この記事をまとめると

■ガソリンスタンドのスタッフが給油しに来たお客に声をかけることがある

■その主な目的は物販だが声がけのきっかけ作りのために無料点検をしてくれることもある

■話を聞いてみると思いがけずおトクな情報や商品が手に入ることもある

ガソリンスタンド店員が営業するときの真理とは?

 一般財団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センターが発表しているデータによると、2022年3月末現在でサービスステーションの総数は2万8475カ所。そのうち、セルフ式のガソリンスタンドの数は1万608カ所、セルフ化率は37.3%とのことです。

 最近はセルフ式ガソリンスタンドも珍しくなくなりつつありますが、少なくとも国内の半分以上のガソリンスタンドは「フルサービス」であるともいえます。店舗に着くなり、給油はもちろんのこと、窓拭きやゴミ捨てまで店員が行ってくれます。セルフ式ガソリンスタンドだと氷点下の気温でも自分自身で給油しなければなりませんが、フルサービスであれば店員が代わりに対応してくれます。リッターあたりのガソリン単価が多少高くても、フルサービス式にこだわる人がいるのも納得できます。

■お客に声がけをする店員の目的とは?

 ガソリンスタンドで給油や洗車を済ませて出発しようとしたとき、不意に店員から声をかけられることがあります。それはキャンペーンの案内であったり、割引クーポンをくれたり……。よくあるのが物販の営業です。

 お客の側からすると「やんわりと断りたい」のが本音かもしれません。では、店員側はどう思っているのか? 数年前までとある大手ガソリンスタンドで働いていたという、20代後半の男性にお話をうかがうことができました。ちなみに、物販の営業成績で数県にまたがるエリアでトップ10を果たすほどの成績を収めていた方です。

■営業活動をしようと思ったきっかけを聞かせてください

 クルマの知識に乏しいガソリンスタンドの店員がマニュアルどおりに営業活動を行ったことで、ガクンと売上げが下がったことを知ったからです。個人の力では限界があるのを承知で、少なくとも自分がお世話になっている店舗では「ガソリンスタンドの店員はクルマに疎い」という先入観を覆したいと思ったことがきっかけです。とはいえ、片っ端からお客様に営業するわけではなく「あくまでも愛車の現状把握に協力させてください」というスタンスでした。

■お客様とのきっかけ作りの具体的な方法を教えてください

 まずは無料点検のご案内ですね。エンジンルームを開けさせてもらえれば、ウインドウウォッシャー液の残量や、エンジンオイルの量や汚れ、冷却水の状態、あとは車種にもよりますがバッテリーの状態など、あらゆる箇所が目視やちょっとしたツールを用いることでチェックできますから。その他、タイヤの空気圧や、溝の残量や片減り、ボディの状態をチェックして、板金塗装やコーティングのご案内……などなど。その気になればきっかけはいろいろあるんです。

 JAFが発表しているロードサービス出動理由TOP3なども話のきっかけとして使いましたね。ちなみに2022年度の1位はバッテリー上がり、2位はタイヤのパンクやバーストなんです。このふたつで全体の約60%を占めるほどです。自分のクルマをメンテナンスしてきた経験を活かしつつ、トラブルを未然に防ぐことで「いざというときに困らない」カーライフのお手伝いができればいいなと思っていました。

ときにはおトクな情報やアイテムが手に入ることもある

■断られること多かったと思いますが、怖さを克服するコツとは?

 とにかく実践あるのみ。いろいろなお客様と接することで経験を積みました。待っていても売れる確率は限りなく低いですし、とにかくダメ元でお声がけしましたね。

 その分、たくさんの失敗をしましたよ。失敗を恐れないことも大事かもしれません。慣れるというより思い切って話しかけてみる、それでお断りされたらさっと引く。そんなイメージです。

■失敗談のエピソードを聞かせてください

 よくあったのはお客さまにお声がけしたら電話中だったことですね。また、すでに先輩がお声がけしてお断りされたお客様に話しかけてしまったり……。あと、値引きしすぎたこともありましたね。

■これだけはお客様から言われたくないことは何ですか?

「ガソリンスタンドだからなぁ……」といったニュアンスで言われてしまうと辛かったです。

■もっとも高い売りものは何ですか?

 タイヤ&ホイールセットで25万円もの商品をお買い上げいただいたことです。

■これまででもっともうれしかったことは何ですか?

 勤務先のガソリンスタンドを辞めるときにお客様から餞別として2万円もいただいたり、「名残惜しいから連絡先を教えてほしい」と言ってくださったり……。退職したいまでもプライベートでお付き合いのある方との出会いがあったり……。頑張った甲斐あって、信頼していただけた証かなと感じています。

■信頼できる店員の見わけ方は?

 メリットだけでなく、デメリットもきちんと説明してくれる人、専門用語を連発するのではなく、クルマに疎い人にもわかりやすく説明してくれる人です。

■まとめ:「この人なら大丈夫そう」という直感は当たっている?

 クルマの購入の決め手のひとつに「担当セールスの人柄」を挙げる方がいます。クルマを購入するのはゴールではなく、スタート。「この人なら大丈夫そう」という直感を信じた結果、長い付き合いになる可能性もあるので当然といえます。

 ガソリンスタンドの場合、そこまで親密ではないにせよ、行きつけの店舗を決めている方も多いはず。店員さんが声をかけてきたら無下に断らず、話を聞いてみてください。思いがけず、おトクな情報や商品が手に入るかもしれませんから。