昨年2022年11月からプレオープンした『Pâtisserie Kyohei Mikami』。上野毛駅から徒歩15分程度の閑静な住宅街にあるパティスリー&ブーランジェリーです。

黒を基調にした店内。モダンながら、どこか日本らしさを感じる雰囲気の中、ひときわ目を引くのが真っ黒なモンブラン「黒雛(くろひな)」。その味と、注目の店『Pâtisserie Kyohei Mikami』について三上シェフに取材しました。

気になるブラックモンブラン「黒雛」とは

まるで糸のように細く絞った漆黒のクリームが特徴的なモンブラン「黒雛」。

断面を見ると7つのパーツが美しく重ねられています。

真っ黒なクリーム、クレームシャンティ(生クリーム)、和栗のペースト、大きな栗が丸々一つ、スポンジ、カスタードクリーム。土台は日本酒と黒ビールを使った特製のメレンゲです。

三上シェフ「『Pâtisserie Kyohei Mikami』は華やかなフランス菓子に、日本の手法を取り込んだスイーツがコンセプト。「黒雛」の外側は、和栗のペーストに、カスタードクリームと竹炭を混ぜた特製クリームを、直径約1㎜の搾りで押し出して、全体を覆っています。ケーキ全体を通して、深みとくちどけを引き出すよう工夫しました」

黒ビールのホップとモルト(麦芽)から引き出される芳醇な香りと苦み。この独特な味わいを活かすことで深みが生まれます。さらに、ビールと日本酒、2つの作用がくちどけや旨味に繋がるんだとか。なんとも気品あふれる味わいです。

「黒雛」:1400円(税込)

まるで日本庭園。ピスタチオ、ショコラ、キャラメルが織り成す深みのあるケーキ「真夜(まや)」

日本庭園を彷彿とさせるピスタチオのムースケーキ「真夜(まや)」もこの季節、味わいたいプチガトーの一つ。

全体を覆う艶やかなグラサージュ。一見、ショコラとピスタチオムースの2層のみかと思われますが、食べると想像以上にたくさんの味と食感があって驚きます。

1段目のショコラのグラサージュの中には、チョコレートスポンジ、ピスタチオと黒ゴマのこうばしいクロッカン(クランチ)、エクアドル産のチョコレートムースにキルシュ漬けしたグリオットチェリーが入っています。

2段目は2種類のピスタチオでできたパーツが。ピスタチオ、キャラメル、ミルクチョコレートで作ったガナッシュ。そしてピスタチオのムースです。これらのピスタチオペーストは、1度火入れをし、ピスタチオの風味を引き出しているんだとか。

ケーキを食べた瞬間に香るピスタチオのこうばしさ。さらに下の層に達すると、チョコレートとグリオットチェリーの豊醇で濃厚な味わいが印象的です。

三上シェフ「ケーキに使用しているエクアドル産のチョコレートは僕自身、とっても気に入っているチョコレート。まるでアルコールのような風味を感じる珍しい味わいが特徴的。普段口にするチョコレートとは異なる苦みと深みがあります」

月夜をイメージしたという「真夜(まや)」。1口食べるごとに感じる深みのある味わいは優美な日本を表現しているようです。

「真夜(まや)」:1200円(税込)

隠れた人気商品。シナモン好きがうなるほどの美味しさ「シナモンロール」

『Pâtisserie Kyohei Mikami』に訪れた人の多くがリピートするのが、「シナモンロール」です。三上シェフはパン職人と一緒に働くことが多かった影響で、そのノウハウを心得ていたのだとか。

三上シェフ「生地には国産の小麦と発酵バターのみをたっぷりと使用しています。また、水を全く使わずに卵で代用し、スチーム焼きにすることでしっとり濃厚な『シナモンロール』にしました」

スパイス好きの三上シェフは、生地に限界までシナモンを練り込むことに注力し、何度も試作を繰り返したそう。結果、シナモン好きが1度食べたら忘れられなくなる、シナモンの風味が効いたパンに。きめが細かく整った断面は、まるでパティシエの作るスポンジ生地のようです。

食パン型なので、好みに合わせて食べ方を変えられるのも食べ手にとって嬉しいところ。厚めにカットして軽くトースターで焼き、シナモンの香りを立てるのも良し。そのまま食べて、独特のしっとりとした食感を堪能するのも良し。軽食としても、デザートとしても楽しめる「シナモンロール」です。

「シナモンロール」600円

彗星の如く表舞台に現れた注目のパティシエ。三上シェフとはいったい何者?!

今回初めて店舗を構えた三上シェフ。今まであまり表舞台に出ることのなかったシェフに洋菓子界もわきました。

シェフの経歴は、八王子の『ペール・ノエル』で5年間、基礎を磨いた後、名店『トシヨロイヅカ』にてスーシェフを勤めました。

その後、スイーツを専門としたコンサルタントとして、業界人からも注目される存在に。『Pâtisserie Kyohei Mikami』に並べられたケーキの数々から、そのクリエーションの素晴らしさが伺えます。

三上シェフ「実店舗を持った現在もコンサルタント業を続けています。『Pâtisserie Kyohei Mikami』では、誰もやっていないことにこだわっていきたい。例えば、見た目と味のインパクトや、生菓子や焼き菓子に酵母を積極的に取り入れる製法など。多くの方に美味しいと感じていただける、味と驚きを提供したいと考えています。

現在はまだプレオープン中ですが、グランドオープン以降には、その場で味わっていただけるアシェットデセールもやりたいですね」

やりたいことが尽きない三上シェフ。将来はお菓子を通した街づくりをしたいのだとか。

三上シェフ「店舗を持つことで、応援してくれる人が増え、共に働く人が増え、町全体が居心地の良いホームになったら嬉しいです」

ちょっと遠いからこそ、わざわざ行きたくなる魅力をもつ『Pâtisserie Kyohei Mikami』。モダンな印象のお店には、孫と食べるからと高齢の方もたくさん来店していました。三上シェフの長年培ったパティシエとしての技術力とブランディングで、グランドオープン時にはますます人気を博す予感です。

About Shop
Pâtisserie Kyohei Mikami
東京都世田谷区上野毛4丁目22-2 KAYAH KAMINOGE 1F
営業時間:13:00~18:00
定休日:月・火・水・木

園果わたげ

ウフ。編集スタッフ

ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。