〜 2023年4月 「負債1,000万円未満」倒産の状況 〜


 2023年4月の負債1,000万円未満の企業倒産は33件(前年同月比21.4%減)で、4月としては2009年以降の15年間で、2019年の31件に次ぐ3番目の少なさとなった。このうち、「新型コロナ」関連倒産は9件(前年同月14件)で、2カ月連続で10件を下回った。

 産業別では、最多が「サービス業他」の12件(前年同月比45.4%減)だった。次いで、建設業8件(同27.2%減)、卸売業と小売業が各3件(同50.0%増)と続く。
 原因別は、「販売不振」が28件(同9.6%減)で、全体の84.8%を占めた。コロナ禍での支援効果も薄れ、業績回復が遅れた小・零細企業の息切れが多いことを示している。
 資本金別は、「個人企業他」を含む1千万円未満が30件(同25.0%減)で、全体の90.9%が小・零細企業だった。
 形態別は、消滅型の「破産」が30件で、負債1,000万円未満の9割(構成比90.9%)を占めた。小・零細企業のビジネスモデルは一本足経営が多く、また、再建や事業再構築への資金余力も乏しい事から、経営に行き詰まると破産を選択せざるを得ないケースが多い。
 5月8日、新型コロナウイルス感染症が5類に移行した。企業倒産を大きく抑制したコロナ関連支援の効果は薄れ、倒産は増勢基調に入っている。その一方で、コロナ禍での資金繰り支援策で負債が膨らんだことから負債1,000万円未満は低水準にとどまる傾向にある。
 これから実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)の返済が本格的となる。歩調を合わせるように原材料や資材、エネルギーなどの価格上昇、人手不足、人件費上昇など、企業のコスト負担が増大している。さらに、価格転嫁も容易ではなく、中小・零細企業と大手との収益格差が広がっている。業績回復の遅れもあり、今後、小規模企業の倒産は増勢に向かうことが懸念される。

※本調査は、2023年4月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。



倒産33件、4月では15年間で3番目の少なさ

 2023年4月の負債1,000万円未満の倒産は33件(前年同月比21.4%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。4月としては2009年以降の15年間で、2016年(26件)、2019年(31件)に次ぎ、3番目の少なさとなった。
 「新型コロナ」関連倒産は9件(前年同月比35.7%減、前年同月14件)で、負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は27.2%で、前年同月(33.3%)より6.1ポイント低下した。
 負債1,000万円未満の倒産は、ほとんどが小・零細企業だが、コロナ禍の資金繰り支援策の副作用で過剰債務を抱えている。この結果、負債が膨らみ負債1,000万円以上にカウントされ、負債1,000万円未満の倒産の減少につながっているとみられる。



【産業別】4産業で前年同月を上回る

 産業別では、10産業のうち、4産業で前年同月を上回り、減少が3産業、同件数が3産業。
 最多は、サービス業他の12件(前年同月比45.4%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。ただ、構成比は36.3%(前年同月52.3%)で、4月では5年ぶりに30%台にとどまった。
 このほか、建設業が8件(前年同月比27.2%減)で、2年ぶりに前年同月を下回った。また、農・林・漁・鉱業は3年ぶりに発生しなかった(前年同月1件)。
 一方、卸売業(前年同月比50.0%増)と小売業(同50.0%増)が各3件、製造業(前年同月ゼロ)と不動産業(前年同月比100.0%増)が各2件で、2年ぶりに前年同月を上回った。
 運輸業1件、情報通信業2件が、それぞれ前年同月と同件数だった。金融・保険業は5年連続で発生がなかった。
 
 業種別は、給排水・衛生設備工事業、受託開発ソフトウェア業、経営コンサルタント業が各2件、木造建築工事業、建築リフォーム工事業、金属製建具工事業、製版業、アルミニウム・同合金プレス製品製造業、貨物軽自動車運送業、かばん・袋物卸売業、金属加工機械卸売業、中古自動車小売業、電気機械器具小売業、貸事務所業、喫茶店、パチンコホール、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師の施術所、自動車一般整備業、職業紹介業が各1件で、それぞれ前年同月を上回った。



【形態別】破産の構成比が9割

 形態別は、「破産」が30件(前年同月比28.5%減、前年同月42件)で、2年ぶりに前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は90.9%(前年同月100.0%)だった。
 一方、再建型の民事再生法は1件(前年同月ゼロ)で、4年ぶりに発生した。また、会社更生法は2009年から15年間発生がない。
 負債1,000万円未満の倒産は小・零細企業がほとんどで、再建見通しが立たずに経営に行き詰まると破産を選択するケースが多い。

【原因別】『不況型』倒産が約9割

 原因別は、最多が「販売不振」の28件(前年同月比9.6%減)で、4月では2年ぶりに前年同月を下回った。構成比は84.8%で、前年同月の73.8%より11.0ポイント上昇した。
 「既往のシワ寄せ」が1件(前年同月3件)で、2年ぶりに前年同月を下回った。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は29件(同14.7%減)で、2年ぶりに前年度を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は87.8%で、前年同月の80.9%より6.9ポイント上昇した。
 このほか、「事業外の失敗」と代表者の病気や死亡を含む「その他」が各1件(同ゼロ)で、2年ぶりに前年同月を上回った。
 一方、「運転資金の欠乏」が1件(前年同月比50.0%減)で4年ぶり、「他社倒産の余波」が1件(同75.0%減)で2年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。 

【資本金別】1千万円未満が9割

 資本金別は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が30件(前年同月比25.0%減、前年同月40件)で、2年ぶりに前年同月を下回った。構成比は90.9%(前年同月95.2%)で、4月としては3年連続で90%台での推移となった。内訳は、「1百万円以上5百万円未満」14件(前年同月比16.6%増、前年同月12件)、「個人企業他」11件(同35.2%減、同17件)、「1百万円未満」3件(同62.5%減、同8件)、「5百万円以上1千万円未満」2件(同33.3%減、同3件)。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」が3件(同50.0%増、同2件)で、2年ぶりに前年同月を上回った。「5千万円以上1億円未満」が6年連続、「1億円以上」が2012年より12年連続で、それぞれ発生しなかった。