「甲状腺クリーゼ」の症状や原因について解説!甲状腺に疾患のある方は要注意!

写真拡大 (全4枚)

甲状腺クリーゼという病気は甲状腺に何らかの病気を抱えている方で、感染や手術などの強いストレスが与えられると発症するといわれている病気です。生命の危険に関わる恐ろしい病気です。

バセドウ病や甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症または甲状腺機能中毒症などといった病気と深い関わりがあります。

治療中や普段の生活でも気をつけるべきことがいくつかあるので、そちらも合わせて解説していきます。

甲状腺クリーゼの症状や致死率

甲状腺クリーゼとはどのような病気ですか?

コントロール不良な甲状腺機能中毒症では感染・手術・ストレスを原因とし、高熱・循環不全・ショック・意識障害をきたす病気です。また生命の危険(致死率10%以上)を伴う恐ろしい病気です。
このような生命の危険が脅かされるような甲状腺中毒状態を甲状腺クリーゼと呼んでいます。症状は多臓器における非代償性状態を特徴とし、高熱・循環不全・意識障害・下痢・黄疸などがあります。発症におけるメカニズムはまだ解明されていないことが多いです。
原因としていわれているのが感染・手術・ストレスなどがあります。また大元の病気がバセドウ病とされていて、未治療や治療中断のバセドウ病患者が多数を占めています。

どのような症状がありますか?

全身性症状・臓器症状・甲状腺基礎疾患関連症状の3つに大別されます。

全身性症状

全身性症状には38℃以上の高体温、1分間に130回以上の頻脈・多汗・ショックなどが代表的な症状です。

臓器症状

意識障害を中心とした中枢神経症状があります。大きい声で叫んだり暴力的な状態になったり、ふるまいに一時的に混乱がみられる状態になってしまう場合もあります。
また精神異常・傾眠(周囲からの刺激で覚醒するが、すぐに意識が混濁する)・痙攣・昏睡などもみられることがあるようです。下痢・嘔吐・黄疸などの消化器症状や心不全を中心とした循環器症状も特徴的な臓器症状です。臓器症状では中枢神経症状との合併が多く発生するといわれています。

甲状腺基礎疾患関連症状

甲状腺の働きが低下すると出てくる症状です。甲状腺ホルモンが不足し甲状腺機能低下症になると、元気がない・疲れやすい・寒気・皮膚の乾燥・便秘・むくみなどの症状が出ます。
一方甲状腺ホルモンが過剰になると、甲状腺機能亢進症または甲状腺中毒症になります。これらの病気では暑がりで汗がかきやすくなる・頻脈・身体の震え・イライラ・筋力の低下などが主な症状です。甲状腺クリーゼは甲状腺中毒症にあたります。

原因となる病気を教えてください。

原因となる病気にバセドウ病が挙げられます。バセドウ病にかかって未治療あるいは治療を中断した方に多くみられるようです。中断というのは甲状腺薬の不規則な服薬などのことを指します。
また破壊性甲状腺中毒症やTSH産生腫瘍などによる報告もあります。このように甲状腺中毒症といわれる病気にかかっている方が発症しやすい病気です。

致死率はどのくらいですか?

致死率は10%以上あるといわれていています。甲状腺クリーゼは重篤な状態であり適切な治療が行われない場合には、致死的な結果や後遺症をもたらす可能性があります。
死因で多いのが多臓器不全・心不全・腎不全・呼吸不全・不整脈などがあります。また後遺症を残す可能性があるようです。不可逆的な神経学的障害といわれるものです。低酸素性脳症・廃用性萎縮・脳血管障害・精神症などが少なからず見られます。

なりやすい人の特徴を教えてください。

甲状腺中毒症の方で未治療あるいは甲状腺薬を不規則に服薬している方に多く見られます。甲状腺ホルモンのコントロールが不良な方に感染や手術などといった強いストレスが加わることで発症するといわれています。上気道炎や肺炎などの感染症が多数を占めるようです。稀に破壊性甲状腺中毒者やTSH産生腫瘍を患っている方にも見られるようです。

甲状腺クリーゼの受診や治療

医療機関を受診する目安を教えてください。

バセドウ病にかかっている方で甲状腺薬を勝手に飲むのをやめたり飲むのを忘れたりした方で、38℃を超える発熱がある場合は甲状腺クリーゼが疑われるため、なるべく早急に受診してください。
また他の甲状腺中毒症にかかっている方で感染や手術などを行った際も注意が必要です。発症過程についてはまだ不解明なことが多いので、一概にこれらのときのみとはいい切れません。

どのような検査を行いますか?

甲状腺クリーゼは甲状腺ホルモンレベルが高くなることでも発症するため、甲状腺機能検査が行われ、TSH・F-T4・F-T3などのホルモン分泌量を測定します。これらのホルモンは甲状腺との関わりが深く、これらホルモンの分泌量が多かったり少なかったりすると甲状腺に何らかの異常がある病気のためです。
全身状態の把握のために一般的な血液・生化学検査・胸部X線・心電図などの一般検査が行われます。肝機能異常や腎機能異常の重症度は甲状腺クリーゼの予後にも関わりが深いとされています。循環不全・中枢神経障害・肝機能異常などの臓器不全が見られる場合には心エコーや脳波検査をすることもあるようです。

治療方法を教えてください。

甲状腺クリーゼは稀な病気ではありますが、放置すれば生命の危険が脅かされる病気です。検査の段階で甲状腺クリーゼの症状が強く見られる場合には、検査段階で治療を行っていきます。集中治療室で呼吸や血圧の管理をする必要があり、甲状腺ホルモン産生・分泌の減弱、甲状腺ホルモン作用の減弱・全身管理・誘因除去を行います。
また発症の原因となった病気によっても治療法が違う場合があるようです。薬物治療によって甲状腺ホルモンの分泌や作用を抑えます。全身管理では十分な輸液と電解質の補正、徹底した身体の冷却と解熱を行います。

甲状腺クリーゼの予防や注意点

甲状腺クリーゼを予防する方法はありますか?

甲状腺クリーゼを予防するためには甲状腺の病気を予防する必要があります。甲状腺の病気を発症させる可能性のあることには以下のようなものがあります。

タバコ

タバコは身体に悪いとして認知されているかと思います。タバコを吸っている方はバセドウ病になりやすいといわれていて、甲状腺が肥大しやすくなってしまいます。またバセドウ病で用いられるステロイド治療などは禁煙車に比べて喫煙者の方が効果が低いことがあるようです。禁煙を行うことは甲状腺にまつわる病気に有効な手段です。

ストレス

ストレスは甲状腺の病気に限らずさまざまな病気の原因となることがあります。バセドウ病はストレスによって引き起こされることが多いようです。ご自身の自覚がない場合が多いですが、ストレスにより免疫に関する部分に悪影響を与えていることがあります。
過度なストレスは身体に悪影響を及ぼすので、ストレス解消を心がけることでさまざまな病気の予防をすることが可能です。
また甲状腺の病気にかかっている方は、処方された薬を必ず服用してください。また定期的に医師の診断を受け、病気の状態を把握する必要があります。

治療中の生活の注意点を教えてください。

薬によっては効果が現れるまで2週間~2ヶ月かかります。甲状腺ホルモンが正常値に戻るまでは過激な運動は避けてください。また効果が出ると体重が増える場合があります。稀ではありますが、薬による副作用が出ることがあるので、出た場合は医師に相談する必要があります。
高熱や喉の痛みなどが副作用として現れ、治療が遅れてしまうと他の感染症を引き起こす場合があるので注意が必要です。必ず医師に相談し、早期に治療して和らげなければなりません。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

甲状腺クリーゼは致死率が10%程度ある大変恐ろしい病気です。主に甲状腺の病気にかかっている方がかかりやすい病気ですが、治療が遅れてしまったら命に関わる危険性があります。甲状腺の病気にかかっている方は、処方されている薬を必ず正確に服用してください。

編集部まとめ


甲状腺クリーゼについて解説しましたが、恐ろしい病気ということがわかっていただけたかと思います。

前述したように発症に至るメカニズムでまだ不解明なことが多い病気でもあります。またバセドウ病・甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症または甲状腺中毒症にかかっている方が必ず発症に至るわけではありません。

これらのような病気にかかっている方は処方されている薬を必ず正確に服用してください。日常の生活でも禁煙やストレスを抱えないようにしましょう。

甲状腺クリーゼについて正確な知識を患者も患者の周りの方も持っていると、大変役立つ可能性があります。かからないようにするために、日常生活から気をつけることが重要です。

参考文献

甲状腺クリーゼ

甲状腺の病気について(独立行政法人国立病院機構京都医療センター)

甲状腺とその病気(岐阜赤十字病院)