ドリップで淹れる喫茶店へ。【Nel Drip】

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ハンドドリップと一口にいっても、フィルターやドリッパーなど道具の選び方、ドリップの仕方はさまざま。マスターそれぞれの信条が見えてくる。

ぐすたふ珈琲[ 江古田 ]

1.お湯を1滴ずつ注ぎながら蒸らした後、お湯を注ぎ続けて本抽出へ。マンデリンの場合は、長めに注ぎ、濃い味を出すという。2.出したい味が表現できているか確認。3.茅根さんが使っているネルフィルター。左がオリジナルの4枚縫い、右がエイジングコーヒー用の3枚縫い。

豆の個性を引き出す、フィルター、挽き方、一雫のスピード。

ぽたぽたと点滴が垂れるように、ゆっくり、じっくりコーヒーが落ちていく。〈ぐすたふ珈琲〉店主の茅根和司さんは、日本伝統のネルドリップの灯火を絶やさないようにと、喫茶店で働き始めた。「ネルドリップで淹れるコーヒーは、トロッとした舌触り、まったりとした飲み心地が魅力です」と茅根さん。〈ホテルニューオータニ〉の〈かふぇ ぺしゃわーる〉などで研鑽を積み、2017年に自身の店を開いた。

「ネルドリップにこだわるマスターは、オリジナルのフィルターを使う方が多いはず」と話す茅根さん自身もネルフィルターを製作。「厚さが違えば透過するスピードが変わり、深さや形が違えば蒸れ方が変わります」。自家焙煎する豆は手製の4枚縫い、開店当初から人気を集めるエイジングコーヒーは3枚縫いと、使い分けているそうだ。「私が作っている4枚縫いは、すっきりとした味に仕上がります。豆のキャラクターが出やすいので、シングルオリジンにも向いていますね。個性を活かすという意味では、喫茶店には珍しくフラット刃タイプのグラインダーを使っています」

茅根さんが今、特に研究しているのはマンデリンコーヒー。「土っぽさや枯れた葉のような感じに、苦味、コク、甘味がバランスよく加わった、王道のマンデリンを目指しています。そこにスペシャルティらしいチェリー感があるといいですね」

この日のマンデリンは、インドネシアのドロッサングール産。1杯900円〜。スイーツは、生チョコレートのように濃厚なガトーショコラ500円を用意。ぐすたふ珈琲 [ 江古田 ]

ブレンドとシングルオリジンは、店内で少しずつ焙煎。住所:東京都練馬区旭丘1-56-13 マンション軽井沢103 TEL:03-3951-5511 営業時間:10:00〜18:00 定休日:水休 席数:16席

珈琲かたの[住吉 ]

1.片野さん。油を出さないよう深煎りする独自の焙煎技術も。2.自家製ガトーショコラは季節のジャム添え500円。3.スマトラダーク(標準)800円。粗挽きして豆の量を増やした「濃厚」や「デミタス」も。

甘みと深みを出す焙煎とドリップ。

店主の片野行介さんは、焙煎を続けて30年。味わいは素材と加熱で決まるという信念から、内部まで均一に焙煎し、良い成分だけを濾し取りドリップ。独占契約の「スマトラダーク」は、欠点豆や含水率を農家へ詳細に指定。薄手のネルで、さらにクリアに。焙煎中、抽出中は通話不可。

珈琲かたの [住吉]

住所:東京都江東区千田16-2 2F TEL:090-1524-6752 営業時間:12:00〜20:00 定休日:月火 席数:8席

但馬屋珈琲店 本店 [新宿]

1.開店当初から店に立ち続ける、店長の大久保清作さん。ネルは手製。2.きなこがジャリッとしておいしい珈琲ぜんざい880円。3.特撰ブレンド780円(5月から価格変更の可能性あり)。

丸みを持たせるネルの力で深煎りコーヒーをより深く。

1964年の喫茶創業からこの地で営み、店内の焙煎室で焼いた深煎りコーヒーが愛されてきた。厚手のネルでゆっくり抽出することで、よりディープな味わいになるという。定番の特撰ブレンドは、スモーキーな味わいにほのかな苦味があり、まろやか。

但馬屋珈琲店 本店 [新宿]

住所:東京都新宿区西新宿1-2-6 1・2F TEL:03-3342-0881 営業時間:10:00(2Fは12:00)〜23:00 定休日:無休 席数:45席 全面喫煙可

photo : Kenya Abe text : Kahoko Nishimura

No. 1220

喫茶店に恋して。/道枝駿佑 (なにわ男子) 2023年04月27日 発売号

一日一杯のコーヒーを素敵な喫茶店でゆっくりと飲めたら。今号では、喫茶のスピリットを受け継ぐ新店、本や音楽、器選びに空間づくり…店主の哲学が隅々までいきわたる「学び」のある喫茶店などを徹底ガイド。全国の心地いい空間とおいしいコーヒーで、あなたのオアシスになる一軒を見つけてみませんか。コーヒー好きも魅了する、新たな日本のお茶の世界を覗く第二特集も必見です。

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