。口では「経済再生なくして財政健全化なし」という至って「正しい」ことを言ってはいるのですが、文字通りそれは単なる「口だけ」の話。岸田内閣は、「異次元の少子化対策」をやるのならば「国民負担の引き上げ」が不可避だと主張しているのです。

そんなことをすれば経済再生が遠のき、少子化はさらに加速し、財政もまた悪化することは決定的なのですが、岸田政権はそんなことはお構いなし、の立場をとっているわけです(その意味において、経団連よりも岸田政権の方が罪が重い、と言うことができるわけですが、本稿ではその件は一旦、脇に置くことにしたいと思います)。

ところで、少子化対策は社会保障の一環であり、一般的には社会保障財源は「保険料」ということになります。だから岸田政権は今、保険料率の引き上げを様々な機会を通して主張し始めています。

ちなみに社会保険とは、私たちの「給料」にかかるもので、現時点で国民各位は、給料の「30%」を社会保険として支払っています。そして、この30%の半分、つまり15%分が「労働者」が支払い、残りの半分の15%が雇用者、つまり「企業」が支払っています。

したがって、社会保険料が引き上げられれば、私たちの給料が減るのみならず、企業の利益もその分、しっかり減ることになるのです。経団連はこれを避けたいのです。

財界にとって都合の良い特異な制度

そして今、保険料率の引き上げを回避するために経団連が着目しているのが、「消費税を社会保障財源として活用できる」という制度です。

この制度は実は世界に類例を見ないもの。通常、消費税が社会保険の財源として活用されるということなどあり得ないのですが、どういう経緯かはさておき、そういう財界にとっては都合の良い特異な制度ができあがってしまっているのです。

経団連はこの点に着目し(というかもともと、そういう法律自体が、経団連側からの圧力で実現した可能性も十分考えられるところですが)、社会保険料の引き上げを回避するために「少子化対策をするなら、消費税を引き上げろ!」と主張しているのです。

換言するなら、彼らは少子化対策の為のおカネを、自分たちが(保険料という形で)負担するのでなく、(消費税という形で)消費者に負担させてやろうと考えているわけです(なお、実際には消費税というのは預かり金では無く実質的に粗利にかかるいわゆる「第二法人税」であって、消費税率が上がれば上がるほど自分たちが負担しなければならなくなるのですが…その問題もまた、ここでは脇に置いておきたいと思います)。

ちなみに、経団連はこれまで「消費増税」と並行して「法人税減税」と「法人税増税の反対」を一貫して主張しているのですが、これも全く以上と同じ理由によります。

政府が増税をもくろみ出すのを耳にするやいなや、彼らはスグに、自分たちの負担を増やす法人税増税がなされてしまうことを回避すべく消費増税を主張しだしているのです。

後編記事『経団連という組織の深い闇と偽善…財政再建を口実に“消費増税”を主張する「詐欺」まがいを許してはいけない』では引き続き、彼らが消費増税を主張する2つ目の理由について解説していく。