番号を変えずに携帯電話の契約事業者を変更できるサービス「番号ポータビリティ制度(MNP)」が10月24日に始まるのを前に、キャリア各社はさまざまな形で前哨戦を繰り広げている。一方で、利用者の目はやや冷めたもののようだ。

 9月1日からKDDI<9433>とボーダフォン(東京都港区、孫正義社長)が、同10日からNTTドコモ<9437>が、店頭やホームページで事前予約を受け付けるキャンペーンをスタートした。10月23日までに予約し、対象期間内に新規転入を完了した人を対象に、各社は携帯電話の利用料金などに使えるポイント2000円分をプレゼントする。

 また、各社は同制度の利用手数料を8月31日までに発表している。発表時期は異なったものの、他社からの転入手数料は無料、他社への転出手数料は2100円と、キャンペーンと同様3社が横並びとなった。契約時にかかる事務手数料はKDDIとボーダフォンが2835円、ドコモが3150円と若干高い。

 キャンペーンを利用すれば、1000円程度で他キャリアへの“乗り換え”ができそうに思えるが、実際にはもう少し費用がかかる。キャリアごとに使える端末が異なるので、新たに購入する必要があるからだ。また、長期割引などを契約している場合には、更新月以外の転出で契約解除料を支払わなければならない。

 “乗り換え”時に、持ち運べるのが「電話番号」だけというのも、大きなネックとしてとらえられている。各種調査によると、携帯電話の利用者の6割以上がMNP利用に否定的で、「メールアドレスが変わってしまう」ことへの懸念が多い。現在、各キャリアのメールアドレスは「docomo.ne.jp」「ezweb.ne.jp」「vodafone.ne.jp」などと、ブランド名を冠したものになっており、「メールアドレス」はポータビリティの対象外。音声通話よりもデータ通信の伸びが著しい昨今、メールアドレス変更のわずらわしさが、MNPを敬遠する理由にもなっている。

 さくらインターネット(大阪市中央区、笹田亮社長)のように、メール転送サービスを提供して、「メールアドレス」の仮想ポータビリティを実現しようというサービスもある。しかし、現在キャリアのブランドを冠したアドレスを使用している人にとっては、新たなメールアドレスを友人などに教える手間は変わらず、MNP普及の特効薬にはなりそうもない。

 キャリアはメールの扱いについてはほとんど沈黙したままだ。ボーダフォンのみは、MNPで転出したユーザーが再びボーダフォンに転入する場合、60日以内であれば転出前に使っていたメールアドレスを取り戻せるサービスを用意する。しかし、同サービスはMNPでの顧客離れを防ぐための、囲い込み作戦に過ぎない。

 携帯電話の契約キャリアを変えると、電話番号が変わることは不便だ。しかし、電話番号だけを変えずに済むとのサービスでは、便利とはいえないかもしれない。MNPの普及によって、利用者の選択肢が広がり、キャリア同士の競争で通信料の低下が促されると期待されていたが、「話すこと」だけが携帯電話の目的でないとすれば、MNPはなお不十分な制度と言うところか。【了】