住宅プランを立てる際は、日影規制や北側斜線制限などの制限に注意が必要です。
今回は、日影規制と北側斜線制限の違いやそれぞれの適用地域、緩和措置などについて解説します。そのほかの制限についても紹介するので、参考にしてください。

日影規制とは

日影規制とは、どのような規制を指すのでしょうか。まずは日影規制の概要を説明し、適用地域、および例外と緩和措置について解説していきます。

日影規制の概要
日影規制とは、建築基準法における規制の一つで、建築物を建てる際に周辺の土地に一定時間以上、影がかからないようにするための制限のことです。周囲の日当たりの確保を目的にしています。

1年の中で最も影が長くなる冬至の日の午前8時から午後4時まで(北海道は午前9時から午後3時まで)を基準とし、用途地域と高さによって建物に制限が設けられています。

日影規制は主に用途地域が第一低層住居専用地域、第二低層住居専用地域、田園住居地域といった住居系で、さらに自治体の条例で指定されている場合に適用される規制です。具体的な規制内容に関しては気候や風土、日照時間などによっても異なるため、管轄の自治体に問い合わせるとよいでしょう。

日影規制の適用地域
日影規制が適用される用途地域、規制を受ける建築物、規制日影時間の限度は次のとおりです。

上記の表のうち、規制日影時間に関しては、各自治体の条例で定められる種別によって異なります。

参考元:市川市「建築基準法第56条の2の規定による日影の制限」

日影規制の例外と緩和措置
日影規制には以下のような例外があります。

・日影規制の対象区域外であっても、高さが10mを超える建物によって対象区域内が日影になる場合は日影規制が適用される

また、以下のようなケースでは日影規制が緩和されます。

・敷地が幅10m以下の道路や水面に接している場合、敷地境界が道路や水面の幅の2分の1外側にあるとみなす

・接する道路や水面などの幅が10mを超える場合、道路や水面の反対側の境界線から水平距離で5m、敷地に寄ったラインを敷地境界線とみなす

このように、日影規制には例外と緩和措置があることを押さえておきましょう。

日影規制と北側斜線制限の違い

日影規制と北側斜線制限では、適用される地域や制限の決め方などが異なります。ここでは北側斜線制限の概要、適用地域、緩和措置について解説していきます。

北側斜線制限の概要
北側斜線制限とは、建物を建てる際に、その建物の北側にある建物が南からの日当たりを確保できるようにする制限のことです。建物の高さが、敷地の真北方向にある道路や隣地の境界線上から一定の傾斜で引かれた線を超えないようにしなければなりません。基準の高さは境界線から垂直に5mまたは10mで、縦:横=1.25:1の傾斜の北側斜線内に建物の高さが制限されます。

北側斜線制限は身近な場所でも目につきやすいものです。たとえば、住宅エリアで屋根に傾斜が付いていたり、マンションの北側が階段状のバルコニーになっていたりする場合、デザインのためというよりも、北側斜線制限に配慮している可能性が高いでしょう。

北側斜線制限の適用地域
北側斜線制限の適用地域は、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域の五つです。

北側斜線制限の基準の高さは、以下のように用途地域によって異なります。

なお、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域で日影規制と北側斜線制限の両方の対象となる場合、より制限が厳しいほうが適用されます。

北側斜線制限の緩和措置
北側斜線制限も、以下のような条件の場合に緩和されます。

・北側が水面や線路敷などに接する場合(公園や広場は含まない)
・北側の隣地が敷地の地盤面より1m以上高い場合
・北側に計画道路または予定道路がある場合

そのほか、北側斜線制限に適合した建物でも、天空率の基準に合えば本来の規制よりも高い建物を建てられる場合があります。天空率とは、斜線制限に関係なく、高い建物を建てられる条件のことです。
2002年の建築基準法の改正で「斜線制限の適用除外制度」として導入されました。天空率の基準では斜線ではなく、ある位置から建物を見たときの全天に対する空の面積の比率で判断されます。

そのほかの建築制限

建築制限は、日影規制や北側斜線制限以外にも存在します。建物を建てる際は、これらの制限も確認する必要があるので解説していきます。

隣地斜線制限
隣地斜線制限とは、隣地の建物の採光・通風を確保するための制限のことです。隣地境界線より一定の高さ(20mまたは31m)上空に、用途地域別に定められた勾配で斜線を引き、その内側に建てる必要があります。

なお、隣地斜線制限は第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域には適用されません。隣地斜線制限よりも厳しい絶対的高さの制限(10mまたは12m)があるためです。

道路斜線制限
道路斜線制限は、建物の日照・採光・通風に加え、道路の採光の確保も目的とした制限です。前面道路の反対側の境界線から一定の勾配で斜線を引き、その斜線の内側に建てる必要があります。ただし、道路から一定距離(適応距離または適用距離)を超えて離れている場合は、道路斜線制限が適用されません。道路斜線制限の適用外の場所なら、直線的に建物を建てられます。

なお、道路斜線制限はすべての用途地域で適用されます。

まとめ

日影規制と北側斜線制限の違いや、それぞれの適用地域および緩和措置、そのほかの建築制限について解説しました。

建物を建てる際は日影規制や北側斜線制限など、建築基準法で定められた制限に注意が必要です。土地購入や新築の際は、建築基準法に従って「どのような建物が建てられるのか」を事前に把握しましょう。