この記事をまとめると

■2023年9月6日に新型トヨタ・センチュリーが発表された

■SUVタイプのショーファーカーに驚いた人も多い

■この記事ではライバルとなるSUVタイプのショーファーカーを紹介するとともに存在意義を解説

SUVタイプのショーファーカーはロールス・ロイスが先鞭をつけた

 2023年9月6日、センチュリーの新モデルとして、センチュリーのSUVがワールドプレミアされた。「ええっ、あの国産最高峰の皇室御用達でもあるセンチュリーにSUVモデルが加わるなんて!?」と思うかもしれないが、筆者はまったく驚かない。そもそもトヨタの歴史あるセダンのクラウン、その最新型となる16代目クラウン(2022〜)のシリーズのなかで、最初に登場したのが、これまでのロイヤルカスタマーがあっと驚くクラウンクロスオーバー=SUVタイプであり、いまや高級車(ここではクラウン)、超高級車(ここではセンチュリー)に、時代の多様性からクロスオーバーやSUVタイプが加わっても、何ら不思議ではない時代なのである。

 その先鞭をつけたのはロールス・ロイスだろう。そう、2018年5月10日に発表されたロールス・ロイス・カリナンだ。ロールス・ロイスとして初の4WD、リヤシート後方にパーテーションを持つことでSUVの3ボックス化を実現したショーファーSUVとも言えるモデルである。

 そのSUVとしての実力は、最大渡河水深が超高級SUVとして最大級の540mmとされている。最低地上高こそ公表されていないが、余裕があることはもちろんとして、ショーファーカーだからこそ気になる乗降性は、乗降時に車高が40mm下がるエアサスによって、セダンタイプのロールス・ロイスに遜色ない乗り降りのしやすさを実現している。さすがだ。

 では、ロールス・ロイスがどうしてSUVタイプの超高級車を世に出したかと言えば、ラグジュアリーの概念がもはや都市部限定ではないからだ。

欧州にはSUVのショーファーカーが多い

 日本でもここ最近、ラグジュアリーを極めたアウトドア施設、たとえばグランピング施設が続々と登場している(星野や富士など)。つまり、ロールス・ロイスを所有するクラスのユーザーだって、日々、都会にいるわけではなく、空前のアウトドアブームもあって、休日には、ときには道なき道を行く冒険旅行に出かけることもあり、また、山奥のラグジュアリーを極めた別荘へのアクセスに、天候、路面状況によってはSUV、4WDが不可欠となることもありうる。超高級車=絶対セダンタイプ……という概念は、すでにない。メルセデス・ベンツのゲレンデがセレブに圧倒的な人気を誇るのも、より広い世界を体験するためではないか。

 実際、世界的に見ても、ショーファーカー×SUVは少なくなく、ベントレー・ベンテイガ、室内の豪華さではカリナンなどに比べやや劣るもののキャデラック・エスカレード、こうしたジャンルの先駆者でもある”砂漠のロールス・ロイス”として、英国はもちろんアメリカ西海岸のセレブにも圧倒的な支持を得ているランドローバー・レンジローバー、3列シートのプレミアムSUVを2列シート化したボルボXC90エクセレンス(〜2020年。新車価格1359万円。現在は生産終了。中古車で入手可能)などがあり、ちょっと世界観は異なるが、フランスのDS7も、フランス大統領の公用車として使われる(DS7クロスバックのホイールベースを200mm伸ばしたDS7クロスバック・エリゼ)ショーファーカーとしてオシャレ度も抜群だ。

 話を新型トヨタ・センチュリーに戻せば、まさに和製カリナンではないか。センチュリーをショーファーカーとして使っている人も、冬の白銀の世界となった軽井沢のラグジュアリーな超高級ホテルや別荘に出向くことはあるだろうし、ドラマ「ウソ婚」のロケ地となったシーサイドテラス千葉鴨川(スイートヴィラ1棟約12万〜20万円)のようなエクスクルーシブなグランピング施設で魂を解放することだってあるだろう。

 しかし、そんなシーンにおいて、セダンタイプが似合わず、といって後席で寛ぎつつ移動するショーファーカーとして、最強の信頼性、走破性を誇るトヨタ・ランドクルーザーでは物足りない……。そう、トヨタの多様性を重視したこれからのクルマ造りを、クラウンクロスオーバーとともに具現化するのが、超高級ショーファーカーにして高い全天候型の走破性能まで叶えてくれるのが、新型センチュリーの存在意義ではないだろうか。