山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」第44回

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乃木坂46を卒業し、ラジオパーソナリティ、タレント、そして、ひとりの大人として新たな一歩を踏み出した山崎怜奈さんが、心にあたためていた小さな気づきや、覚えておきたいこと、ラジオでは伝えきれなかったエピソードなどを自由に綴ります。

「応援してます」

ある日のラジオにて。第一子妊娠中で、つわりの渦中にいる方からメールが届いた。日によって体調がまるで異なり、胃のムズムズ感や吐き気、頭痛と戦っている。でも、これも元気に赤ちゃんが育っている証拠! つわりには必ず終わりが来る! そう自分に言い聞かせて頑張りたいという、自分自身を鼓舞するような、力強いメッセージだった。最後の一行は「頑張りたい」だったけれど、もう十分すぎるほど頑張っている。さて、私はどんな言葉を伝えたらいいのか。

私は子どもを授かったことがない。誰かと結婚したこともなければ、同棲の経験もない。がむしゃらに働いてきたけれど、もう自分のための意欲だけでは頑張れなくなってきた。だからとりあえず他者にもやさしくいられるように、今は一旦、まず自分にやさしい生活を送ろうとしている。こういうのは総じて、誰の人生も背負っていないからこそ通るエゴだ。刻一刻と成長していく我が子の命を守りながら、自身の体の変化と文字通り戦って倒れかけている人に言える言葉なんて、安全地帯からの生存バイアスのかかった言葉でしかないのかもしれない。

そもそも私たちは皆、頑張っている。そして疲れている。そんな折、「頑張って」という何気ない励ましが、ダメージを受けまくった心に必要以上に響いてしまうこともある。相手が良かれと思って言っているのは分かっている。自分が元気だったら「ありがとうございます」って返せるかもしれないけれど、メンタルが限界値に達していると「私って頑張ってないんですかね?」って思っちゃう。そこはかとなく、でも確実にどっしりと乗っかる重みが「頑張って」というフレーズにはある、それは26歳独身の私にも分かる。

強くならなければと耐えて耐えて耐えて、この頑張りを誰かに聞いてほしい、だけど直接言葉にはできない。じゃあもうラジオに送るしかない。顔も属性もよく知らないけど毎日声を聴いているそこのアナタ、ごめんけど、聞いてくれる? そんな思いで文字を打っているのだとしたら、私がかける言葉は「頑張って」じゃない。

そうやってねじねじ考えた先に絞り出したのが「応援してます」だった。穏やかに眠れる時間が少しでも長く続きますように、番組を聴いていて少しでも心が安らぎますように。いつか笑顔で赤ちゃんと対面できますように。たくさんの祈りを込めての「応援してます」だった。

翌朝、番組の連絡網に長文が投稿された。リスナーからのメッセージを共有したものだった。スタジオ以外で番組本編に届いたメッセージを共有するというのも珍しい。しかも見かけたことのないラジオネーム。詳しく読んでみると、送り主はいつも仕事中に流し聴きしていて、かつて妊娠、出産を経験したリスナーさんだった。彼女は子育てで身も心もしんどくなってしまったとき、周りに「お母さん、頑張って!」と言われ続けてしんどかったことや、自分がいっぱいいっぱいで涙をこぼしてしまった日々を思い出してメールを送ったと書かれていた。私は苦しかった頃を思い出させてしまっただろうかと申し訳なくなった。

でもそんなのは杞憂だった。「最後の『応援してます』で心が救われた人が絶対いると思います。私のことではないけど、ありがとうございますの気持ちで一杯になりました」という最後の一行に救われた。本当にうれしかった。何かに頑張っているメッセージを読むとき、もうすでに頑張っている戦士にどんな声をかけるべきか、いつも悩む。刻一刻と終わりに近づく毎日の生放送では「応援している」という気持ちの表明しかできないけれど、誰かの緊張や焦りや苦しみを少しでも和らげられたら、と思う。

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