偏差値40台で一流大学に合格する子が続出する訳
40代以上の親世代が経験した大学受験とは状況が全然違ってきています(写真:Fast&Slow/PIXTA)
いまや、大学生の5割は「総合型選抜」「推薦」で入学する時代です。大学入試改革によって、「論理的に考える力」や「表現力」といった能力が見られるようになった一方で、従来の知識詰め込み方の学習法では太刀打ちできなくなっているといいます。総合型選抜・公募推薦専門の塾を経営し、95%以上の合格率を上げている竹内健登氏の新刊『勉強嫌いな子でも一流難関大学に入れる方法』より一部抜粋・編集のうえ、これからの大学入試戦略を解説します。
大学生の半分は「一般入試」以外で入学
いきなりですが、次のグラフを見てください。
(外部配信先ではグラフなどの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
これは、文部科学省が発表している、「大学入学者選抜関連基礎資料集」から抜粋したものです。
もともと7割近くの大学生が一般入試を経て大学に入学していましたが、その比率は年々下がり、令和2年度(2020年度)ではその比率が約半分まで低下しています。この20年で、大学入試が様変わりしていることをご確認いただけるでしょう。
特に私立大学においては、この20年での一般入試枠の減少が著しく、半分以上の学生が一般入試以外、つまり学校推薦型選抜や総合型選抜で入学しているのです。
この変化は、
「予備校に通わせて猛勉強させれば合格できるはず」
「部活を引退してからでも大丈夫だろう」
といった、親御さんにとっての「受験の常識」を覆すものであることは間違いありません。そして、今までは、
「うちの子は模試の偏差値が低いから、難関大学は諦めるしかない」
などと考え、諦めてきたお子さんにとっては紛れもないチャンスに他ならないでしょう。
この大学入試の変化は、すなわち、大学側が評価する人材の定義が変わってきているということ。言い換えれば、大学入試というゲームのルールが変わったということなのです。
大学入試改革――なぜ変わる? どう変わる?
なぜ、大学入試というゲームのルールが変化しているのでしょうか。背景にあるのは、文部科学省が行っている「高大接続改革」――高校での学び・大学入試・大学での学びを一体化した教育改革です。
文科省は、これからの教育は「1 知識・技能」「2 思考力・判断力・表現力」「3 主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」が大切であると考え、これら3つを「学力の3要素」と定義しました。
入試の出題傾向の変化は、まさにこの定義にのっとったものです。この3要素が評価されるような問題が増えた結果、暗記が得意な「ガリ勉タイプ」が落ち、そうではない高校生が上位大学に合格するようになってきたのです。
特に2021年度から導入された大学入学共通テストでは、この傾向が顕著に見られます。
英語では発音や単語などの単純な語彙問題は消滅し、代わりに日常生活で使う英会話が出題されました。国語においては物語と評論の2つの文章を見比べることで答えを見つけるという「メタ認知」を測る問題が出題されました。英語・国語・数学に限らず理科や社会も含めた全般で、「読み取らないといけない文章・グラフ・表」が増え、試験時間が増加しています。
これはつまり、「知識や情報を持っているか」ではなく、「それらを活用して考える力があるか」を評価する形態に変わってきたということ。かつては難関国立大学の2次試験に求められた能力に近いものが、暗記偏重型で有名だった早慶の2次試験においても増加しているのです。実際、2021年に慶應義塾大学で出題され、話題となった、
「あなたが不条理だと思うことについて記載し、どうすればそれを解決できるか論じなさい」
を筆頭に、答えのない問いについて考えさせ、その解決法を表現させる問題が不可避になりつつあるのです。
今後、この流れは一気に加速するでしょう。なぜなら、2022年度からは高校での学習指導要領が新しくなり、この学力の3要素を重要視した授業が展開されているからです。
特に2024年度の入試は、新しい学習指導要領で学んできた高校生が受験する最初の入試です。従来のものからガラッと変わることが予想され、すでに多くの大学では入試問題の変更について協議がなされているのです。
大学入試のセオリーは今後どうなっていく?
これまでの暗記偏重型戦略(詰め込み)の効果が薄くなり、高い思考力が必要となった一般入試には、今後、ついていけない高校生が増えていくでしょう。それに伴って、合格させるためのメソッドの再現性も低下していくことが見込まれます。
この状況に拍車をかけているのが、大学側の入試広報戦略です。大学はその偏差値によって序列が決まり、その高低によって受験生の人気が変動する現実があるため、どうしても偏差値を高く出そうとしたがります。
では、どのようにすれば偏差値を高くできるかといえば、「一般入試での合格者数を少なくすること」がその答えなのです。これは偏差値のカラクリなのですが、一般入試の合格者を少なくするほど、偏差値上位層のみを合格とすることになり、結果として合格最低ラインが上がって大学の偏差値も引き上がります。
一時期、文科省が大学の定員に制限を設けた際にMARCHの大学の偏差値が上がり、入ることが大変になったのはそのためです。
では、大学は一般入試で減った入学者数をどのようにして補うのでしょうか。
その答えが、一般入試の前段階で入学者を決定できる総合型選抜や学校推薦型選抜の入学枠を増やすことです。こうすれば、定員は確保しつつ、大学の偏差値も高く維持することができるのです。
(竹内 健登 : 受験コンサルタント、ホワイトアカデミー後頭部塾長)