この記事をまとめると

■ここ数年の自動車ディーラーでは新車の納期遅延や人手不足が目立っている

■規制などによって店舗の建て替えが進まないケースも多い

■ニュータウン近辺のディーラーでは免許返納や下取りの相談が目立っている

新車ディーラーの悩みは納期や人手不足だけではなかった

 新車ディーラー各店舗のマンパワーは十分ではなく、今後は新車販売市場の縮小だけでなく働き手不足という視点でも店舗の統廃合が進んでいくものと考えている。さらに市街地では、建築関係法令により同じ場所での建て替えを行うとそれまで併設していたサービス工場が持てなくなることも多く、40年以上建て替えを行わずに営業を続けている店舗もあるのだ。

 そのため店舗が古いものの営業を続けて来たのだが、コロナ禍を経ても新車の納期遅延が深刻なままで、新車販売をしているのになかなか利益として計上できない(販売実績は新規登録[軽自動車は届け出]台数でカウント)日々が続き、ディーラーの体力が弱まっていくなかで、賃貸で営業していれば賃貸契約の解約、土地も含め自社所有の場合はそれらを売却して処分するディーラーが目立ってきているようだ。

 ただ、単純に店舗の統廃合などが“お金の都合”というだけでもないのも確か。たとえば、とあるディーラーの某店舗は東京都心への通勤圏にある東京隣接県の鉄道の駅近くにある。その駅周辺は40年前ほど日本がバブル景気に沸いていたころに駅周辺の宅地開発が進み、ニュータウンが形成され、都内などから多くの人が移り住んだ。そしてその店舗もそのような新しい住人を狙って当時新しく店を構えたのである。

「一戸建てやマンションなど数千万円の買い物をするのだから、引っ越し直後には新車への乗り換えは期待できないだろうと思う人もいるかもしれません。しかし、住宅購入資金を借りるときに新車への乗り換え分も含めて資金手配して、新車にも乗り換えてしまう人もいます。そして、そのような人が近所にいれば周囲の人も相乗効果として引っ越してから短期間で新車へ乗り換える人が多いので、ニュータウンはねらい目なのです」とは事情通。

新車の販売よりも免許返納や査定に関する相談の方が多い

 ニュータウン開発から40年が経っても、多くは定年退職などで仕事をリタイヤしてそのまま住み続けることになる。「ここのところ、新車購入のご相談よりも運転免許のご返納なども伴うこともありますが、マイカーそのものを持つことをやめるためのご処分の相談にいらっしゃるお客様も目立っております」とは、そのような環境の店舗に勤めるセールスマン。

 新車販売の低迷以前に、自家用車の所有自体を運転免許の返納も伴なうことで、車両を処分する動きはコロナ禍前より目立っていて新車販売現場を悩ませていた。バブル期ぐらいに開発されたニュータウンなどは日本全国にたくさんあるので、そのようなニュータウン近くにある新車ディーラーはどこも同じような問題を抱えていると言っていいだろう。

 そして、前述したように住宅地にある店舗となるので、多くのケースで建て替えもままならないので、そう遠くないうちに閉店となるケースが目立ってきそうではある。ニュータウンの近くには、別のニュータウンも開発されるので、同じディーラーで複数の店舗が近い範囲内で店を構えることもあり、そもそも各店舗の販売テリトリーも狭かったので、40年前とは比べものにもならない新車需要の落ち込みを見せるいまでは、店舗の集約は合理的な判断ともいえる。

 ただし、40年前ほどではないものの若い世代が集まるニュータウンの新規開発は続いており、そのような場所へ新規出店する動きも目立っている。つまり単純に店舗閉鎖を進めるのではなく、店舗数を減らす動きもあるもののいまの動きは“店舗の再配置”が行われているという表現のほうが的確ではないかと考えている。

 ただし前述したようにディーラーのマンパワーは、働き手不足が深刻で限界に近い状況になってきている。とくにメカニックは連日激務が続いており、セールスマン以上に離職が目立っているともいわれている。セールスマンにしてもコロナ禍と言うより、新車の納期遅延によるディーラーの収益悪化などもあり、新規採用はかなり抑えられているとも聞く。メカニック、セールスマンともにその業務内容もあり、正社員登用が原則となるので人件費負担も大きいのである。

 中長期的にはマンパワー不足がより深刻となり、店舗の再配置すらままならなくなる状況も十分考えられる。