陸上・日本選手権、男子100メートル決勝で優勝した坂井隆一郎【写真:奥井隆史】

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陸上・日本選手権

 8月のブダペスト世界陸上などの代表選考会を兼ねた陸上・トラック&フィールド種目の日本選手権最終日は4日、大阪・ヤンマースタジアム長居で行われた。男子100メートル決勝では、坂井隆一郎(大阪ガス)が10秒11(向かい風0.2メートル)で涙の初優勝。左アキレス腱痛を抱えたが、強行出場で栄冠を手にし、「地元の大阪で優勝したいと思っていた」と振り返った。前回王者のサニブラウン・ハキーム(東レ)はスタート直前に足がつり、10秒59で8位だった。

 得意のスタートから勝ち切った。坂井はいきなり飛び出すと、磨いてきた2次加速もまずまずで終盤へ。優勝候補のサニブラウンはスピードが乗ってこない。最後は小池祐貴、柳田大輝ら実力者の猛追を振り切り、涙を拭った。

「今年はシーズン初めから調子がいい。地元の大阪で優勝したい気持ちが大きかった」と喜び。大会2、3日前から左アキレス腱に痛みがあり、欠場もよぎった。「迷ったけど、優勝したいと思って走った。ズキンズキンするけど、重傷ではないと思います。騙し騙しできていた」。3日の予選、準決勝も負担をかけない走りを意識して乗り切った。

「痛くてやめたい気持ちもあったけど、今後もこういう状況があるかもしれない。チームで話し合って出ることにしました」

 冬季は腿上げで下半身強化。限界からもう1段階トライすることを繰り返し、爆発的を磨いてきた。「2次加速に手応えがあります」。昨年オレゴン世界陸上は、抜群のスタートを武器に準決勝進出。今年はさらに上を狙っている。

 3位以内の選手は有効期間内に参加標準記録10秒00を切れば代表内定。世界ランクでも選ばれる可能性はあるが、坂井は「標準を切ってから選ばれたい」と意欲。今回は怪我があっても、10秒11には「残念ですね」と満足できない。「まだまだスタートに磨きをかけて、伸びている2次加速もよくして、前半でもっとリードを獲りたい」。7月のアジア選手権にも出場予定という。

 日本がメダルを狙える4×100メートルリレーでは、スタート自慢の存在が必須。日本選手権王者となった男のさらなる躍進が期待される。

(THE ANSWER編集部)