新聞「ミラー」などを発刊している新聞社ミラー・グループ・ニュースペーパーズ(MGN)を違法な情報収集で提訴したヘンリー王子。現地時間6月6日(火)、ロンドンの高等法院に出廷し証言した。通信社「ロイター」によるとロイヤルファミリーが法廷で証言するのはエドワード7世以来初めて。エドワード7世は1870年に離婚裁判で、1890年にカードゲームを巡る中傷に関する裁判で証人になっている。

注目を集めているのは王子に対する反対尋問。王子は1996年から2010年にかけてMGNが新聞に掲載した約140の記事に違法な手段で得た情報が含まれているとしている。王子によると、王子がイートン校在学中にサッカーをしていて親指を骨折したことを報じた記事もその1つ。電話をハッキングして得た情報をもとにしていると法廷で主張した。でもMGNの弁護士アンドリュー・グリーンに「誰の電話がハッキングされたのか」と聞かれると王子の答えは「わからない」。グリーンは「それは答えになっていない」と詰問、さらに「王子、私たちがいるのは完全に憶測の領域なのでしょうか?」と厳しく質問した。グリーンは骨折の記事も含め報道は「BBCなど他のマスコミの報道やプレスリリース、王室の声明や公有の情報、王子の側近や友達、母のダイアナ元妃のコメント」に基づくものだと主張している。

また王子は証言でダイアナ元妃のバトラーだったポール・バレルを「二枚舌のくそ野郎」だと非難した。でもバレルに関する証言もグリーンの標的になっている。バレルは元妃の死後、インタビューで彼女について語ったり、彼女の私物を売却したりしている。これに関連して2003年12月、「バレルを問い詰めるために王子とウィリアム皇太子が彼に会う可能性がある」という記事が出た。王子はこれが王子と皇太子の電話の内容をハッキングして得た情報だと主張している。

法廷で王子はこの記事について「私はバレルに会って理由を聞くことは望んでいなかった」と証言した。しかし回顧録『SPARE(原題)』の中で王子は「当時私はオーストラリアの奥地にいたがバレルに会うため飛行機で帰国したかった」と書いている。グリーンが「あなたはバレルに会いたかったのか、会いたくなかったのか」と問い詰めると王子は「元の記事から回顧録を書くまでの間に随分時間が経っていた」。弁護士に答えるように求められると王子は「正直なところ覚えていない」。証言と回顧録の記述に矛盾があることを認めた。

法廷ではグリーンに「証言の一部はあなたではなく、弁護士が作成したものではないか?」と問われる場面も。王子は否定している。「カリフォルニアから弁護団と何度もテレビ電話をして私が書いたものだ」と答え、「毎回2時間半から3時間かけて話し合いをした」と主張した。今回の反対尋問でイギリスマスコミからは王子の証言の正確性や信憑性を問う声も上がっている。