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「子供部屋おじさん(おばさん)」とも呼ばれる、成人後も親と同居を続ける中年の増加が日本で取り沙汰されてきたが、米国や英国でもそうした人々やその予備軍が増えつつあるという。子供が親と同居するのは経済合理性が主な理由とされるが、合理的かどうかという問いは、未来の家族形態やライフスタイルの考察にまでつながる「深い問い」といえる。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

日本だけでなく米英でも
親と子の同居が増えている

 米国や英国で、親と同居する若者が増えているという(「巣立たぬ若者、英米も急増 3分の1が親と同居」日本経済新聞、5月28日)。成人したら親元を離れて自立した生活を営むことが常識的とされてきた米国や英国にあって、18歳から34歳の若者が親と同居する割合が上昇して共に約3分の1に達した。

 主たる要因は、主に家賃の上昇だと記事は分析する。2000年を100とした家賃は22年に、米国では180を超えて、英国でも160以上となっている。親と同居して家賃を節約することができれば、同じく高騰している学費などにお金を使うことができるし、もちろん遊興費なども多く確保できる理屈だ。経済合理的とも思えるが、子供の「自立」はどうなるのかという問題や、親と同居した状態が心地いいと結婚して子供を作ることが減ると予想され、少子化に拍車が掛かるのではないかと懸念する声もある。

 ちなみに記事では、18歳から34歳の親との同居率は、ポルトガル、イタリア、スペインといった南欧やクロアチア、ポーランドといった東欧が高いと報じている(60%半ばから70%前後)また、16〜34歳のデータという注釈付きだが、アジア諸国では韓国が70%と高いという。その一方で、米英と北欧で低い。わが国は、20年の国勢調査によると47%程度と、ややアジア諸国寄りの中位にある。

 わが国では家賃の上昇はそれほどでもないが、勤労者層の実質賃金が伸びていないので「生活が苦しい」ことは同様だ。「親との同居」が経済合理的なら、親との同居を前提としたライフスタイルや居住スタイルの変更を考えてもいいのではないか、とも思える。

 ただし、いささか揶揄(やゆ)気味に「子供部屋おじさん(おばさん)」という言葉が使われているように、成人して加齢しても子供が家族を持つような独立心や経済力を持たない状態を容認するのがいいことなのかどうか、また、前述のように、この生活形態が少子化を加速する可能性があることについてどう考えるべきかという問題がある。

 家族と居住の形態は、考える価値のあるテーマだ。

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