滝川二・坂井陽翔【写真:橋本健吾】

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今秋ドラフト上位候補、最速149キロの滝川二・坂井陽翔投手

 滝川二(兵庫)の最速149キロ右腕・坂井陽翔(はると)投手は、今秋のドラフト上位候補に挙がる。中学時代までは制球難を克服できず“投手失格”の烙印を押されていた。今回は高校No.1右腕と称されるまでに成長を遂げた“ターニングポイント”の後編をお届けする。

 中学時代は打者としての評価が高く、投手としてはチームで3、4番手の扱い。それでも幼少期から投手への思いを抱き続けた坂井は「二刀流として評価してくれた」と誘いを受けた滝川二に進学した。入学当初の球速は最速129キロ。「主人公になりたい」と、人生初のエースナンバーを狙う右腕を開花させたのが西詰嘉明前監督だった。

「僕は中学まで投球フォームの指導をしてもらったことがなかった。全部、自己流でやっていたので。西詰監督から『上半身で投げている。もっと下半身に重点をおきなさい』とアドバイスを頂いた。そこからトレーニングにも力を入れるようになりました」

 自分の体に合った投球フォームを見つけ、トレーニングや食生活を見直した。くすぶっていた才能は一気に開花する。1年夏に137キロを計測すると、秋には人生初の背番号「1」を託された。

「素直に嬉しかった。ここからやっと始まったなと。投手としての一歩目。初めて認められた気がしました」

入学時は最速129キロも2年春に144キロ、秋には149キロを計測

 2年春には144キロ、秋には149キロを計測し、一躍ドラフト上位候補に名乗りを上げた。卒業後はプロ1本を目標にする。更なる進化を求め、今年1月に退寮し自宅のある加古川から学校に通っている。

「月に2回、専門のジムで鍛えたかった。寮からだと厳しかったので親に相談して。あとは、やっぱり家の食事は美味しい。補食も増やしてもらい体重も一気に増えました」

 実家に戻ってわずか1週間で体重は6キロ増え83キロに。球速は149キロのままだが「質やキレは自分でも分かるぐらい変わった」と自信を口にする。最寄り駅から学校まで約20キロの距離は自転車通学になったが「足腰も鍛えることができるので苦じゃないです」と笑う。

 今春の兵庫県大会では決勝で選抜準優勝の報徳学園に敗れたが、チーム力は確実に上がっている。エース・坂井を筆頭に、2番手以降の投手も戦えるメドが立った。最後の夏に向け準備は整っている。

「一番は負けない投手。150キロは投げたいですけど、150キロに見えないストレートだと当てられる。質の良いボールにこだわっていきたい。注目されるほど燃えてくるので、最後に結果を残して自分がやってきたことが間違ってなかったと証明したい。個人としてはドラフト1位でいけるように」

 甲子園への道のりは簡単ではない。今夏の兵庫は報徳学園、神戸国際大付、社、明石商など群雄割拠の様相だ。高校No.1右腕に成長した坂井が戦国兵庫を勝ち抜けるか。熱き夏の戦いに注目だ。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)