日本代表はカーボベルデに勝利してパリ五輪出場権も見事に勝ち取った

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「バスケ、見た?」
 日本全国津々浦々で、そんな言葉が交わされているに違いない。

 バスケットボール日本代表は、沖縄で行われたワールドカップで3勝2敗の結果で、アジア1位となって来年に行われるパリオリンピックの出場権を手に入れた。これからフィリピンのマニラで始まる決勝トーナメントに進むことはできなかったが、堂々の“目標達成”である。

◆日本は「勝つための武器」がもうひとつ必要

 ヘッドコーチのトム・ホーバスは、世界と戦う上で高さとフィジカルの差を埋めるために3ポイントシュート主体のバスケを志向する。しかし、「シュートは水物」という言葉があるように、3ポイントシュートは面白いように決まる日もあれば、全く当たりが来ない日もある。チームとして大会を勝ち抜く上では、シュートが入らない日に勝つためのもうひとつの武器が必要だ。

 女子日本代表が東京オリンピックで銀メダル獲得の快挙を成し遂げたときには、粘り強いチームディフェンスがあった。しぶとく耐えて耐えて3ポイントシュートの爆発を待つ、日本の女子バスケならではの精神的な強さを生かしたスタイルだった。

◆5試合で「平均失点85.2」は…

 今回のワールドカップに臨んだ男子日本代表に、そのディフェンスでの粘り強さはなかった。インサイドの渡邊雄太とジョシュ・ホーキンソンはほぼフル出場で攻守にフル回転したが、チームとして守れていたわけではない。5試合で平均失点85.2という数字は、決して褒められないものだ。

 それでも5試合で3勝を挙げられたのは、ハイペースなオフェンス合戦に持ち込んで打ち勝ったからだ。ただし、3ポイントシュート成功率は31.3%と、理想である40%どころかノルマである35%にも届いていない。

◆「インサイドの得点力」が武器となった

 最大の武器である3ポイントシュートが当たっていなくても世界と戦えたのは、男子日本代表にももう一つの武器があったからだ。それがインサイドでの得点力だ。

 勝った試合でのペイントエリア内での得点を見ると、フィンランド戦では34-34、ベネズエラ戦では30-36、カーボベルデ戦では28-32と、上回ってこそいないものの大きく負けてはいない。さらに、フリースローでの得点はフィンランド戦で27-12、ベネズエラ戦で16-5、カーボベルデ戦で12-8と大きく上回った。

 最初にこの兆候を見せたのは、開幕戦となったドイツ戦での馬場雄大だった。

 3ポイントシュートを徹底的に警戒されるなかで、馬場は相手ディフェンスの逆を突いてドライブを連発して2点シュートを6本決めている。

◆“オフェンス合戦”の立役者たち

 次の試合からはジョシュ・ホーキンソンがゴール下の主役となった。センターとしては身体の線が細い軽量級の選手だが、スピードとフィニッシュパターンの多彩さで、相手ディフェンスをかいくぐってゴール下での得点を量産。2次リーグを終えた時点で平均21.0得点は得点ランキング7位という堂々の数字だ。

 ベネズエラ戦では、比江島慎が相手ディフェンスの密集地帯をかいくぐる『比江島ステップ』から、超高難度のシュートを再三決めてヒーローとなった。

 もちろん、渡邊雄太も思い切りの良いドライブから多彩なステップワークで、ゴール下のシュートを高確率で決めている。渡邊にはチームオフェンスを機能させることを優先させ、3ポイントシュートの良いチャンスが作れそうにないときにアタックする役回りもあった。だが、相手に3ポイントシュートを警戒されて成功率がなかなか上がらないなかで、自ら得点を狙いにいく機会は増えていった。

◆八村塁の参戦で「インサイドの得点力」が倍増?

 日本の試合内容として、オフェンス合戦の殴り合いを制するかたちは、ワールドカップ開幕前にはなかなか予想しづらかった。東京オリンピックの女子日本代表がそうであったように、守って守って3ポイントシュートの爆発を待つスタイルが予想されたからだ。