お金問題を誘発する家庭の共通点。“毒きょうだい”とのトラブルに有効な対処法とは

成人後、きょうだいとのトラブルに悩まされる事例が後を絶たない。きょうだいが巻き起こす、終わりの見えない骨肉の争いに家族は疲弊し、蝕まれる。そうした、「毒」としか言いようがないきょうだいの実態と対応策を追った。
◆弁護士に相談している時点で「家庭内の関係修復は不可能」
毒きょうだいとの揉め事に必ずといっていいほど絡んでくるのがお金の問題だ。相続事件を多数扱ってきた弁護士の長谷川裕雅氏は話す。
「ほとんどの方が『相手が兄弟姉妹だから』という理由で当初は裁判をためらいますが、実はその時点で関係修復は不可能であることがほとんど。私は『弁護士に相談していること自体が答えです』と伝えています」
◆お金問題を誘発する家庭の共通点とは
毒きょうだいは預金、現金、不動産、会社などを用意周到に独占しようとする。相続開始の前後にかかわらず、それを誘発する家庭には、一定の共通点があるという。
「管理を人任せにしている不動産がたくさんある、銀行口座が複数あって暗証番号を家族に教えている、財産の名義と実態がズレている、家族経営の事業をしているなどです」
書類にまつわる不正も一定の頻度で起こる。白紙に署名押印させ書面を作成したり、文書の一部改竄、無断押印、相続分不存在証明書に署名をさせるなどだ。
「同居する子供が、親に自分に有利な遺言を書かせるケースもあります。遺言内容を被相続人が理解していないことも少なくない。しかし、きょうだいは公正証書だからといって諦めてしまうのです」
◆毒きょうだいによる「家庭内ドロボー」の対処法
こうした、毒きょうだいによる「家庭内ドロボー」の発生を完全に防ぐのは基本的には不可能だが、対処法はある。
「相手が財産を隠したり売却する前に、即座に仮差し押さえを申し立てる。どこまでが遺産かを明確にし、遺言無効訴訟を起こすなどが考えられます」
親の生前から、きょうだいが不審な動きをしていたら弁護士に相談するのも有効だ。
◆毒きょうだいとの遺産トラブル回避ポイント
POINT1:事が起きたら迅速に動く
相続開始後に独り占めが発覚したらすぐに仮差し押さえを申請、場合によっては遺言無効確認請求訴訟も検討する。
POINT2:日頃から金銭管理と証拠収集を徹底
通帳や印鑑を厳重に管理するのはもちろん、取引記録や書類などからお金の流れを逐一把握しておく。
POINT3:家族と争うという覚悟を決める
毒きょうだいとはいえ、家族だから話し合えると過度に期待しがち。必ず勝利するという強い意志を持つこと。
【長谷川裕雅氏】
永田町法律税務事務所代表。朝日新聞記者から弁護士に転身。専門は不動産相続・事業承継紛争・危機管理。著書に『磯野家の相続/令和版』(PHP文庫)など
取材・文/週刊SPA!編集部
―[多発する[毒きょうだい]トラブル]―