保護猫の医療費だけで250万円…「休日もプライベートもない」犬猫の愛護活動を続ける女性の生活

相次ぐ「殺処分ゼロ達成」の発表は喜ばしい。けれどその道程は決して楽ではなかったはずだ。そしてゼロを維持するとなると事はさらに深刻だろう。時代は変わったのか。それともまだまだこれからなのか。
◆3.11を機に本格的に愛護活動を始めた女性の愛情と覚悟
自治体の「殺処分ゼロ」達成の裏には自らを犠牲にしてまで愛護活動する人々の存在がある。もともと個人で活動をしていたが、3.11を機に保護された犬猫のためのシェルター「おーあみ避難所」を横浜市内に設立した大網直子氏もそのひとりだ。
「福島県出身ということもあって、被災地で放置されている犬や猫を助けたいと思ったんです。そのときにジャーナリストの山路徹さんがツイッターで『救出に行く』という投稿をされていて、横浜から駆けつけました。そこでレスキューした子を保護するシェルターとして、『おーあみ避難所』を造ったんです」
今年で創設12年目。ボランティア会員は100人を超えて、全国から保護要請があるという。
「地方だと愛護活動をしている人がまだ少ないですし、里親も関東のほうが見つかりやすいのが現状ですね。施設を立ち上げてから、休日もプライベートも一切ありません。それでも、保護依頼を耳にしてしまうとほうっておけない性分なんですよ」
◆資金繰りができず多頭飼育崩壊するシェルターも存在
現在シェルターには犬と猫合わせて90頭を保護しているが、資金繰りの悩みは尽きない。
「近年は動物のウイルス検査費用が1000円近くも値上がりしていることに加えて、ペット用品や光熱費の高騰で負担も増えています。たくさんの人の家計がひっ迫しているなかで、以前よりも寄付が集まりにくくなっている。チャリティグッズの販売などでの支援をお願いして、なんとか活動を維持している状況です」
実際に経営破綻したシェルターが、多頭飼育崩壊を起こしてしまうことも多いらしい。
「先月は2か所の現場から120頭近くの猫を保護したのですが、健康チェックや避妊去勢手術など医療費だけでも250万円かかりました。正直、私が倒れてしまったらどうなるのかという恐怖は常にあります。このシェルターは自宅も兼ねた一軒家ですが、動物で溢れた環境も主人は『もう諦めた』と言いながら私の活動を理解してくれているのには救われています」
◆1人1人が動物愛護へ関心を持つことが重要
そんな大網氏は、「動物愛護に興味を持って正しく行動する人が増えてほしい」と訴える。
「例えば、譲渡会などではボランティアを募集していますし、自分のできる範囲のことから考えてほしいです。そして私たちの思いに共感してもらえたら、身近な人に殺処分の現実を伝えてもらえると嬉しいですね」
複雑な事情が絡み合う「殺処分ゼロ」を取り巻く環境が改善するには時間を要する。まずは愛護活動をする人々の思いを知ることで、我々の動物に対する意識を変える必要がある。
取材・文/週刊SPA!編集部
―[犬の[殺処分ゼロ]現場ルポ]―