主将としてチームを、元首位打者として打線を牽引する佐野恵太

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 首位打者、最多安打のタイトルホルダー。ここまで全試合出場、チームの主将を任されてきた主軸・佐野恵太に出された代打。ファンや記者に動揺が走った。(情報は週刊SPA!8月29日・9月5日合併号発売時)
◆キャプテン佐野恵太に代打を送り、敗れた阪神戦

 首位タイガースを追いかけるベイスターズが、勝負手を打った。

 本拠地に阪神を迎えた直接対決3連戦。2連敗を喫して後がない8月6日の第3戦、2−3と1点ビハインドの7回裏1死2・3塁。是が非でも3連敗は阻止したいベイスターズは、今季全試合スタメン出場のキャプテン佐野恵太に代打を送り、そして敗れた。

 交流戦で初優勝し、ペナントレース再開直後の阪神3連戦を今永完投(6月23日)、東完封(6月24日)、バウアー粘投(6月25日)で3タテした記憶が、遠く感じる。最後にリーグ優勝をした1998年以来となる貯金「12」を記録し、堂々と単独首位に躍り出たのは6月25日のことだった。

◆“同じく元首位打者”が、打者心理を語った

 あれから6週間。打撃が売りのはずのチームが、ペナントの山場で苦しんでいる。

 ’20年の首位打者、そして昨年の最多安打、チームキャプテンを務める佐野恵太に代打・楠本泰史を送り、そして敗れた8月6日の阪神戦から数日後。佐野に代打を送った側の“同じく元首位打者”が、打者心理を語ってくれた。

「あの打席に関しては……元首位打者同士、同じ左打者、同じ中距離ヒッターとして(代打を送られた)佐野の気持ちは、他の人よりわかっているつもり。だから佐野には、自分の経験談を伝えたよ」

◆「佐野の代打・楠本」を先に告げたのはベイスターズ

 試合の記憶を辿りながら鈴木尚典打撃コーチは話す。

「あの場面(1死2・3塁で右の)浜地真澄投手に代わって左投手が出てくるのはわかっていた。打者心理としては……ネクスト(サークル)で準備をして、さぁいくぞ!と打席に向かう途中や、打席で足場をならしている最中に代打を送られると気持ちの面でショックはより大きいもの」

 佐野への代打策についてはマスコミ、ファンの間でも喧々諤々の議論となった。タイガースの投手交代も想定されたあの場面で「佐野の代打・楠本」を先に告げたのはベイスターズだった。そして代打起用を見たタイガースは、定石通り左打者の楠本に左腕の島本浩也をぶつけてきた。

「いまウチのチームで、得点圏の代打の一番手は楠本。相手ピッチャーが誰であろうと、あそこは楠本。もちろん最終的な決断は三浦大輔監督ですが。

 そのあと左の島本投手が出てきたけど、楠本に代打の代打を送る考えはない。だから阪神ベンチより先に佐野に代打を送った。もちろん佐野の心のケアも含めてね」(鈴木)

◆「オレが代打を送られたのはベテランになった後。でも恵太はまだバリバリ」

 超満員の横浜スタジアムの観客席は、佐野への代打を告げるアナウンスにどよめき、同様に記者席もざわついた。

「オレも代打を出されたことはあったし、相手がピッチャーを交代したあとで、代打の代打を送られたこともあった。ただオレと(佐野)恵太の違いは、オレが代打を送られたのはベテランになってからだけど彼はまだバリバリの中心。

 思うことはいろいろあると思うけど、順風満帆できれいな野球人生なんてないんだから、こういうことは今後もきっとある。この悔しさをバネに、乗り越えてほしい」(鈴木)

◆“マシンガン打線”こそがベイスターズの真骨頂だった

 ベイスターズは元来、打撃力が売りのチームだった。1998年のリーグ優勝、日本一は、大魔神・佐々木を筆頭とする投手陣、盤石の守備力に、打ち出したら止まらない“マシンガン打線”こそがチームの真骨頂だった。