ホワイトソックスにドラフト11巡目で指名された、オレゴン大3年の西田。今季のNCAA1部リーグでの主な成績は打率.312、5本塁打、25盗塁

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ホワイトソックスにドラフト11巡目で指名された、オレゴン大3年の西田。今季のNCAA1部リーグでの主な成績は打率.312、5本塁打、25盗塁

「父が『よかったな。プロ野球選手になれるやん!』と言ってくれて、ふたりでハイタッチをして喜んだ後、深夜だったのでとりあえず寝ました」

MLBドラフト会議の最終日、シカゴ・ホワイトソックスから11巡目で指名された米オレゴン大学3年の西田陸浮(内野手)は、日本時間7月12日の未明に迎えた歓喜の瞬間を笑顔で振り返った。

【写真】渡米して2年制の大学やオレゴン大でプレーする西田

西田は大阪の履正社ボーイズ(現・北大阪ボーイズ)を経て、ダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)らを輩出した名門・東北高校に入学。エリートコースのようにも思えるが、「履正社ボーイズのバッテリーの爛弌璽拭辞瓩任弔い討い辰心兇犬任后幣弌法廚般世した。

それでも1年生のうちからレギュラーをつかみ、甲子園には縁がなかったがチームの主力として活躍を続けた。しかし、最後の夏を終えた西田は野球をやめるつもりだったという。

「『これ以上、野球を続けるのはしんどい』と思っていましたから。プロになるつもりもなかったし、大学に行くことすら考えていませんでした」

そんな中で父から、スポーツ留学支援会社「アスリートブランド」が主催するアメリカ大学野球のセレクションを紹介された。

本場の野球に触れながら、「経営者として活躍する」という未来を思い描いた西田は、そこから英語の猛勉強を始める。「まったく勉強してなかったので、アルファベットのA・B・Cから(笑)」という段階から学び直し、セレクションにも合格して異国の地へと渡った。

まず通ったのは、2年制のマウントフッド・コミュニティ・カレッジ(オレゴン州)。「野球より勉強のほうが大変だった」というが、1年目から打率.415(リーグ3位)、33盗塁(同1位)という成績を残し、2年目も活躍。すると、多くの名選手を輩出してきたオレゴン大から、約400万円の奨学金(返済不要)付きのオファーを勝ち取った。

「アメリカの大学では、そういったオファーが監督から直接個人のメールに来るんです。たった2、3ヵ月間でも環境がガラッと変わって、いろんな人との出会いがある中で新しい目標が生まれる。そういうところも日本とは違いますね」

オレゴン大の3年次に編入した西田は、大学最高峰のNCAA(全米大学体育協会)1部リーグでも63試合に出場して打率.312、5本塁打、25盗塁と躍動。同大学のシーズン最多盗塁記録を打ち立てた。

西田がチャンスをつかむことができたのは、本人が「昔から自分の思いを積極的に発信するタイプで、オレゴン大からはコーチ就任のオファーもあった」と語るほどの、強烈なリーダーシップと強靱(きょうじん)な精神力にほかならない。

「アメリカでは発信力と、グラウンド内外でメンタルをコントロールできることが重要だと感じました。

例えば、昨年の冬に僕の母が亡くなったんですが、大切な試合の前に相手チームの関係者から『お母さんが亡くなってよかったね』といったメッセージが送られてきたことも。

そんな中で狆,討訌手瓩砲覆襪燭瓩砲蓮△匹海で気持ちをリセットして揺さぶられないことが大切です」


東北高校卒業後に渡米して2年制の大学やオレゴン大でプレー。目まぐるしい環境の変化に対応するメンタルの強さも活躍できた要因のひとつ(写真/本人提供)

MLBの各球団も西田の「心・技・体」の充実ぶりに気づき、最終的には18球団からオファーがあったという。その中で実際に指名したのは、「事前の交渉がほとんどなかった」というホワイトソックスだった。

「チーム関係者から、『日本時間の午前1時頃に、ドラフトで指名するからテレビを見ていてほしい』という連絡があって。指名されたときはうれしかったですけど、知人や友人からスマホにすさまじい数のメッセージが届いて、その反響の大きさに驚きました」

日本人選手のメジャーのドラフト指名は、2013年の加藤豪将(現日本ハム)以来となる5人目。ただ、メジャー1年目の目標に関しては明言を避けた。

「当然、活躍したい気持ちはありますが、実際にチームに入ってみないと具体的な目標は立てられません。これまで僕はSNSで自身の目標を発表してきましたが、犂萃イ譴2、3ヵ月以内に達成できそうなもの瓩砲靴討ましたし、それを達成しながら前に進んできました。

現段階の自分の能力や置かれている状況を考えた上で絶対に達成できないだろう目標は、所詮は夢でしかないので」

独自の考えを持つ西田だが、長期的な視点では大きな野望も抱いている。

「日本の野球界は王貞治さんや大谷翔平選手など、さまざまな方のおかげで発展してきましたが、将来は『日本の野球界の1%は、西田陸浮のおかげで発展した』と言われるようになりたい。そのために選手としての活躍はもちろん、僕のアメリカでの経験を次世代の選手たちにつなげることも大切だと思っています」

野球界発展の1%を担う存在になるための一部として、西田は「株式会社ワンハネ」という会社を設立。先述のアスリートブランド社をはじめ、多くの企業や個人の後押しを受けながら、今冬に「アメリカの4年制大学入学を見据えた、中学生向けの野球教室とトライアウト」の実施を検討しているという。

「アメリカの大学との契約自体は15歳の時点で結ぶことができます。そうして留学できる確約を得た上で、高い技術やチームで目標に向かう精神も身につけられる日本の高校の野球部で成長し、同時に英語も覚える。そうしたらチャンスをつかめる環境がアメリカには整っていることを周知していきたいです。

僕のレベルでもメジャーからドラフト指名を受けられたわけですから、可能性は十分にある。ホワイトソックスからは、『来季に向けて、オフシーズンも練習してきて』と言われていますし、選手としても頑張りますが、並行してアメリカで野球をする魅力を伝えていけたらと思います」

メジャーのドラフト指名にも浮かれることなく、西田は野望をかなえるために一歩ずつ歩みを進めていく。

●西田陸浮(にしだ・りくう) 
2001年5月6日生まれ、大阪府育ち。内野手。身長168僉E賈鵡盥擦1年生からスタメンで活躍し、卒業後に渡米。2年制大学を経て、オレゴン大学に編入(3年次)してからも好成績を残し続け、7月のMLBドラフト会議でシカゴ・ホワイトソックスから11巡目で指名された。

取材・文・撮影/白鳥純一 写真/アフロ