「マレットフィンガー」の痛みの特徴・治療期間はご存知ですか?【医師監修】

マレットフィンガーは別名ベースボールフィンガーとも呼ばれているものです。
その名前の通り野球・ソフトボール・バレーボールなどの球技で受傷して、指が変形してしまうことをいいます。
突き指のようなものですが、早急に治療できないと変形が元に戻らない・悪化してしまうことがあるので注意しましょう。
球技を行うことが多い方は、指先が曲がったままの状態での動作を少なくすることが重要になります。
マレットフィンガーの原因・治療方法、これらに合わせて予防方法なども解説していきます。
マレットフィンガーの原因や症状
マレットフィンガーの原因を教えてください。
マレットフィンガーはスポーツでなることが多いとされています。野球・ソフトボール・バレーボールなどの球技による外力が原因になることが圧倒的に多いようです。これらのスポーツでは中指と薬指に多発します。また日常生活での事故や重いものが指に当たった・指を引っ掛けた程度の外傷で発症することも少なからずあるようです。外傷以外での原因には刃物等での腱の直接損傷があります。
DIP関節(指先に1番近い関節)に背側より力が加わった時に、DIP関節に急激な屈折力が加わり、伸筋腱(手指の筋肉を動かす腱)が末節骨付近で断裂してしまうことが原因になります。
どのような症状が出るのでしょうか?
マレットフィンガーは、いわゆる突き指に似た症状があります。第1関節が曲がったままで痛みや腫れが見られ、自分で伸ばそうとしても指を動かす腱が断裂しているため、伸ばすことができません。さらに骨折を伴った場合は骨折時と同様の症状が見られることがあります。マレットフィンガーは腱が断裂しているものを腱性マレット変形、腱がつながっている骨の一部が折れている場合は骨性マレット変形と呼ばれています。
腱が断裂している場合、治療期間が長くなる傾向です。マレットフィンガーの症状を放置せず、早めの治療を行うことが後遺症を最小限に抑えるためにも重要です。
マレットフィンガーになりやすいのはどのような人ですか?
マレットフィンガーは誰にでも発症する可能性がありますが、その中でもなりやすい人にはいくつかの特徴があります。例えば野球・ソフトボール・バレーボールなどのスポーツをしている人は、ボールが指に直接当たるなどの外力が加わることがあるため発症のリスクが高いといえるでしょう。また些細な外傷が原因となることもあり、高齢者の方は指の組織が弱くなっているため比較的この症状になりやすいです。スポーツによる外傷から発症する人の年齢層は20~40代が多い傾向にあります。
中でも男性の患者が特に多い傾向にありますが、近年では女性にも多く見られるようになっています。予防策として、スポーツをする際は指を保護するサポーターやテーピングを使用することが重要です。高齢者の方は、怪我を防ぐための日常生活での注意が必要になります。
マレットフィンガーの診断方法や治療方法
マレットフィンガーを放置するとどうなりますか?
マレットフィンガーは放置すると症状が悪化してしまいます。受傷直後は第1関節が折れ曲がった状態になっていますが、放置によってMP関節(指の付け根の関節)も折れ曲がってしまうスワンネック変形をきたすことがあります。スワンネック変形の主な原因は、PIP関節(第2関節)における伸筋力と屈筋力のバランスの異常です。このようにマレットフィンガーの状態を放置することで、指の筋力のバランスが崩れ悪化してしまうケースがあるため、受傷したときはただの突き指と思わずに早めに医療機関を受診しましょう。
マレットフィンガーはどのように診断されますか?
指の形が第1関節で曲がっていればマレット変形を起こしていると判断できますが、腱性マレット変形か骨性マレット変形かを見極めるためには、X線撮影によって診断されます。DIP関節の背側の腫脹・疼痛があり、屈折は可能だが伸展は不可能の場合でも診断はできますが、末節骨の掌側亜脱臼が伴う場合があるためX線撮影での診断が行われます。
マレットフィンガーの治療方法を教えてください。
腱の断裂がある場合とない場合で治療方法が異なります。腱の断裂が見られる場合は完治するまでに最も時間を費やす傾向です。手術による治療法が一般的で、石黒法と呼ばれる手術をおこないます。石黒法は細い鋼線で折れた骨を元に戻してから第1関節を鋼線で固定する手術をおこないます。石黒法は切開しないため、身体の負担が少ない手術です。腱の断裂が見られない場合は、装具によって固定する保存療法をおこないます。
装具として使用するのは、セーフティーピン型スプリントというものです。スプリントの装着期間は初診より4週目までDIP関節伸展位・PIP関節屈曲を固定します。5週目以降はPIP関節部を切り離してDIP関節のみを4週間固定します。
完治するまでの期間はどのくらいですか?
マレットフィンガーの完治期間は症状の重度さ・患者の個人差によって異なります。マレットフィンガーでも骨折を伴っている場合と腱の損傷のみの場合とで異なりますが、約2ヶ月程度で回復するといわれています。治療期間中は指を保護し、指の関節を適切な角度で安静に保つことが重要です。リハビリテーションは医師の指示通り適切に行うことで、指の機能回復を促進できるでしょう。
後遺症は残るのでしょうか?
早期に発見・治療できると後遺症は少ないといわれていますが、治療せずに放置すると後遺症を残すことがあります。それが前述したスワンネック変形というものです。多くの場合は回復が期待できますが、重症の場合や治療が遅れた場合には後遺症が残ります。日常生活やスポーツ活動に支障をきたすことがあるので、後遺症を残さないためにも、医師の診断・治療の早期開始が重要になります。
マレットフィンガーの予防方法
マレットフィンガー予防方法を教えてください。
突き指は意識的に避けることは極めて困難なものです。スポーツをするときは手指のストレッチ・テーピングによる保護をすることで予防できます。スポーツといっても球技による受傷が多いことから、そのスポーツによって起こりうる可能性を少なくしなければなりません。スポーツでの怪我をなくすのはかなり難しいものですが、指を曲げたままでの動作を少なくすることが大切です。
スポーツ以外での予防は、こちらも同様指を曲げたままの動作を少なくする・注意深く行動することが大事になってきます。これらのようなことに気をつけながらなるべく指への負担を減らしましょう。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
マレットフィンガーは突き指から発症することが多いものです。球技などのスポーツをしているときに受傷し、その後にマレットフィンガーになることから、別名ベースボールフィンガーとも呼ばれています。スポーツをする際はテーピングを適切に巻くことや指先を曲げた状態での動作を少なくすることで予防できます。高齢の方は些細な外傷をしてもマレットフィンガーになることが多いため、手を使って何かをする際は十分に注意してください。
また受傷後、早期に治療を開始すると後遺症を残さず完治させられる可能性が高いです。指先などに怪我をしたときは早めに受診することを心がけましょう。
編集部まとめ
なかなか聞かないマレットフィンガーという病名ではありますが、比較的日常で起こりやすいとされているものです。
球技を趣味としている方や高齢の方は十分に注意しましょう。
マレットフィンガーの症状は第1関節の腱が損傷・または骨折を伴った損傷をしてしまうので、第1関節から先を自力でのばすことができなくなるというのが主な症状です。
治療法は自然療法が多く、装具による固定が一般的で、骨折を伴っている場合は手術で細いワイヤーを挿入し固定する方法がとられます。
日常生活やスポーツをするときは、指先を曲げたまま動作を行わないように気を付けましょう。
参考文献
「マレット変形(槌指)」(日本整形外科学会)