この記事をまとめると

■1年前のGIIAS2022にてウーリン(上海通用五菱汽車)がマイクロBEV「エアEV」を公開

■インドネシアではこうしたマイクロBEVがここ数年で急激に増えている

■中国メーカーは日本メーカーと違いBEVを売るのに慣れている

中国メーカーがインドネシアで注目のマイクロBEVを公開

 約1年前となる2022年8月、GIIAS2022(ガイキンド・インドネシア国際オートショー2022)会場にて、ウーリン(上海通用五菱汽車)がマイクロBEV(バッテリー電気自動車)となるエアEVをインドネシアで正式発売した。

 エアEVは、インドネシア国内にあるウーリンの生産工場で生産されている。このエアEVは中国国内で上海通用五菱汽車が販売しているマイクロBEVで、日本でも45万円EVとして知られている宏光の流れを汲むモデルとされている。

 とはいっても、インドネシアでも日本円換算にて45万円で販売しているわけではなく、価格は2億4300万ルピア(約230万円)となっているので、日産サクラ並みの価格設定といえるだろう。

 1年後の今年(2023年)、再びインドネシアの首都ジャカルタとその周辺を訪れると、驚くほどウーリン・エアEVを街なかで見かけることができた。

 インドネシアのクルマ事情に詳しいZ氏によると、「私もこの売れ行きは想定していませんでした。ユーザー層についてはセカンドカーニーズが多いようですね。奥さんや娘さんが乗るといったシチュエーションです。エアEVはマイクロBEVとなりますので、航続距離や最高速度などのスペックは抑えめでありますが、生活圏内で買い物などでの移動をするのには問題ありません」と話してくれた。

 そしてさらに、「中国の宏光と比べると、エクステリアデザインは近未来的ながら可愛らしさも感じさせます。もともとインドネシアでは女性でも、かわいいクルマはウケが良くありませんでした。ところがエアEVではかわいらしさがウケているのです。BEVだから買うというのではなく、小さくてかわいらしいクルマがあったから買ってみたらBEVだったといったノリのようです」とZ氏は続けてくれた。

BEVの普及でインドネシアの街なかも様変わりしつつある

 後日ジャカルタ市内を歩いていたとき、路上駐車しているエアEVのフロント部分には世界的に有名なワンコのキャラクターのステッカーが貼ってあり、車内には日本の若い女性のクルマにありがちなたくさんのアクセサリーが装着されていた。ここ7年ほどインドネシアにはほぼ毎年訪れているが、このようなかわいさを強調したクルマを街なかで見るのは大変珍しいと感じた。

 同時期に、韓国ヒョンデもインドネシア現地生産モデルのBEVとなるアイオニック5を発売しているが、こちらは男性ユーザーメインであり、BEVだからという理由で購入しているようだと前出のZ氏は語ってくれた。

 GIIAS2023(今年開催のGIIAS)では、中国系のDFSK(東風小康汽車)がエアEVのライバルともいえるマイクロBEVのセレスE1の価格を会場で発表している。Z氏は「エアEVほどのひねりを感じない」と述べた。ウーリンは、狙ったかどうかは別として、買ってみたらBEVだったという売り方で、BEVだからと構えてしまいそうな消費者も取り込んだ。しかし、DFSKのモデルは、Z氏の“ひねりが足りない”とのコメントどおり、従来のクルマのイメージを引きずった、「小さいBEVですよ」とのアピールを強く感じてしまう。

 日本におけるサクラや三菱eKクロスEVも軽自動車規格のBEVを全面に打ち出しており、やはり中国メーカー(どこでもというわけでもないが)は売り方でもBEVに慣れているイメージを強く受けた。果たして、BEV分野で大きく出遅れている日本メーカーは、ハード面だけでなくセールスプロモーション面でも挽回できるのかと不安を覚えてしまった。