元男役・天真みちる タカラジェンヌは卒業後、どんな職業に就くのか?千尋のごとく「ここで働かせて下さい!」と連呼して「出る側」から「創る側」へ

宝塚歌劇団で「情報量の多いおじさん役」として愛された天真みちるさん。退団後に企業へ就職すると、華麗なる歌劇団と一般社会のギャップにおののきながら、その道のりをタンバリン片手に突き進んできました。その後、ひとりで生きていく覚悟を決めた直後に運命の人とまさかの結婚、さらには歴代トップスターたちが総出演の『エリザベート ガラ・コンサート』への大抜擢……。そんな元タカラジェンヌ・天真さん、「鐘が鳴った」後にサラリーマンとして働くようになった意外なきっかけとは――。
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転職したらプロデューサーになった件
皆さんは、タカラジェンヌが卒業した後、どんな職業に就くか御存知だろうか?
劇団では、1年で約30〜40名のタカラジェンヌ達がそれぞれのスキルを用いて次のステップに進むべく卒業している。
テレビ、舞台などのエンターテインメント業を更に極めていく方(トップスターさんや、スターさんが多い)、劇団生活のノウハウを活かし受験スクールの講師になる方、アクセサリーや美容コンテンツのプロデュースをされる方……と、様々な方向へ羽ばたいていく元タカラジェンヌ達。
そんな「次のステージ」をどこにするかは、意外と突拍子もないいきさつで決まったりする。
2021年出版の著書『こう見えて元タカラジェンヌです』で、宝塚歌劇団を卒業するきっかけとして、大体の方があるタイミングに「鐘が鳴った」と仰るという話を書いた。
しかし、「鐘が鳴った」時にその先の未来まで見通せているわけではない。
「出る側」ではなく「創る側」へ
「鐘が鳴った」時はあくまで「鐘が鳴った」のであって、この先、あっちの業界へ進んで行こうかしら……とまで考えている方は意外と少ないように思う。
「鐘」は、ただ「私は、この世界でやり切った」という事実を告げる音色であり、天地神堂の巫女(最近、母が『太王四神記』に再度ハマり、ネトフリで毎晩見てる)のように、神のご託宣が鐘となり教えてくれた……みたいなことにはならない。
『こう見えて元タカラジェンヌです 遅れてきた社会人篇』(著:天真みちる/左右社)
タムドク様だったら教えて頂けたのであろうが、ワイには聞こえんかった。
ただ、私の場合は「出る側」ではなく「創る側」へ行こう、という想いがあった。
そして、そもそもイベントって、どうやって企画されどうやって運営されているのか? その仕組みを知りたいという想いもあった。
ここで働かせて下さい‼
想いはあるが具体的な行き場は見つからない……どうしたものかと過ごしていた矢先、とある友人に食事に誘われた。
食事中、その友人が1年前に起業した、という話になった。
へぇ〜。どんな業種?と問うたところ、「映像、ゲーム、マンガの企画と制作と宣伝とか、プロデュース事業だよ」という返答が。
「へぇ〜。企画制作とプロデュースですかぁ〜……」
「それって、ワイがしたい仕事のすべてじゃあないですか!!!」
「ここで働かせて下さい‼ ここで働きたいんです‼」
と、『千と千尋の神隠し』で、千尋が釜爺に頼み込んだ時のように、働きたい旨を連呼した。
すると友人は、実はスカウトするつもりで食事に誘ったのだと言った。
そうして、私の第二の職場はストンと決まった。
別れ際に友人は、「卒業後しばらくはゆっくりしていいから、働きたくなったら教えて」とお優しい言葉をかけてくれた。
が、私はわかっていた。
卒業後、ゆっくりしたら、この先一生「働きたい」とは思わないことを。
なので、「11月いっぴから働きます!」と高らかに宣言した。
三十路の新社会人爆誕
こうしてタカラヅカを卒業した約2週間後、三十路の新社会人は爆誕した。
そして、生まれて初めての名刺を頂いた。
そこには、
「天真みちる」「アシスタントプロデューサー」
と記されていた。
私は、求めていた業務にこんなにも早く辿り着くことができたことに驚き、感動した。
「ああ、これがイベントを創る側の肩書なんだぁ」
「アシスタントプロデューサー……☆」
「アシスタントプロデューサー……☆」
「アシスタントプロデューサー……って……何?」
2018年11月1日。この日から、「アシスタントプロデューサーとはなんなのか」己に問いかけつつ、サラリーマンとして働く第二の人生が始まったのであった……。
※本稿は、『こう見えて元タカラジェンヌです 遅れてきた社会人篇』(左右社)の一部を再編集したものです。