眼科医が目の噂にまつわる真実を話します(写真:ABC/PIXTA)

「緑のものを見る」「遠くを見る」のは本当のところ、目に効くのでしょうか? 慶應義塾大学医学部・眼科学教室の綾木雅彦医師著『視力防衛生活』より、日々の生活の中でできる「本当に目に効くコツ」を抜粋し、Q&A形式でお届けします。

「6メートル先を見る」クセをつけたほうがいい理由

Q 「緑色のもの」を見るのは目にいいですか?

A 精神面には○。でも目への直接の効能は期待しないで

これはあくまで心理面での効果の話。残念ながら、視力を回復してくれるわけではありません。

Q 「遠くを見る」と近視対策になりますか?

A 「6メートル先を見る」のは視力防衛効果があります

「読書や勉強、デスクワークなどで近いところを20分見たら、20秒、20フィート(約6メートル)以上遠くを見よう」

英語圏を中心に提唱されるのが、この「20×3ルール」です。目から30センチ以内の範囲を30分以上見続けると、近視が進行しかねません。

近くを見続けると、目のピントを調節する筋肉・毛様体筋が緊張して張り詰めたままになります。そんなふうに毛様体筋に負担がずっとかかると、目はだんだん次のように判断します。

「近くを見ることに適した目になったほうが楽だ」

すると、近視が静かに進むことに。ですから作業の合間に近くから目を離し、6メートル以上遠くを見て、毛様体筋の緊張をゆるめましょう。

Q 見る先が遠ければ遠いほど、目にいいですか?

A 6メートル以上は目にとって同じです

眺める先が遠いほどよいわけではありません。目にとっては6メートル以上は無限遠と同じようなもの。また、遠くを見るのは毛様体筋のストレッチが目的なので、眺める景色の美しさにこだわる必要はありません。

Q 「ブルーベリー」は目にいいって本当ですか?

A 含有成分に効能はありますが…… 

「ブルーベリーに含まれるアントシアニン」「魚の目玉」「ケールやブロッコリーに含まれるルテイン」これらが目にいいとよく言われます。

とはいえ、これらの栄養素を食事だけから継続的に、十分に摂るのは至難のワザ。摂った栄養が必ずしも目のために有効に使われるとも限りません。

特殊な食材に気を配るより、「食べすぎない」ことを眼科医・抗加齢医学専門医としておすすめします。

過食は肥満や高血圧などの生活習慣病を招きます。血中に老廃物をたくさん出すので血管も傷めやすいです。当然、全身を循環する血流は網膜にも通っています。つまり、全身の血流と目の健康は深く関係しています。事実、食べすぎると血液が老廃物で汚れ、糖尿病網膜症など目の問題も起こりやすくなります。

昔から「腹八分目に医者いらず」と言われ、少食は健康によいとされてきました。最近の実験では、「腹七分目が健康長寿につながる遺伝子を活性化させる」ことがわかってきました。腹七分目は目にもよいです。

腹七分目の目安は主食の量。ご飯や麺類など、器に盛り付ける時点で、通常の3分の2程度に量を減らしておくとよいでしょう。

老眼の発症や進行を遅らせる方法

Q 老眼は悪くなる一方?

A 発症時期や進行を遅らせることは可能です

近くが見えにくくなる老眼は、目のピント調節能力が低下する現象。加齢とともに誰もがなります。ただ、近視があるかないかで、老眼を自覚する時期や程度は異なります。

近視の人の目は、近くが見やすい目。そのため、近くが見えにくい老眼になりづらい傾向があります。

では、近くが見づらくなってきたら、どうすればいいか。近くと遠く、ピントの位置を変えることで、毛様体筋を自力で伸び縮みさせて、ピント調節力を鍛えられます。近くを1秒、遠く(6メートル先)を1秒、それぞれ交互に20回ずつ見る「目ほぐし」です。

目ほぐしの効果は、2021年の慶應大の実験で「40〜58歳の老眼症状を軽減する効果あり」とわかりました。60代以降でも効果は期待できます。

Q 目の疲れはとれますか?

A 目ほぐしは眼精疲労にも効きます

目ほぐしは、目の疲れに効く「目のストレッチ」にもなります。

私たちは、長時間の手元の作業などで毛様体筋を酷使しています。「目ほぐし」をすることで毛様体筋のこりや疲労を軽減し、眼精疲労を遠ざけられます。

通勤中、電車の中で「近く」と「窓の外の景色」を交互に見るなど、目は簡単にほぐせます。

Q 目がかゆいとき「かく」のはよくない?

A かくほどにかゆくなるので「パッチンまばたき」を

目のかゆみは皮膚のかゆみと同じで、かけばかくほど、かゆくなります。原因は、細胞から分泌されるヒスタミンというかゆみ物質。かくほどにヒスタミンが出てかゆくなる仕組みです。


かかずにまばたきをして、かゆみのもとやごみを目から洗い流すだけでも、症状はかなり収まります。かゆくなったら「パッチンまばたき」がおすすめ。上下のまぶたを強くくっつけることを意識しながら、連続して5回ほど、しっかりまばたきしましょう。

涙が分泌されたらティッシュで拭き取ります。両目の目頭や目尻にかゆみのもとであるゴミや異物がたまるので、取り去ってください。

花粉症の季節は特に、パッチンまばたきがおすすめです。

(綾木 雅彦 : 慶應義塾大学医学部眼科学教室特任准教授、おおたけ眼科院長)