〜 2022年度(4-3月)の「診療所の倒産動向」調査 〜


 新型コロナ感染拡大で病院での受診控えが広がったが、感染状況がヤマを越えた2022年度もクリニックなど一般診療所(以下、診療所)の倒産は増えたことがわかった。2022年度(4-3月)の診療所の倒産(負債1,000万円以上)は22件(前年度比10.0%増)で、過去20年間で最多の2009年度と同数だった。

 他の医療業では、20人以上の入院設備を備える規模の大きな「病院」の倒産が2件(同33.3%減)、「歯科医院」が13件(同7.1%減)といずれも減少した。診療所の倒産が増加した背景には、複合的な要因の重なりがある。
 2022年度の倒産のうち、コロナ禍の拡大に伴う受診控えなどの要因は6件(前年度9件)と減少した。だが、代表者の高齢化や体調不良など後継者難が5件(同3件)、診療報酬の不正受給発覚などコンプライアンス違反関連が4件(同2件)に増加し、件数を押し上げた。
 小規模の診療所は開業の資金負担が比較的軽く、新規参入への障壁は低い。このため、コロナ禍の前から病院や診療所の競合は激しい状況が続いている。コロナ禍に見舞われた2020年度は患者の受診控えは広がったが、「感染拡大防止補助金」など医療機関向けの支援に支えられ、倒産は11件(前年度比45.0%減)と半減した。だが、2021年度は外出自粛や感染予防から受診控えが長引く一方、支援効果が薄れたことで増加に転じた。2022年度も本質的な経営改善が遅れ、過去最多の倒産が発生した。
 5月12日、かかりつけ医機能の制度整備が成立し、連携した地域医療の仕組み作りが本格化する。だが、構造的な経営不振や高齢化などの課題は診療所に任され、解決のめどはたっていない。このため、電気代や人件費など、診療にまつわるコストアップが続く中、小・零細規模の診療所の倒産はしばらく高水準をたどることが危惧される。

※本調査は、日本産業分類の「一般診療所」(20人未満の入院設備を有する、または入院設備の無い医療機関)の2022年度(4-3月)の倒産を集計、分析した。




診療所の倒産は過去20年で最多に並ぶ

 2022年度の診療所(病床数20未満)の倒産(負債1,000万円以上)は、22件(前年度比10.0%増)で、2003年に集計を開始以降、最多だった2009年度の22件に並んだ。
 コロナ禍が直接、間接に影響した「コロナ関連」倒産は6件(同33.3%減)が判明した。また、代表者・理事長などの体調不良、高齢などに伴う「後継者難」倒産も5件(同66.6%増)発生し、後継者不在に起因する倒産も目立った。
 さらに、コンプライアンス違反による倒産も4件(同100.0%増)と、前年度から倍増した。多くは診療報酬の不正受給による処分、信用低下が背景にあり、小・零細規模の診療所だけにコロナ禍の苦境と不正発覚で事業継続が難しくなったケースが目立った。

原因別 「販売不振」が約4割

 原因別では、最多は受診控えを背景とした「販売不振(売上不振)」の8件(前年度比27.2%減)で、前年度から約3割減少した。一方で、無計画や不正などコンプライアンス違反を含む「事業上の失敗」が4件(同300.0%増)と急増した。



負債額別 負債1億円以上5億円未満が過半

 負債額別では、最多が1億円以上5億円未満の12件(構成比54.5%、前年度比50.0%増)で、半数を占めた。次いで、5億円以上10億円未満(前年度比50.0%増)と5千万円以上1億円未満(前年度同数)、1千万円以上5千万円未満(前年同期比50.0%減)が各3件(構成比13.6%)だった。