〜 2023年4月「後継者難」倒産の状況 〜


 2023年4月の後継者不在に起因する「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は、43件(前年同月比16.2%増)で、3カ月ぶりに前年同月を上回った。4月としては2年連続で前年同月を上回り、調査を開始した2013年以降では、2020年(38件)を超えて4月の最多件数を記録した。

 要因別は、代表者の「死亡」が19件(構成比44.1%)、「体調不良」が17件(同39.5%)で、この2要因で「後継者難」倒産の8割超(同83.7%)を占めた。
 産業別は、最多が建設業の15件(前年同月比150.0%増)。次いで、サービス業他11件(同175.0%増)、製造業6件(同45.4%減)の順。
 2022年の経営者の平均年齢は63.02歳(前年62.77歳)で、上昇が続いている。一方で、2022年の「後継者不在率」調査(約17万社対象)では約6割(59.9%)の企業で後継者が未定だった。
 こうした状況を背景に、2022年に休廃業・解散した企業の経営者の年齢は60代以上が86.4%に達している。
 倒産や廃業の増加は、雇用の受け皿の消失や人口減などで地域経済の衰退につながりかねない。企業規模が小さいほど、独自での事業承継や後継者育成には制約がある。このため、最近は規制緩和で金融機関が投資専門子会社を設立し、事業承継支援のために企業買収をすることも可能になっている。また、国内でも「サーチファンド」による取組みも注目され始め、国や自治体、金融機関などがけん引役になった事業再生や事業承継への取り組みも注目されている。

※本調査は「人手不足」関連倒産(後継者難・求人難・従業員退職・人件費高騰)から、2023年4月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)を抽出し、分析した。



「後継者難」倒産 4月では過去最多の43件

 2023年4月の「後継者難」倒産は43件(前年同月比16.2%増)で、4月としては調査を開始した2013年以降で2020年同月の38件を超え、過去最多を記録した。
 企業倒産は2023年1月から増加率25%超の高水準で推移しているが、「後継者難」倒産は一進一退をたどっている。ただ、2023年4月は3カ月ぶりに前年同月を上回り、2022年9月の40件以来、7カ月ぶりに40件台に乗せた。
 後継者の有無は、企業の将来性に重要な意味を持つ。ただ、多くの中小企業は代表者の高齢化が進み、後継者の育成や事業承継の準備が遅れているケースは少なくない。さらに、後継者不在による企業の倒産や廃業は、一企業の問題だけでなく地域経済にも影響を及ぼしかねない。
 自治体や金融機関も事業承継に動き出しているが、まず代表者自身が先を見据えた経営方針を決定することが必要だろう。



【要因別】「死亡」が4割超で、「体調不良」を合わせると8割に

 要因別は、最多が代表者などの「死亡」の19件(前年同月比20.8%減)で、4月は4年ぶりに前年同月を下回った。構成比は44.1%で、前年同月の64.8%より20.7ポイント低下した。
 次いで、「体調不良」が17件(前年同月比70.0%増、構成比39.5%)で、2年連続で前年同月を上回った。
 「死亡」と「体調不良」は合計36件(前年同月比5.8%増)で2年連続で前年同月を上回った。ただ、構成比は83.7%(前年同月91.8%)と低下した。
 このほか、「高齢」が4件(前年同月比33.3%増)で、2年連続で前年同月を上回った。
 代表者の年齢が年々上昇するなか、経営者は日々の売上や資金繰りに追われ後継者の育成や事業承継への対応は疎かになりがちだ。事業承継には5〜10年ほどの期間が必要とも言われ、代表者が亡くなったり体調不良になった場合、たちまち事業継続が困難に陥るケースも多い。




【産業別】10産業のうち、4産業で増加

 産業別は、10産業のうち、建設業、不動産業、情報通信業、サービス業他の4産業で、前年同月を上回った。
 建設業が15件(前年同月比150.0%増)で2年連続、不動産業2件(前年同月ゼロ)と情報通信業1件(同ゼロ)が3年ぶり、サービス業他が11件(前年同月比175.0%増)で2年ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、卸売業が2件(同50.0%減)で3年連続、製造業6件(同45.4%減)と運輸業1件(同75.0%減)が4年ぶり、小売業が5件(同37.5%減)で2年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。また、農・林・漁・鉱業が2年連続、金融・保険業が6年連続で、それぞれ発生しなかった。

 業種別では、建築工事業(ゼロ→3件)、木造建築工事業(1→3件)、食堂,レストラン(ゼロ→2件)。このほか、土木工事業、とび工事業、タイル工事業、ガラス工事業、冷暖房設備工事業、織物整理業、一般製材業、段ボール箱製造業、建設機械・鉱山機械製造業、金属用金型・同部分品・附属品製造業、テレビジョン番組制作業、一般乗合旅客自動車運送業、織物卸売業、靴小売業、料理品小売業、スポーツ用品小売業、無店舗小売業(飲食料品小売)、貸事務所業、貸家業、測量業、料亭、酒場,ビヤホール、バー,キャバレー,ナイトクラブ、配達飲食サービス業、劇団、訪問介護事業、労働者派遣業が各1件で、それぞれ前年同月を上回った。




【形態別】消滅型の破産がほとんど

 形態別は、消滅型の「破産」が42件(前年同月比16.6%増)で、4月は2年連続で前年同月を上回った。構成比は97.6%(前年同月97.2%)で、4月では過去最高となった。
 一方、再建型の「民事再生法」は2年連続、「会社更生法」は2013年より発生していない。
 「後継者難」倒産はほとんどが中小・零細企業で、代表者に不測の事態が生じると事業継続が難しくなり、破産による会社整理を選択するケースがほとんどだ。



【資本金別】1千万円未満が6割超

 資本金別は、「1千万円未満」が28件(前年同月比21.7%増)で、4月は2年連続で前年同月を上回った。構成比は65.1%(前年同月62.1%)で、4月では過去最高となった。
 このほか、「5千万円以上1億円未満」が2件(同1件)で、2年ぶりに前年同月を上回った。「1千万円以上5千万円未満」は前年同月と同件数の13件、「1億円以上」は4月としては発生がない。



【負債額別】1億円未満が8割

 負債額別は、「1億円未満」が35件(前年同月比84.2%増)で、4月では3年ぶりに前年同月を上回った。構成比は81.3%(前年同月51.3%)で、4月では過去最高となった。
 「1億円以上5億円未満」が7件(前年同月比58.8%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。また、「5億円以上10億円未満」は前年同月と同件数の1件、「10億円以上」は2年連続で発生がなかった。