この記事をまとめると

■現在のディーラーの雇用事情について解説

■新人指導についてはZ世代ならではの難しさも

■コンシェルジュを採用している店舗もある

コンシェルジュがいるショールームも

 今年4月に新入社員として社会人デビューしたひとたちが、5月の大型連休が明けるとそれまでの座学などの全体研修を終え、正式配属されることが多い。そのため連休明けになると、本格的な現場業務前の実地研修のようなものが始まるようで、いかにも新人研修も兼ねているような電話勧誘が多くなる。また近ごろでは珍しいが、企業などへの飛び込み訪問を行う企業もあるようだ。そこで何かが売れればそれに越したことはないが、度胸試しに行い、飛び込み先で名刺をもらって帰るのが一般的な流れとなっている。

 新車販売ディーラーでも新人セールスマンやメカニックは毎年迎え入れているが、その数はそれほど多くはないようだ。ある話を聞いたディーラーでは「2023年度に採用した新人セールスマンは4〜5人ぐらいと聞いています」とのことであった。毎年各店舗に新人が配属されるというケースはまずないようである。

 ディーラー個々で採用した新人セールスマンをいつ現場デビューさせるかは異なるようだが、あるディーラーでは5月の大型連休前までは本社などで座学研修を行ったあとは、正式配属先の店舗ではなく、その周辺店舗をインターンのような立場で短期間にて渡り歩き、7月ごろに正式配属先で独り立ちすると聞いたことがある。ベテランセールスマンに言わせると、いまどきのZ世代ならではというか取扱注意状態らしい。

「基本的に仕事に対する姿勢は受動的です。何か指示を与えればそこそここなしてくれますが、新車販売にはマニュアルのようなものは基本存在しません。自らが積極的に動きながら、自分の販売スタイルというものを確立していくので、その点では現状の新車販売業務では若い世代は不向きといっていいでしょう」とは事情通。それでも、先輩セールスマンがいろいろ面倒を見るのだが、口調やアプローチを間違えればたちまち、パワハラ騒ぎになるし、指導相手が女性ならセクハラ騒ぎも起きかねないので、指導役を自ら買ってでるセールスマンはあまりいないとも聞いている。

 ちなみにメカニックも傾向が同じで、あるセールスマンは「作業レベルがなかなか向上しないように見える」と語ってくれた。働き手不足のなか毎日まさに分刻みで作業を行う職場環境に嫌気がさして早期退職する新人も多いようなのだが、会社としても収入面で若干のサポートを行うのが精いっぱいで根本的な問題解決にはなっていないようである。

 最近ディーラーを訪れると、ショールームレディという表現ではいまどきはクレームも出そうなので、あえてショールームコンシェルジュと表現できる立場の女性を店舗に配属しているメーカー系正規ディーラーが目立つ。人材派遣会社などから派遣されるケースもあるようだが、各ディーラーで正社員として採用しているケースもあり、その採用数はセールスマンより多いこともあるようだ。

 来店したお客に最初に応対し、どのような用向きで訪れたか(点検・整備なのか、新車購入を検討しているのかなど)を聞き、商談テーブルなどへ案内して飲み物を出しながら、的確に担当者に来店客を引き継ぐのが主な業務と認識している。しかし、あえてコンシェルジュと表現したように、単に接客するだけでなく、そこで扱う車種の商品知識だけでなく、最近話題となりがちな各車種の納期情報なども網羅していることも多く、その情報量はセールスマンに匹敵するレベルとなっている。

「実際に見積りを作成したりして商談を行うことはしませんが、その一歩手前までのレベルならばコンシェルジュの多くは十分対応できるスキルを身につけています」とは事情通。

将来ディーラーマンがロボットになるかも!?

 男女雇用機会均等法(1986年施行)ができたころ、新車販売ディーラーでは大量の高校卒業程度の女子社員を採用していた。当時は新車を受注すると、新規登録や、保険関係などで膨大な紙ベースの書類が発生し、その処理のためにおもに事務職として採用されていたのだが、いまでは完全にアウトな発言となるが「男性社員のお嫁さん候補としても採用している」などと平気で当時は公言されていた。車両代金は高額であり、当時は現金販売が主流で日々高額な現金を手にすることが多かったので、身持ちをよくすることで使い込みなど犯罪に手を染めさせないようにするとの意味で社内結婚という形で早めに家庭を持たせようという動きも目立っていた。

 その後バブル崩壊や、男女平等社会の浸透などもあり目立って前述したような理由での女性社員の積極的採用は行っていなかったのだが、最近になって再び積極採用しているようである。女性ばかりというのはいかがなものかという意見もあるだろうが、コンシェルジュが積極採用される背景には働き手不足、つまりセールスマンの数が十分足りていないということも大きいようだ。

 ディーラー店舗へ車両を持ち込んで点検などを行うのが当たり前となっているので、新車購入目的以外の来店も多く、セールスマンとしても販売したお客が店頭にきたら最低でも挨拶ぐらいはすることになるだろう。十分なスタッフがいないなかでは、セールスマンだけでは店頭応対はすぐに限界レベルに達する。そこでマルチに接客できる人材を配置しながら、新車販売業務の補佐的立場としてコンシェルジュのディーラー店舗における存在は大きいのである。商談はできなくとも、商品説明を細かく行い、セールスマンの手が空くまで待ってもらったり、お客がそこまで時間がなければ後日電話連絡などをさせてもらうなど、次へとつなぐことができるのである。

 ただし、筆者の経験では、このようなコンシェルジュを店舗に置いているのはトヨタ、日産、ホンダ系ディーラーあたりなど、全体で見ればまだ一部のように見える。

 コンシェルジュ業務を通じて新車販売に興味を覚えて、新車販売業務、つまりセールスマンに転じるコンシェルジュも少なくないと聞く。

 超高級輸入車ブランドでは、店舗で車両販売するケースは少ない。相手となるお客が実業家など多忙な人が多いので、相手先に試乗車などを持ち込んで販売するスタイルがメインとなるので、日中は店舗にセールスマンがいることは少ない(あくまで筆者の経験の範囲)。そこである店舗では、セミリタイアしたようなセールスマン経験者とおぼしき老齢の男性が留守番代わりをしていたこともある。

 現状ではコンシェルジュは人間となっているが、将来的には生成AIを搭載したロボットに代わるかもしれない。ファミリーレストランですでに配膳担当として“ネコ型ロボット”が活躍しているのだから、それを完全に否定することはできないだろう。そしてその先にはロボットセールスマンが活躍する時代がくることはけっして夢物語でもなさそうである。