【糖尿病体験談】「中学で命の危険」の宣告 早期発見と治療で得た現在

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生活習慣病として広く知られている糖尿病ですが、それとは関係なくで発症することもあります。中学生の時に糖尿病が発覚したSさん(仮称)が、「自覚なしに自身や身近な人が糖尿病になった時、正しい知識で適切な治療を選択できるように」との想いから、自身の体験談を語ってくれました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年5月取材。

体験者プロフィール:
S(仮称)

岐阜在住、1988年生まれ。男性。中学生で1型糖尿病を発症、以後インスリン注射による治療を継続中。4年生大学卒業後、広告業界へ就職、現在は一般会社員。

記事監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

病気が判明した経緯

編集部

糖尿病発覚までの経緯を教えてください。

Sさん

中学3年生の秋に1型糖尿病を発症しました。当時、異常なのどの渇きがあり、1日に数リットルのお茶や水を飲むようになりました。夏場を過ぎていたし、受験シーズンに伴い部活動を引退していたにもかかわらず、異常な水分摂取と頻尿があった私に違和感を覚えた母の導きもあって、総合病院で診察を受けました。

編集部

すぐに糖尿病だとわかったのでしょうか?

Sさん

当時、注射などの医療行為に強い恐怖心があり、初診の病院では採血などの検査を受けられず、心療内科との連携のできる病院への紹介を受けて、その後治療を受けることになった2次病院へ行くことになりました。

編集部

結局、どのように病気が判明したのでしょうか?

Sさん

血糖の測定には、少量の血液があれば簡易的に測定できることの説明などがあり、心療内科との連携で血液採取に半日といった長い時間をかけることで採血ができました。結果、血糖値520mg/dLほどで、即時入院となりました。その入院で糖尿病の知識、治療法を学び、入院期間中に自身での血糖測定、食事量や注入インスリン量の調整、自己注射を覚え、以後自分での血糖管理生活が始まりました。

どのように治療を進めていくか、医師からの説明

編集部

糖尿病について、医師からはどのような説明がありましたか?

Sさん

自己免疫等によって、膵臓内のランゲルハンス島(膵臓の内部に島の形状で散在する内分泌を営む細胞群)のベータ細胞が破壊され、インスリン分泌が低下するタイプの糖尿病だと言われました。生活習慣病と言われる2型糖尿病と症状は似ているものの、インスリンが出なくなる原因が異なり、小児にも発症することが多いタイプの糖尿病だという説明を受けた記憶があります。早い人では乳幼児の頃から発症している例もあり、大きく体重が増減するといった一般的な糖尿病の兆しが出にくいことから、発覚が遅れて危険な状態になることもあると聞きました。

編集部

治療方針についてはどのような説明がありましたか?

Sさん

インスリン注射による治療を提案されました。体内でインスリン分泌が低下したため、外から注射して入れるというシンプルな治療法だという説明で、当時からわかりやすい治療法だと思っていました。自分で血糖測定をして自分で注射をするため、機器の使い方、薬の管理方法、薬の効きすぎによる危険などの基礎知識のほか、血糖や食事に関するより詳しい知識が必要と言われ、栄養指導なども受けました。

編集部

具体的な治療方法を教えてください。

Sさん

発覚当初はペン型注射による食事毎のボーラス注射と、毎晩打つベーサル注射の2種類の注射でした。成長期のため、食事制限や運動制限はありませんでした。インスリンの効きすぎによる低血糖を避けるため、運動の前後の補食を摂ることなど、厳密な血糖管理が治療のベースとなります。社会人になって生活が不規則になり、血糖管理が乱れた時にインスリンポンプを勧められ、2週間の検査入院を経て、現在はポンプによるインスリン注入による治療を行っています。ペン型注射と違い3~4日に一度皮下にチューブとともに穿刺し、チューブを皮下に残します。そこへスマホより小さいポンプで、インスリンを注入し不足分を補っています。

編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

Sさん

一番の変化は食事です。それまでは好き嫌いが激しく、栄養価を考えた食事をしてこなかったのですが、食事の血糖への影響や、インスリンの効き方のために食べ物に関する一切をがらりと変えることになりました。もとより野菜が苦手で、白米、パン、麺といった炭水化物と肉などのタンパク質のみの偏った食生活でしたが、食後の血糖の急上昇抑制のため、繊維質としての野菜の摂取によるバランスの改善、長期間の血糖上昇となる脂質の摂取量減少などを意識しました。

編集部

間食などは摂っていますか?

Sさん

エネルギーとなる糖類の摂取毎にインスリン注射が必要となり、面倒なため間食はほとんど摂らないようになりました。薬の効きすぎによる低血糖への対処のため、補食としてお菓子類を持ち歩くこともあります。インスリンポンプになってからは、注射の手間がかからなくなったため、間食や、食べ歩きなども容易となり、以前よりは摂る機会も多くなりました。

病気が判明した時の心境

編集部

病気が判明した時はショックでしたか?

Sさん

根治できない病気だと聞かされた時は、大変なショックでした。壊れた膵臓の回復は難しく、臓器移植は費用対効果をみても現実的ではありません。注射への恐怖心があり、インスリン注射はおろか血糖測定機の針さえ怖く、毎日食事毎と24時間に1度の血糖測定と注射という治療を、一生続けなければならないのかと大きな不安がありました。当時と変わらず未だに注射は苦手ですね。

編集部

病気が判明する前と後での心境の変化はありましたか?

Sさん

当時の症状は非常にのどが渇く、睡眠中にこむら返りが起こるといった程度だったため、深刻には考えていませんでしたが、医師から「このままでは3か月で命の危険がある」と言われ、その時初めて実感がわきました。その後の説明で血糖管理が不十分である場合には神経の障害や足の壊死といった症状を聞かされ、そういった症状は避けたいと思いすぐに治療を始めました。

編集部

これまでの治療の心の支えはなんでしたか?

Sさん

インスリン治療は毎日の習慣であり、歯を磨く・入浴するといったように早く慣れることで、「治療」という意識をなくしました。治療開始直後も医師から、血糖管理以外は普通の生活がおくれるとの話だったため、それほどの負担はありませんでした。注射への恐怖は一定にあり、血糖測定の穿刺や、1日4回のインスリン注射、定期健診の際の採血等、不慣れな場面はそのままなくなることはありませんが、長年の付き合いの中で不慣れながらも対応する術を得ていきました。

編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

Sさん

私は初期症状に母が気づいてくれたことで、早期の発見と治療ができました。しかし原因は自己免疫となっていますが、それがどのようにいつ頃起きたのかは不明でした。ぜひ、こんなタイプの糖尿病があることを知っていただきたいです。

編集部まとめ

生活習慣病として広く知られている糖尿病ですが、事故による臓器の損傷など様々な理由で発症することもあります。誰もがなる可能性のある病気であり、身近な人が糖尿病になった時など、正しい知識を持ち、適切な治療を選択することが大切です。

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