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2023年春、所属レーベルを日本コロムビアに移すことを発表したfhánaが、移籍第1弾シングル「Runaway World」を完成させた。表題曲は人気バラエティ番組を原案とするTVアニメ『逃走中 グレートミッション』のOPテーマで、熱く疾走感に満ちたサウンドと強い決意の滲む歌詞からは、新体制となったfhánaの決意と心意気が伝わってくる。激動の時代を越えて、今夏にはメジャーデビュー10周年を迎える彼らが、今、届けたい音楽とは?メンバー3人に話を聞いた。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)

メンバー脱退、レーベル移籍という2つの大きな変化



──ニューシングルのお話に入る前に、fhánaに訪れた2つの大きな変化についてお伺いしたいです。まずは結成時からのオリジナルメンバーであるyuxuki wagaさんが、1月のライブをもって脱退されたこと。突然の発表だったのでビックリしました。

佐藤純一 実は結構前から、彼は別のことをやりたいんだろうな、という雰囲気は受け取っていたんです。なので昨年の夏頃に話す機会を設けたら、彼はアーティストとして表に出るよりも、サウンドプロデューサーといった裏方の道に行きたい気持ちがある、と打ち明けてくれて。それで元々出演する予定だった『Cipher』ツアー(“fhána Cipher Live Tour 2022”)の名古屋の振替公演を区切りにすることに決めたのですが、ただ、そうすると残されたライブはチケット販売済みのものだけになって、それはファンに申し訳ないので、1月26日にも渋谷でのライブを急遽組んで、その2公演を彼のラストライブとして送り出しました。

──皆さんはwagaさんが脱退することに対して、どのように感じましたか?

佐藤 まずファンが悲しむだろうなと思いましたね。自分も学生時代、好きだったバンドに対しては、初期メンバーというものに理屈ではない思い入れやロマンを感じていたので。とはいえ彼が決めたことでもあるので、お互い前を向いて進まなくてはいけないなと。

kevin mitsunaga  僕はバンド自体が生き物というか、常に変わっていくのが当然だと思っている節があって、むしろ固定のメンバーで長く続けていくことのほうが奇跡的だと思うんですね。だからこの10年近く、同じメンツでやれたのはすごいことだと思うんです。もちろん名残惜しい気持ちはありましたけど、そもそも永遠のものなんて無いので、心機一転頑張るぞ!っていう気持ちのほうが大きかったです。なのでくよくよしている感じは全然なくて。

towana 私たちも突然「辞めます」と言われたわけではなくて、そういう雰囲気は感じていたなかで決まっていったことなので、fhánaの物語はこういう風に進んでいくんだなあっていう受け止め方をしていて。やっぱり突然知らされるふぁなみりー(fhánaのファンの呼称)たちのことのほうが心配でした。でも、fhánaは大丈夫だし、それぞれの人生を進んでいくだけの話なので。そういうことを今年の2本のライブで見せたかったし、実際に見せられたと思っています。その気持ちを継いで新曲を作ったところもありますし。

──確かに今回のニューシングルからは、これからもfhánaの活動を続けていく決意表明というか、覚悟の深さのようなものを感じました。

towana 「続けていく」というよりも「進めていくしかないでしょ!」みたいな、ポジティブな気持ちですね。今年の夏にはメジャーデビュー10周年を迎えますし、「3人になっても前を向いてやっていくしかないよね!」っていう。

佐藤 それもあるし、退路を断たれて前に進むわけではなくて、もっと前向きに楽しくてワクワクしている感じですね、今は。

towana 新曲(「Runaway World」)の歌詞に“冒険の始まり”とか“新しいセカイへ”といった言葉が入っていますけど、私たちもどうなるのかわからない、未知の冒険がこれから始まるんだなっていう気持ちが強くて。

kevin 俺はメジャーデビューしたての頃の気持ちに近いかもしれない。「この先どんなことが待っているんだろう?」っていう。

──メジャーデビューのときも、towanaさんが正式メンバーに加わって、新しい体制でのfhánaの始まりだったわけですしね。そしてもう1つの大きな変化として、日本コロムビアへのレーベル移籍があります。これはどのようなご縁で?

佐藤 今お世話になっている日本コロムビアのスタッフの皆さんは、僕が伊藤美来さんに「閃きハートビート」(2019年)を楽曲提供させていただいたときからのお付き合いで。そこから親交を深めていくなかで、すごくいいチームだと感じていたんです。

──fhánaのYouTubeチャンネルに動画がアップされていましたけど、皆さん、日本コロムビアの法被を着ていましたね(笑)。

towana そうなんです!(笑)。佐藤さんは元々お仕事を通じて面識があるけど、私とkevinくんは、あの日が初顔合わせだったので、すごく緊張していたんですよ。日本コロムビアさんは歴史のあるレーベルですし、レーベルを移籍すること自体も初めてのことだから、不安に思いながら(日本コロムビアの社屋に)行ってみたら、法被を着た方々が迎えてくださって(笑)。あのとき、ドアを開けた瞬間、気が抜けたんですよね。



──そんなに緊張していたんですね(笑)。

towana すごく気を張っていたので(笑)。そうしたらすごく愉快に迎えてくださったので嬉しかったです。

kevin しかも案内していただいた部屋が、床全体が人工芝になっている「芝ルーム」で(笑)。和んだ空間で、初対面のときからすごく楽しかったですね。温かいなあと思いました。

佐藤 やっぱり人の縁は大切ですよね。

“新しい冒険”の幕を開ける、昂揚感と祝福に満ちた新曲



──新体制での第一弾となるニューシングル「Runaway World」は、TVアニメ『逃走中 グレートミッション』(以下、『逃走中』)のOPテーマ。こちらはタイアップのお話を受けて制作されたのでしょうか?

佐藤 はい。移籍のお話を進めさせていただいているなかで、タイアップのお話をいただいたので、ぜひやらせてくださいと。ただ、そうなるとすぐに制作しないといけない状況だったので、去年の年末から今年の年始めにかけて制作していました。元旦の朝9時にリテイクのメールが届く、みたいな(苦笑)。

──大変だったんですね(笑)。ということは、アニメ制作サイドからも楽曲に関する細かい要望があったのですか?

佐藤 『逃走中』なので疾走感はマストで、なおかつ緩急のある楽曲、fhánaの楽曲で例えると「divine intervention」みたいな曲調、というお話をいただいていました。なので“速いアニソンロック”系統の楽曲がいいんだろうなとは思ったのですが、人気バラエティ番組の「逃走中」がどういう形でアニメになるのか予想もつかなかったので、企画書や脚本といった資料をいただいて。ただ、絵がないと雰囲気が掴めないので、キャラクターデザインも手掛かりに制作を始めました。今回はfhánaとしても節目のタイミングの楽曲になるので、気合いを入れて作ったのですが、今までで一番リテイクが多かったですね。

──最初はどのような形だったのでしょうか?

佐藤 最初のバージョンは、サビがもっと明るい感じだったのですが、そのままだと爽やかすぎるのでもっと強い要素、『逃走中』なのでハンターからの脅威や絶体絶命的な危機感、何が何でも生き残る強い決意、それとバトル要素を加えてほしいということで、調整していきました。その結果、前向きでアメリカンロック的なコード進行の楽曲という、fhánaとしても新しいものができました。実際にアニメを観たときも、今の完成形のバージョンのほうがこの作品には合っていると感じたので、結果的に良かったなと思っています。



──『逃走中』のアニメも観させていただいていますが、結構予想外の展開があってすごい作品ですよね。

kevin 話の進み方やテンポ感がすごく早いですよね。ラストには引きもあって次回が気になる終わり方をしますし。「えっ!怪獣が出てくるの……!?」みたいな(笑)。

──渋谷が“怪獣都市”という設定なんですよね(笑)。

佐藤 ナレーションも本家の「逃走中」と同じ方(マーク・大喜多)なのがいいですよね。観ていると、画面に向かって思わずオウム返しにモノマネしてしまうんですよ(笑)。

──モノマネをしている佐藤さん、見てみたいです。

佐藤 実は今回のシングルのDVD付き限定盤に収録されるMVのメイキング映像に、そういうシーンが入っていまして……。

──あるんですか!?(笑)。

kevin レコーディングのときも、佐藤さんがボーカルを録音する際に、ブースの中で誰も録音も撮影もしていないのに1人でモノマネしていたんですよ(笑)。

──どんだけ気に入ってるんですか(笑)。towanaさんはアニメの印象はいかがですか?

towana アニメ自体も毎回面白く観ていますけど、ビックリしたのは、ファミリー向けの朝のアニメなので、オープニングアニメに歌詞のテロップが入るんですね。林(英樹)さんが作るfhánaの歌詞は、ちょっと文学的だったり哲学的なことを言っていることが多いんですけど、それをテロップとして見ると、すごくアニソンらしさが感じられて。より元気が出るし前向きな楽曲になっているように感じました。それこそ主人公の(トムラ)颯也くんの心情に寄り添う歌詞になっているなと思って、毎回新鮮な気持ちで観ています。

佐藤 『逃走中』は子供向けのアニメになるので、自分が子供の頃の夕方にアニメを観ていた感覚が甦ってきて懐かしかったですね。しかも『逃走中』自体も、観ていてポジティブになれる作品なんですよね。

──颯也くんは朝アニメの主人公らしい、すごく真っ直ぐな性格をしていますし。

towana そうそう、明朗な感じがいいですよね。

──そういう部分は今回の楽曲の歌詞にも感じられるところで。今までの楽曲に比べて、シンプルかつ力強い言葉がたくさん使われている印象を受けました。

佐藤 歌詞も結構大変で、林くんには『逃走中』の作品性と、fhánaの新しい旅立ちを表現してほしいとお願いしたのですが、作品サイドからかなり細かくリテイクが入って調整しました。ただ、その中でも“ここはシンセカイ 冒険の始まり”や“Revolution 光を胸に抱き”のように、作品だけでなくfhánaの節目を感じさせる言葉も入れることができて、良い感じにまとめることができました。

──タイトルの「Runaway World」という印象的な言葉も、1番のサビに盛り込まれていて。

佐藤 実は最初に1コーラスが出来上がったときは、その部分に2番のサビ頭の“Translation”というフレーズが入っていたんですよ。そのときはまだ曲名が決まっていなくて、仮タイトルで「New World」と付けていたのですが、その後に「Runaway World」というキャッチーなタイトルができたので、その言葉を1番のサビに入れ替えたりして。

towana そのサビの頭のフレーズを入れ替えたのは、確か私の発案だったと思うんですけど……。

佐藤 ……そうだったっけ?

towana 覚えてないんだ!?(笑)。

──kevinさんは歌詞からどんな印象を受けましたか?

kevin さっきお話したfhánaの新体制に対するワクワク感や、今の自分の感情にすごく合っているなと感じましたね。モロに“冒険の始まり”と歌っていますし。そんななかでもすごくいいなあと思ったのは……。

towana 私もある!

kevin 僕から先に言わせて。やっぱりサビの“僕ら絶対超えてみせる”ですね。

towana えー。

kevin そこじゃなかった(笑)。

towana 私は最後の“この身千切れても 立ち止まっていられない”。本当にそういう気持ちなんですよね。立ち止まっているヒマはないっていう。この部分も一度変更することになりそうだったんですけど、ここは譲れなくて、そのままにしてもらいました。

佐藤 あれ?どう変えられそうだったんだっけ。

towana 確か“この身千切れても 進み続ける”みたいな感じになりそうだったんですよ。でも“立ち止まっていられない”のほうが決意感が伝わると思って、そのままにしてもらいました。佐藤さん、本当に覚えてないんですね?(笑)。

佐藤 そうだねえ(苦笑)。

kevin 自分もその形がすごくいいと思う。それと“この身を使い切る覚悟があるよ”もいいですよね。

towana ここは林さんが、私が作詞した「ユーレカ」の歌詞(“何もかも全部感じたい この身体を使い切って”)から引用してくれたみたいで。この歌詞を見た瞬間、そこから引っ張ってきているんだろうなって思ったから、こないだ名古屋のライブで会ったときに直接聞いたら「そうです」って言ってました(笑)。

kevin なるほどね!

──めちゃエモい話じゃないですか。“この身千切れても”もそうですけど、すごく覚悟が感じられる楽曲ですよね。そこは今の3人の想いが反映されているんだろうなと。

佐藤 特に2番以降の歌詞というのは、作品側の監修がそれほど入るわけではないので、fhánaとしてのメッセージ性が強くなっていると思いますね。



──towanaさんの歌声からも、いつも以上の力強さとある種の開放感を感じました。

towana 作品に寄り添うのはもちろん、fhánaとしてもすごく重要なタイミングという気持ちが強くあったので、今まで以上にたくさん練習してレコーディングに臨みました。アニソンらしいインパクトやキャッチーさを乗せたいなと思って、色んな歌い方を試したうえで歌録りをして。「この部分はこう歌おう」というのを細かく決め込んで、今までの中で一番練習したかもしれません。

──サウンド的には、バンドサウンドとストリングスの融合がダイナミックな昂揚感を生み出しつつ、祝福するような雰囲気もありますよね。

佐藤 特に鐘の音は祝福感がありますよね。鐘の音量のバランスって難しいんですよ。僕はfhánaに限らず、こういう鐘の音を使いがちなんですけど、音程感が微妙なので、とあるスピーカーだとあまり聴こえないけど、別のスピーカーだとすごく大きく感じたりして、その音量の調節でいつも悩むんですよね。

kevin 倍音がすごいから。

佐藤 そう。なのでミックスの最後はいつも鐘の音の調整をするんです(笑)。エンジニアの高須(寛光)さんと「いやあ、俺たちのチューブラ(ーベル)の時間がきましたね」とか言いながら、0.1単位で細かく調整していて。

towana わかんないですよ、そんなの(笑)。

佐藤 あとはシネマティックなパーカッションのSEを後ろで鳴らしているんですけど、それは『逃走中』の世界観を意識したところで。それこそバラエティ番組の「逃走中」でも、ハリウッド映画の劇伴みたいな、メタリックなパーカッションが使われたりしているので、そういうイメージを踏まえて。

──なるほど。あとは佐藤さんのコーラスパートも多めに入っていますね。

佐藤 これはtowanaも言っていたんですけど、僕のコーラス部分はライブでお客さんに一緒に歌ってほしいなと。

towana 楽しそう!やっとライブでの声出しが解禁になったので、ぜひ佐藤さんパートをみんなで歌ってほしいです。

メンバー総力戦!? fhánaの新たな可能性を示す「Spiral」



──カップリング曲の「Spiral」はメロウで心地良いグルーヴ感のミディアムナンバー。Aメロを佐藤さんが歌っているのも驚きましたが、クレジットを見たときにメンバー全員+林さんの名前が並んでいるところにもグッときました。

kevin クレジットの表記上、全員の名前が並ぶのは意外となくて……あれ、過去にあったっけ?

towana いや、ないない!だって私と林さんが2人とも作詞したのはこの曲が初めてだから。このタイミングで林さんも含めた全員がクレジットに並んでいて、しかも全員で歌っているので、すごく意図的にやっているっぽいじゃないですか。「新しくなったこのメンバーでやっていきます!みんなの総力戦です!」っていう。

──あれ?そういう意図ではなかったんですか?

towana ではなくて、結果的にそうなったんです(笑)。

佐藤 この曲はAメロを僕が歌って、サビをtowanaが歌って、ラップはkevinが歌っているんですけど、こうなったのは、僕がだいぶボケていたのか、作曲した時点でAメロの部分がtowanaには歌えないキーだったんですね。長年一緒にやってるのに何を考えているんだって話なんですけど(苦笑)。プリプロのときにそのことに気付いて、じゃあkevinが歌うか、メロディを変えるか、あとはポーター・ロビンソンみたいに声自体を加工するか、何かしら考えるということで持ち帰ったんです。で、数週間後、本番のレコーディングを迎えたときに、「Aメロどうするんですか?」「あっ!」となって。

──よっぽど忙しかったんですね(笑)。

towana それでAメロは佐藤さんが歌うことになって。

佐藤 kevinのラップパートも最初から入れようと思っていたわけではなくて。まず1コーラスのデモができて、そこからフルバージョンを作るとなったときに、ここはラップがいいなと思って登場することになりました。

towana 歌詞は私が先に書いていて、ラップパートの部分だけ林さんに書いてもらったんです。「スパイラル」か「螺旋」という単語を入れて書いてください、というお願いをして。

──楽曲名にもなっている「スパイラル」および「螺旋」というテーマはどこから?

towana これは3人でご飯を食べているときに、その時点でカップリングの歌詞は私が書くことが決まっていたので、「どうしようか?」という話をして。で、前作のアルバムタイトルの『Cipher』には円やサークル的な意味合いもあるので、そのサークルを越えて昇っていく意味で「スパイラル」がいいんじゃないかと、私が思いつきました。『Cipher』は原点回帰的な意味だったので、それを越えて上に上がっていくイメージです。

kevin タイミングもすごくいいですよね。fhánaは今年メジャーデビュー10周年になるので、その意味でも、10年で一巡りしたその先、というのが感じられて。

──歌詞の内容もポジティブで前向きになれるところがあって。

towana でもちょっとゆるい感じですよね。曲調もあってそういう風に書きたかったんです。バチッとした感じというよりも、ゆるさもあり、でも前向きな気持ちでいるよっていう。

佐藤 林さんが「日常描写の切り取りのセンスはtowanaさんの真骨頂ですね」と言っていましたね。

──編曲はkevinさんと佐藤さんのダブルネームになっていますが、これはどのように作業を進めたのですか?

kevin 佐藤さんは、エレピ、ギター、ベースといったメインの楽器部分の編曲をされていて、僕はリズムトラックや打ち込みの部分を主にやっています。特に気に入っているのがラップパートのところで、ここの入りは「次はラップパートがくる」というのが伝わる音作りをしたかったので、fhánaでは初のスクラッチ音を入れて、スチャダラパーのようなヒップホップトラックを意識して作りました。ここに関しては佐藤さんも一発でOKしてくれて、ガッツポーズしました(笑)。

佐藤 1コーラスのサウンドが出来上がるまでは結構なやり取りをして、kevinの良さ、リズムトラックやシンセのデジタル感、それとサンプリングのカップアップをいい感じに入れてもらいましたね。

──佐藤さんのサウンド面におけるこだわりは?

佐藤 やはりミュージシャンですね。今回のシングルでは、「Runaway World」をHoneyWorksの中西さん、「Spiral」をインナージャーニーの本多 秀くんという、次回のツアーに参加してもらう2人にギターを弾いてもらっていて。「Spiral」の本多くんのギターはバンドアプローチ風で、曲調も含めて「Runaway World」と対照的なサウンドになりました。ベースはandropの前田(恭介)くんが生のR&B的なグルーヴを出してくれて。デモはもっとデジタル感が強かったんですけど、完成したらそのデジタルの雰囲気も残しつつ、生楽器やtowanaのソウルフルな歌い方が加わって、すごく面白いバランスに仕上がりましたね。

──towanaさんの歌声も「Runaway World」とは対照的ですよね。

佐藤 特に後半のボーカルがすごく良くて。後半はサビのメロディが変化していくのですが、その展開していくところの歌声がR&B的な歌い方になっていて。それが新しくていいなあと思いましたね。

──towanaさんはそういう部分を意識して歌ったのですか?

towana この曲は自分で歌詞を書いたので、何度も歌っていたら自然とそうなっていって。それをレコーディングのときに、「こういう歌い方はどうですか?」って提案してみたんです。今までのような真っ直ぐな歌い方ではないから、却下されるかな?と思ったんですけど、「これでいきましょう」となって。だからfhánaとしては新しい感じになったと思います。

佐藤 個人的にはaikoさんみたいなフィーリングを感じるんですよね。aikoさんはストレートで明るい感じの歌声というイメージが強いですけど、しっかり聴くと歌声にソウルフルなうねりがあるんですよね。towanaも声質はかわいらしいけど、それでソウルフルな歌い回しをしたらエモく感じられて。「こういう引き出しもあるんだ」という発見がありました。

towana 私は佐藤さんが、節回しを付けて上手さを出す歌い方よりも、かわいくてパキッとしたポップな歌い方が好きだと思っていたんですよ。なのでfhánaではずっとそういう歌い方でやってきましたけど、私自身は元々R&B的なものが好きなんです。自分の声には合わないことはわかっているんですけど。

──今回の楽曲を聴くと、全然そんなことなかったですけどね。

towana R&Bってもっとハスキーな声のほうが合うイメージがあって。でも、今回歌ってみて「これでもいいんだ」と思えてすごく嬉しかったし、新たな発見でした。でも、曲調のおかげもありますけどね。「Spiral」はグルーヴ感があるので。

──今後の楽曲の作り方や幅が広がりそうですね。

佐藤 そうなんですよ。towanaにそういう引きだしがあることを想定してアイデアを出せるので。やっぱりfhánaでミュージシャンとして一番スキルを持っているのはtowanaなので。

kevin 身一つでやってますからね。

──あと、個人的に聞きたかったのが歌詞の最後の部分“嘘が吐けない誰かの 灯台探そう”のところで。

towana 異質ですか?

──異質ではないんですけど、この楽曲の中ですごく気になる部分というか、グッと入り込むような印象を受けたんですよね。

towana 歌詞を書くときに、メロディの盛り上がりに合わせて、ここにエモい言葉を入れたい、みたいな感じで書くことがあるんです。この部分は楽曲の最後になるので、ちょっとドキッとすることを言いたい気持ちがあって。でも、結構本音を語っている部分ではありますね。

佐藤 歌詞というのは、テーマに合わせてフィクションで書いていたとしても、本音みたいなものがポロッと出てしまうものですからね。僕も最後は“すべてを分からなくてもいい”でフッと終わる感じがすごくいいなあと思いました。

──2曲ともfhánaらしさと新鮮さの両方が感じられて、新体制としての心意気と充実ぶりが伝わるシングルになりましたね。

佐藤 「Runaway World」は作品と“fhánaの新しい冒険”というテーマがあって、レコーディングも大きなスタジオに凄腕のミュージシャンを集めて、プロの職人技の粋を集めて作った感じで。「Spiral」はメンバー全員参加のDIY的な感じで、歩きながら聴くと風景と音がシンクロするような心地良さがあって。全然違う曲ですけど、その両方があるのがfhánaらしいのかなと思いますね。

新ツアー、そしてデビュー10周年スペシャルライブに向けて



──本シングルのリリースを経て、夏には“fhána Looking for the New World Tour 2023”を開催。6月24日(土)に京都MUSE、7月9日(日)に東京shibuya duo MUSIC EXCHANGEでのライブが決定しています。

佐藤 「Runaway World」の歌詞にもあるように、新しい冒険の始まりを告げるツアーにできればと思っていて。実は会場にも意味があって、京都はfhánaが「ケセラセラ」でメジャーデビューしたときのタイアップ作品『有頂天家族』の舞台になっていた場所で、そのときのMVも京都で撮影しましたし、京都アニメーションさんの『小林さんちのメイドラゴン』の楽曲(「青空のラプソディ」「愛のシュプリーム!」)を担当させていただいたこともあって、第二の故郷という部分があるんです。そしてshibuya duo MUSIC EXCHANGEは、僕らが1stワンマンを開催した会場で、その後の1stアルバム『Outside of Melancholy』のツアーもここからスタートしたんです。なのでfhánaの始まりの場所である2つの会場に新体制で帰ってきて、そこから新しい冒険が始まる。それが今回のツアーになります。



──新たな旅路の第一歩になるわけですね。

佐藤 fhánaはライブのMCでよく「旅」という言葉を使っているんですね。ぞれぞれの人生という旅を生きているみんなが、ライブという場所に集まって、同じ空間と時間を過ごして、そこから何かを持ち帰って、またライブで合流する。今まではそういう旅を続けてきたのですが、これからは「旅」ではなくて「冒険」だと思うんです。それは危険も含めて何が起こるかわからない、未知の世界に足を踏み入れる感覚で、でも前向きにワクワクしながら冒険を進める。ここ数年、世界全体の変化が大きすぎて、誰も予想がつかないことの連続だと思うんです。そうやって誰もが冒険の時代を過ごしている今だからこそ、「共に冒険に出よう!」という想いを込めて、このツアーをやりたいと思っています。

towana 「Runaway World」だけでなく、「Spiral」にも“ここからまた冒険がはじまる”という歌詞を入れていて。私たちも本当にワクワクしていて、ここからまた新しい何かが起こる予感がするんですよね。ぜひ「Runaway World」の佐藤さんの歌パートをみんなで大声で歌ってほしいし、それをライブでやるのがすごく楽しみです。

kevin 1月にやった直近のワンマンで久々に声出しライブができたんですけど、それがめちゃめちゃ楽しかったんですよ。コロナが何年も続いていたので、声出しライブの楽しさを忘れていたんですよね。その経験があったうえでの次のワンマンがこのツアーになるので、もう、楽しみでしょうがないです!早くみんなでシンガロングしたいですね。

佐藤 そして10月7日(土)には、メジャーデビュー10周年記念のスペシャルライブ“There Is The Light”を渋谷LINE CUBE SHIBUYAで開催します。このライブが1つの集大成だとしたら、ツアーは新世界への新しい冒険の始まり、未知の世界に足を踏み入れる瞬間でもあるので、ぜひ見届けてほしいです。

●リリース情報

fhána

「Runaway World」

5月31日発売

【DVD付き限定盤】



品番:COZC-2016/7

価格:¥2,090(税込)

【通常盤】



品番:COCC-18128

価格:¥1,430(税込)

<CD>

01. Runaway World

作詞:林 英樹 作曲/編曲:佐藤純一

02. Spiral

作詞:towana、林 英樹 作曲:佐藤純一 編曲:kevin mitsunaga、佐藤純一

03. Runaway World -instrumental-

04. Spiral -instrumental-

<DVD>

表題曲「Runaway World」ミュージックビデオ+メイキング

●ライブ情報

「fhána Looking for the New World Tour 2023 」

出演:fhána

サポートメンバー:

Bass:前田恭介(androp) Drums:北村 望

Guitar:中西(HoneyWorks)・本多 秀(インナージャーニー)

開催日:2023年6月24日(土)

会場:京都MUSE

開場:17:30 開演:18:00

チケット:¥6,500(オールスタンディング)※入場時ドリンク代別途必要

開催日:2023年7月9日(日)

会場:東京shibuya duo MUSIC EXCHANGE

開場:16:15 開演:17:00

チケット:¥6,500 (オールスタンディング)※入場時ドリンク代別途必要

公演に関するお問い合わせ

6月24日(土)京都MUSE:キョードー大阪 0570-200-888(平日 11:00 〜 18:00)

https://kyodo-osaka.co.jp/

7月9日(日)東京duo MUSIC EXCHANGE:ディスクガレージ 050 -5553-0888(平日 12:00 〜 15:00)

http://diskgarage.com

「fhána 10th Anniversary SPECIAL LIVE “There Is The Light”」

2023年10月7日(土)

会場:東京LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)

開場:17:00 開演:18:00

チケット:

・通常チケット:指定席\6,500(税込)

・ポストカードお渡し会付きチケット:指定席\7,500(税込)

※会場でメンバーから記念のポストカードをお渡しします。

・グッズ付きチケット:指定席\8,900(税込)

※グッズはTシャツです。グッズは当日会場でお渡しします。

サイズM:指定席\8,900(税込)

サイズL:指定席\8,900(税込)

サイズXL:指定席\8,900(税込)

・ポストカードお渡し会+グッズ付きチケット:指定席\9,900(税込)

「Runaway World」CD購入者特別先行申込み受付中 ※抽選

受付期間:5/31(水)18:00〜6/18(日)23:59迄

公演に関するお問い合わせ

ディスクガレージ:050-5553-0888(平日12:00〜15:00) http://diskgarage.com

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https://fhana.jp/