「オラ顔」こそ正義! 新型セレナ登場もやっぱりヴォクシーなインドネシアのミニバン戦争
この記事をまとめると
■インドネシアのジャカルタを走るクルマを観察
■ヴォクシーの存在が目立っていた
■GIIAS2023では新型セレナが発表されたが、販売面ではヴォクシーのほうが有利だろう
インドネシアではヴォクシーの人気が目立つ
オートショー取材も終わり、ジャカルタへ移動してのお楽しみが定点ポイントで通るクルマを見る「街角ウォッチング」。そこで目立っていたのが新型トヨタ・ヴォクシーである。現行ヴォクシーは、2022年2月に日本からの完成車輸入という形でインドネシア市場でデビュー。そもそもインドネシアでは2017年に先代が初めてデビューしている。
祖父母など、多世代同居が当たり前となるインドネシアでは、3列シートを持ち多人数乗車できるモデルがサイズにかかわらず人気が高い。トヨタでは、ヴォクシー導入までも「NAV1」という先々代ノアをベースにしたモデルを現地でノックダウン生産していたが、ボディサイズも中途半端だったのか、いまひとつ目立つ存在になれなかった。
筆者がインドネシアのオートショー取材に出かけるようになった当時、ジャカルタを訪れるとマツダ・ビアンテが大ブレイクしていた。ボディサイズが近いながら、注目度の少ないNAV1との大きな違いはその顔つきといえるだろう。先々代ノアベースのNAV1がおとなしい顔つきなのに対し、ビアンテは押しの利いた顔つきを採用していた。インドネシアの人たちは押しの強い顔つきが好きということは筆者も聞いていた。
※写真は日本仕様
ただ、ビアンテのブレイクは一時のブームで終わり、それと代わるようにヴォクシーがインドネシア国内でデビューした。先代もあっという間に完売するなど人気の高さを見せていたのだが、今回ウォッチングしていると、現行型はそれに輪をかけた人気の高さを見せているように見える。ちなみにこのカテゴリーでは、日産もセレナを市場投入しているのだが、こちらは日本でいうところの新型とのモデル切り替え時ということもあるのか、ほとんど見かけることはなかった。
新型ヴォクシーのイカつ顔が受け入れられた!?
新型ヴォクシーが日本国内でデビューしたときは、その顔つきに対し「さすがに今回はやりすぎでは」といった声も多く聞かれたが、インドネシア市場では、「先代よりエッジがきいている」ということで、人気がより高まったのかもしれない。
ヴォクシーのインドネシアでの価格は5億9900万ルピア(約570万円)。人気の高いアルファードの半額以下なので、購入層は被っていないようだ。
サイズの手ごろなヴォクシーのようなミニバンとなると、トヨタではほかに「キジャン・イノーバ・ゼニクス(以下キジャン)」がある。こちらは新興国向けモデルとなり、インドネシア国内で生産されている。価格はガソリン車の上級グレードで4億7360万ルピア(約457万円)。キジャンは後席ドアもヒンジ式となるので、ヴォクシーとはキャラクターが異なるし、社用車ニーズも高い。
600万円ぐらいの新車購入を検討しているのだから、中産階級以上、つまり比較的裕福な人たちが多いので、国内生産で新興国向けモデルよりも、日本で生産され輸入販売されるミニバンというものに魅力を感じているのかもしれない。
キジャンにはハイブリッドユニット搭載モデルがあるのに対し、ヴォクシーはガソリン車のみが輸入販売されている。この辺りは「ハイブリッドの欲しい人はキジャンへ」という流れを作って、過度にヴォクシーに流れるのを防いでいる一面もあるのかもしれない。
今回開催されたGIIAS2023(ガイキンド・インドネシア国際オートショー2023)では、日産が新型セレナのe-POWERユニット搭載車をインドネシアで初披露した。
※写真は日本仕様
日本での先代セレナはインドネシアでも販売されているが、こちらはe-POWERはラインアップされていない。ただ、新型に関してはインドネシア国内でもe-POWER仕様が発売になるとの報道もある。e-POWERでヴォクシーに差をつけ、販売増を狙うことができるのか、その前に顔つきで考えると、ヴォクシーが圧倒的に有利なだけに勝負は見えているようにも感じる。