2気筒Hawkの劣勢を挽回する
新型4気筒を待ち焦がれたホンダファン

1981年10月にデビューしたCBにXが加わった車名のCBX400Fは、バイクブーム真っ只中で爆発的な人気を誇ったホンダの切り札となったバイク。

実はカワサキから1979年に4気筒のZ400FX、ヤマハからも4気筒のXJ400が1980年にデビュー。続いてスズキも1981年にGSX400Fを投入するなど、4気筒といえばホンダのイメージだった牙城が切り崩されかけていたのだ。

そもそもホンダはCB750フォア、CB500フォアの4気筒シリーズに、1972年からCB350フォアを加えていたが、ジェントルなイメージが中型クラスではパッとせず、400ccまで排気量をアップしカフェレーサー風のフォルムで人気だったご存じCB400フォア、いわゆるヨンフォアでファンの心を釘付けにしていた。

しかしアメリカの排気ガス規制、マスキー法をクリアする乗用車に搭載するCVCCエンジン開発に集中していたホンダは、この間を2気筒のHAWKシリーズで凌いでいたのだ。

OHC3バルブで効率の良いツインだったとはいえ、HAWKではライバルたちがスポーツ性を性能でアピールしてくる勢いには対抗できない。
そんな状況で待ち焦がれたホンダファンへ、遂にCBX400Fがその姿を現したのだ。

一気に王座を奪還する装備は
画期的な新テクノロジーを駆使

CBX400Fの4気筒は、気筒あたり4バルブの計16バルブでもちろんDOHC。
1次減速はフリクション低減など効率化を狙い、ギヤではなくチェーン駆動としたのでクランクシャフトは逆回転。
排気系はヨンフォアで一世を風靡した、エキゾーストパイプがクロス(X)した取り回しに熱い視線が注がれていた。

ブレーキシステムはインボードタイプ。効きでは理想的な特性をもっていても簡単に錆で赤くなる鋳鉄ディスクが嫌われ、摩擦係数が硬いステンレス製を使わざるを得なかったが、ドラムのようなハブの中に鋳鉄ディスクを収めるインボードタイプとすることで画期的な構成を採用することができた。
この鋳鉄ローターはベンチレーテッドと呼ばれる、冷却通路がくり抜かれたそれまでクルマのスポーツカー専用の高度な仕様という超豪華な装備。
さらにブレーキ時のブレーキトルク反力を利用して、フロントフォークの沈み込みを制御するアンチダイブ機構を採用していた。

リヤサスペンションには、一般走行時にはソフトに、コーナーリ ングなど大きな負荷がかかった時などにはハードに、クッション特性が変化するプログレッシブ・リンケージ・サスペンション(プロリンク)を採用。

また量販車では世界初の剛性の高い軽量中空アルミキャスト製スイングアームを採用していた。
フロントとリアに当時は最先端だったエア圧を補填できるサスペンションも採用されていた。

カウルを纏うインテグラも登場

そしてこの当時、4時間耐久レースなどモータースポーツ熱も高まっていたことから、カウルを装備したインテグラもバリエーションとして1982年から加わった。

こうしたライバルを引き離す新しい装備に包まれたCBXは、ライバルたちが次々と4気筒攻勢をかけてくる中、ひたすら待ち続けたホンダファンに吸い込まれるような大ヒットとなったのである。
その爆発的な人気はいまも語り草となっている。

REV搭載のCBRが出ても人気は衰えず!

ただこのバイクブームに、ホンダも400ccクラスへV型4気筒を投入するなど、技術革新のスピードも急速にアップ、並列4気筒も回転域でバルブタイミングを可変としたREV搭載のCBRシリーズも投入されたが、CBX400Fはそうした新型車が登場しても人気が衰えず、1984年にカラーリングも一新して継続生産される異例な存在となっていた。
そしていまや絶版車の中でも異例なほど人気を誇っているのはご存じの通り。
CBX神話はまだまだ語り継がれていくに違いない。

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