マンション価格の高騰が止まりません。2023年3月には首都圏の新築マンションの平均価格が1億円を超え、東京23区に限れば何と2億円超えです。そのため、新築マンションを諦め、中古マンションに目を向ける人が少なくありません。ところが、その中古マンション、実は新築マンション以上に上がっているのです。このままの状況が続けば、中古マンションも買えない人が増えてしまうかもしれません。

平均2億円、3億円の超高額マンション

首都圏で信じられないような価格上昇が発生しました。不動産経済研究所の調べによると、2023年3月に首都圏で発売された新築マンションの平均価格は1億4,360万円と、初めての1億円超えとなりました。これまで、東京23区の平均では1億円を超えたことはあったのですが、首都圏の平均で1億円を超えたのは初めてのことです。しかも東京23区に限れば、平均2億1,750万円と、2億円超えという超高額となっているのです。

最大の要因は、東京都港区で「三田ガーデンヒルズ」「ワールドタワーレジデンス」という二つの超高額物件が発売されたためです。ワールドタワーレジデンスは第1期1次の販売住戸169戸の平均価格が2億4,933万円、三田ガーデンヒルズは321戸が販売されましたが、価格は2億3,100万円から45億円までで、最多価格帯は3億8,000万円台と言われています。

この二つの物件が、首都圏全体と東京23区の平均価格を大きく押し上げたのです。

中古なら新築の6割ほどで購入できる

ここまで高くなると、さすがのパワーカップルでもなかなか手が届かず、購入層は企業経営者や資産家などに限られてしまうでしょう。それでも2023年3月の首都圏の発売月に売れた割合を示す初月契約率は79.5%で、東京23区は84.5%だったことから、超高額物件でも購入できる人が少なくはないようです。一般的に70%が好不調のボーダーラインといわれますから、かなり好調な数字と言っていいでしょう。

とはいえ、庶民ではなかなか手が出ません。そのため、価格的に割安感がある中古マンションに目を向けてみよう、ということになります。

図表1にあるように、2022年度の首都圏の新築マンションの発売価格の平均は6,907万円、それに対して、中古マンションは4,343万円。中古なら新築の6割ほどの予算で購入できる計算です。もちろん、中古といっても築年数や維持管理状態などによって価格は大きく異なりますから、平均よりも安い価格で手に入れることもできるはずです。

資料:新築は不動産経済研究所、中古は東日本不動産流通機構より筆者作成

中古マンション価格は10年間で1.7倍以上に

しかし、実はその中古の割安感がじわじわと縮小しつつあるのです。

改めて図表1をご覧ください。この10年間の新築と中古の価格上昇カーブを見ると、新築は上下動を繰り返しながら上がっています。しかし中古は、毎年のように着実に右肩上がりのカーブを描いています。

この10年間の上昇率を見ると、新築マンションの平均価格は2012年度の4,563万円から2022年度には6,907万円になり、上昇率は51.4%です。長くデフレが続いた中でも着実に上がってきたわけですが、中古マンションの平均価格はさらに上がっています。2012年度の2,515万円が2022年度は4,343万円ですから、10年間の上昇率は72.7%に達します。中古の上昇率は、新築の上昇率より21.3ポイントも高くなっているのです。

その結果、2012年度の新築と中古の平均価格を比較すると、新築が4,563万円に対して、中古は2,515万円。中古なら新築の55.1%で購入できたのが、先に触れたように2022年度には62.9%に上がってしまいました。

中古マンションの成約件数も伸びていない

かつては、新築マンションが首都圏だけで年間8万戸以上も供給されたこともあり、新築がマンション市場の中心でした。それが、新築の用地取得難などから供給戸数が減少し、価格も高騰して買いにくくなったことから、代わって価格の割安感のある中古マンションが買われるようになりました。

図表2にあるように、2016年度には中古マンションの成約件数が新築マンションの発売戸数を抜いて関係が逆転。首都圏のマンション市場では、中古マンションが中心となってきたのです。2019年度には中古の成約件数3万7,912戸に対して、新築の発売戸数が2万8,555件と、その差が1万戸近くに達したこともあります。

資料:新築は不動産経済研究所、中古は東日本不動産流通機構より筆者作成

しかしその後、両者の差は縮小し、最近では5,000戸前後の差で推移しています。新築マンションの発売戸数が伸びない中で、中古マンションの成約件数も期待したほどには増えていません。

これも、先に触れたように中古マンションの平均価格が新築以上に上昇して、割安感がじわじわと減少していることも一因になっているのではないでしょうか。

中古住宅購入の最大の理由は「手頃な価格」

新築住宅ではなく、中古住宅を買った人たちにその理由を聞いた国土交通省による調査の結果は図表3のようになっています。

資料:国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査」より筆者作成

中古住宅購入理由のトップは「予算的にみて中古住宅が手頃だったから」で、戸建て住宅では63.4%、マンションでは70.1%の人が、「手頃な価格」を挙げています。特に、新築マンションの価格高騰が目立つマンションにおいては、手頃な価格を挙げる人が多くなっています。

しかし、その手頃な価格というメリットが次第に失われつつあります。これ以上価格が上がる前に早めに買っておかないと、新築マンションだけではなく、中古マンションも買えなくなってしまう可能性があります。

先の図表1も分かるように、10年前の2012年度の新築マンションの平均価格は4,563万円でしたが、2022年度の中古マンションの平均価格はそれに近い4,343万円まで上がっています。現在の中古マンション価格は、10年前の新築マンション価格並みの水準なのです。

価格以外にもある中古マンションのさまざまなメリット

もちろん、中古マンションのメリットは価格だけではありません。最近は、リフォーム技術の進歩によって、一定のリフォームを行えば、新築住宅に近い居住性を確保できるようになっていますし、あらかじめ新築並みにリフォームされて販売されるリノベーションマンションも増えています。

そのほか、新築マンションの用地難によって極端に供給が減少しているエリアがあり、そうした場所で住まいを探すことにこだわれば、どうしても中古マンションに目を向けざるを得ません。新築が見つからないエリアでも、中古なら探すことができるわけです。

さらに、新築の大型物件などは販売開始から入居まで2年、3年とかかることがありますが、中古マンションなら即入居できる物件が多く、少なくとも3ヶ月以内には入居できるのが一般的である点にもメリットもあります。

さらなる値上がりの前に行動したほうが得策か

中古マンションには、このように価格以外にもさまざまな魅力があります。価格上昇によって、価格面でのメリットが縮小してもまだまだメリットは小さくないのです。

割安感が次第に縮小して、中古マンションもいよいよ手が届かなくなる前に、こうしたメリットにも目を向けて、早めに購入に向けた行動を起こすのも一つの選択と言えます。