浦和対鹿島の試合を裁いたアンドリュー・マドレイ氏【写真:徳原隆元】

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審判交流プログラムの一環でマドレイ氏が主審を担当

 J1リーグ第16節の浦和レッズ対鹿島アントラーズの一戦は、1つのミスが命取りになるような緊迫感あふれるゲームになった。

 両チームとも球際では激しくいき、さまざまな駆け引きがあったが、試合は90分を終えて0-0の引き分けになった。

 そんな試合後、両クラブのロッカールームでは、この日の主審を絶賛する声が選手たちからも挙がっていたという。この試合の主審を務めたのは、アンドリュー・マドレイ氏。イングランド出身で、普段はプレミアリーグでの審判員を務めている。この度、日本サッカー協会(JFA)とイングランドにおける審判員の統括組織(PGMOL/Professional Game Match Officials Limited)の審判交流プログラムの一環で来日し、J1の試合とキリンチャレンジカップ2023の審判を担当することになっている。

 試合終盤のアディショナルタイムに4枚のイエローカードが出たとはいえ、これだけ激しく緊迫したゲームで、それまで両チームに出ていたカードは両チームに1枚ずつ。アドバンテージを取るべきところは、しっかりアドバンテージを取って試合を流し、見る者にも、プレーする者にも、ストレスを感じさせなかった。

 後半12分に、この試合最初のイエローカードを受けていた浦和のDFマリウス・ホイブラーテンは、「警告を受けたことは喜ばしくありませんが(笑)、それ以外は素晴らしい仕事をしてくれたと思います。よく『主審が存在しないような試合ができたら良い』と言いますが、その通りでしたよね。何か決定的なことをすることがなかったと思いますし、両チームにとってフェアなジャッジをしていたと思います。試合のトーンをコントロールしてくれましたし、個人的には会話ができたことも良かったです」と語っている。

鹿島DF関川は試合を通しての対応を絶賛「ストレスがなくできました」

 今日はより目の前の相手との戦いに集中できたと話したのが、鹿島のDF関川郁万だ。「レフェリーが良かったから、ストレスがなくできました。これには取る、これには取らないという基準が、言葉は通じなかったですけれど、伝えてくれましたし、何となくわかりました。すごくストレスなくやれました」と振り返った。

 特に関川が感心したのが、最後に4枚のイエローカードが出た場面だ。ファウルを受けた鹿島のMFディエゴ・ピトゥカが激高して、浦和のMF早川隼平を突き飛ばし、中盤で小競り合いが起きた。そこに鹿島GK早川友基と浦和のDF酒井宏樹が絡むことになった。マドレイ主審は、まず早川(友基)と酒井にイエローカードを出してから、あらためてピトゥカと早川(隼平)を呼んで、それぞれに警告を出しその場を収めた。

 関川は「慣れている感じがしましたね」と感嘆の声をあげて、「多少、こっちに寄ったり、あっちに寄ったりというのを感じることが多いですが、今日は全くなかったです。自分たちが審判相手じゃなくて、相手とちゃんと試合をできているということをすごく感じられましたね」と、スコアレスに終わった熱戦を裁いた主審を称えた。

早川(友基)は終盤のカード4枚が出された場面を説明

 アディショナルタイムに珍しく激高した早川(友基)は、この場面について「ラストプレーになることが分かっていたから、ボールを蹴りに行ったんです。そうしたら、酒井が(小競り合いに加わりに来たと勘違いして)『下がれ!下がれ!』って言ってきたんです。それに対して『そうじゃない』と言っていただけなので、俺は関係ないイエローなんです。レフェリーもそれを分かっていたんですけど、場を収めるためにイエローを出していました。だから、全然揉めたわけじゃなかったんです」と、その場で起きていたことを説明。「試合後に酒井選手と話し合いに行ったら『そういうことだったんだ』と言ってもらえました」と、誤解もしっかり解けたことも明かした。

 そのうえで「すごくやりやすかったです、正直。プレーを流すところとか、ファウルでも流すところとか、プレーを途切れさせませんでした。審判の方も、試合をどうコントロールすればいいかをわかっていたので、普段ならテクニカルファウルに対して日本人審判はイエローカードを出してしまうんですが、そこもサッカーの一部として捉えてくれて、ファウルとして取ってくれていたのは、すごく選手として『それがサッカーでしょ』という感じでした。自信を持って笛を吹いてくれていたんで、レフェリーに対しては、100%文句はなかったですね」と、マドレイ主審の笛を絶賛した。(河合 拓 / Taku Kawai)