ストライキでテレビ中継なしのトニー賞授賞式、交渉は続く

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毎年6月に開催される、演劇・ミュージカルにおける世界最高峰の賞であるトニー賞授賞式。ここ数年はパンデミックの影響で例年よりも規模を縮小して行われていたが、日本でもWOWOWで生中継されていたこの授賞式が、今年はテレビ中継自体がなくなるかもしれない。米New York Times紙など複数のメディアが報じている。

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開催まで1ヵ月を切ったタイミングで問題発生

トニー賞の関係者は5月15日(月)に緊急会議を開き、ハリウッドの脚本家たちのストライキで放送が危ぶまれている今年の授賞式を何とか救おうとした。彼らはストライキ中の全米脚本家組合(WGA)のリーダーに再考を求め、米CBSで6月11日(日)に予定されている第76回授賞式の放送を何らかの形で継続できるような妥協案を受け入れるよう要請した。

トニー賞授賞式の開催が危ぶまれていると最初に報じられたのは先週。WGAが5月12日(金)、脚本家が放送用の脚本を手掛けることを例外的にでも認めない、と発表したことがきっかけだった。ブロードウェイは組合が多い業界であり、俳優やミュージシャンを含む演劇組合員は、ストライキ中の脚本家と連帯して参加を拒否することが広く予想されているため、トニー賞授賞式をテレビ放送することは困難となった。

これを受けてトニー賞運営委員会は、週明けの15日午前中に90分間のバーチャル会議を開催。授賞式の開催&中継を行う方法を模索すると、匿名の関係者3名が認めているという。

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授賞式が業界全体にとって重要な理由

そもそもトニー賞授賞式の中継&放送がなぜ重要なのか。それはブロードウェイにとって授賞式は最大のマーケティングの機会だからだ。特に新作ミュージカルにとってはここで宣伝することが大事になってくる。ブロードウェイの演目は、ハリウッドの映画、ドラマ界のような多額のマーケティング予算がないため、認知度を高めるためには別のやり方が必要で、授賞式は伝統的にその重要な要素であった。

演劇業界はトニー賞によって恩恵を受けている。賞を獲得すれば評価の高い作品としてチケット売り上げが伸びるし、授賞式内で演目がお披露目された後に興行収入が増加することもよくある。だがパンデミック以降、劇場の入場者数は減少の一途を辿っている。

WGAはエンターテインメント産業の進化に伴い、報酬の改善や、スタジオ、ストリーミングサービス、テレビ局との関係性の構造的変化を求めてストライキを行っている。同時に、演劇業界はパンデミックがもたらした混乱からまだ完全に立ち直ってはいない。 今シーズンのブロードウェイの観客動員数は、パンデミック前の最後のフルシーズンと比べて約17%減少。実際、今年の最優秀ミュージカル賞にノミネートされている5つの作品のうち4つは、ほとんどの週で赤字となっている。よって、トニー賞を共同で主催するブロードウェイ・リーグとアメリカン・シアター・ウィングは、この危機を早く解決したいと願っている。

このままだとトニー賞は6月11日にテレビ放送されない可能性が高いが、演劇関係者がハリウッドの同僚に嘆願すれば妥協点が見つかるかもしれないと希望を持ち続けている人もいる。もし、中継が不可能となった場合、テレビ放映なしで授賞式を開催するか、授賞式そのものを中止して受賞者の発表だけで済ます可能性もある。しかし、ストライキが収束するまで授賞式を延期してでもテレビ放映すべきだという意見もあがっているようだ。

そんな中、アメリカ放送界のピューリッツアー賞とも言われるピーボディ賞は、ストライキを受けて第83回の授賞式中止がすでに決定した。こちらも開催日は6月11日で、2019年以来の対面式の授賞式となるはずだった。なお、本年度の受賞作品は前もって発表されており、『ベター・コール・ソウル』『キャシアン・アンドー』『アボット・エレメンタリー』『アトランタ』などが選ばれている。(海外ドラマNAVI)

参考元:米New York Times紙