〜 2022年 全上場企業「監査法人異動」調査 〜

 上場企業のうち、2022年(1-12月)に「監査法人異動」を開示したのは241社だった。前年の214社から27社(前年比12.6%増)増え、過去5年間で最多となった。監査法人の異動が増えた理由は、会社の事業規模に適した監査対応や監査費用の相当性などで、大手監査法人から中小監査法人に異動する企業が増えたことによる。

 異動理由は、最多は監査報酬の増額要請を受けたことなどを理由とする「監査報酬」が102社(前年比5.1%増)。以下、監査期間が長期間にわたったことなどを理由とする「監査期間」が81社(同17.3%増)、「会計監査人の辞任等」が20社(同23.0%減)と続く。
 また、監査法人の異動規模別では、「大手→中小」が106社(前年比21.8%増)で最も多かった。次いで、「大手→準大手」が50社(同21.9%増)、「中小→中小」が44社(同2.3%増)と続く。
 産業別では、最多はサービス業の70社(前年比55.5%増)。以下、製造業(同12.5%減)と運輸・情報通信業(同55.5%増)が同数の56社と続く。
 2022年、金融庁は中小監査法人の仁智監査法人(5月)、UHY東京監査法人(6月)に対し、業務運営が著しく不当なものと認められるとして、相次いで業務改善命令を出した。また2023年1月、監査法人ハイビスカスが金融庁から業務改善命令を受けるなど、中小監査法人に対する厳しい行政処分が続いている。
 2018年は太陽有限責任監査法人と優成監査法人の合併などにより168社が異動した。その後、2019年は141社、2020年は138社と横ばいで推移した。
 2021年は監査工程数の増加などに伴い、監査法人から監査報酬の増額提示を受ける企業が増え、214社(前年比55.0%増)に急増。2022年も前年同様の状況が続いている。
 担当する監査法人が業務改善命令を受けたため、各監査法人との監査契約を見直す必要に迫られた上場企業もあった。上場企業にとって、これまで以上に監査法人との関係を見直し、選択することが重要になっている。
  • 本調査は、2022年に「監査法人」「会計監査人」「公認会計士」の異動に関する適時開示を行った企業を集計した。
  • 大手監査法人はEY新日本有限責任監査法人、有限責任あずさ監査法人、有限責任監査法人トーマツ、PwCあらた有限責任監査法人の4法人、準大手監査法人を仰星監査法人、PwC京都監査法人、三優監査法人、太陽有限監査法人、東陽監査法人の5法人、その他を中小監査法人とした。
  • 業種分類は、証券コード協議会の業種分類に基づく。上場の市場は、東証プライム、スタンダード、グロース、名証プレミア、メイン、ネクスト、札証、アンビシャス、福証、Q-Boardを対象にした。2018〜2021年は旧市場で分類した。

異動理由別 「監査報酬」が最多の102社

 異動理由別では、最多は「監査報酬」の102社(構成比42.3%)だった。経営環境の変化等に伴う監査工数の増加に伴う監査報酬の増額要請を契機に、事業規模に適した監査対応や監査報酬の妥当性について検討し、監査法人を変更する上場企業が増えた。
 以下、監査期間が長期間にわたったことなどを理由とする「監査期間」の81社(同33.6%)、「会計監査人の辞任等」の20社(同8.2%)、「親会社等監査法人の統一」の15社(同6.2%)と続く。
 異動理由は「監査報酬」と「監査期間」で合計183社(同75.9%)で7割超にのぼった。
監査人としての品質管理体制や会計監査に必要な専門性や独立性、監査費用などを総合的に判断し、監査法人を変更する企業が増えた。

監査法人異動規模別 大手→中小が106社で最多

 監査法人異動規模別では、「大手→中小」が106社(構成比43.9%)で最も多かった。次いで、「大手→準大手」が50社(同20.7%)、「中小→中小」が44社(同18.2%)と続く。
 2022年に退任した監査法人数が最も多かったのは、有限責任あずさ監査法人が66社、次いでEY新日本有限責任監査法人57社、有限責任監査法人トーマツの43社で、大手3社が上位を占めた。
 一方、2022年に就任した監査法人数が最も多かったのは太陽有限監査法人が39社で、以下監査法人アリアが9社、アーク有限責任監査法人が8社と続く。

産業別 最多はサービス業の70社

 産業別では、「サービス業」の70社(構成比29.0%)が最も多かった。次いで「製造業」と「運輸・情報通信業」が同数の56社(同23.2%)、「小売業」の25社(同10.3%)、「卸売業」の17社(同7.0%)、「不動産業」の8社(同3.3%)、「建設業」の6社(同2.4%)、「金融・保険業」の3社(同1.2%)だった。
 一方、「水産・農林・鉱業」と「電気・ガス業」、「運送業」では監査法人の異動はゼロだった。

市場別 東証スタンダードが126社で最多

 市場別では、「東証スタンダード」が126社(構成比52.2%)で最も多かった。次いで、「東証プライム」が56社(同23.2%)、「東証グロース」が55社(同22.8%)と続く。
 2018年から2021年までの旧市場では旧東証1部の最多が続いていたが、2022年は「東証スタンダード」が最多だった。


 公認会計士・監査審査会が2022年7月に発表した「令和4年版モニタリングレポート」によると、2022年3月末で監査法人数は276法人となり、監査法人数は近年増加傾向が続いている。一方、所属する常勤公認会計士数の分類では、25人未満の中小法人が全体の90%超を占めている。
 大手監査法人から準大手・中小の監査法人に変更する上場会社が増えており、監査の担い手としての中小規模の監査法人の重要性がこれまで以上に高まっている。こうした中、金融庁はここ2〜3年、複数の中小監査法人が業務改善命令などの処分が相次いだことを受け、監査法人自身の体制を強化する必要があるとして現在、中小の監査法人に対し任意となっている現在の指針を改定し、体制強化を目的とする統治指針の受け入れを2024年から原則義務化する。また、監査する企業数に見合う体制を整えているかなど、情報開示の充実も求める。
 上場企業は、2013年の約3,400社から2022年末で約3,800社と、10年間で約400社増えている。
監査法人は会計士の人数確保を迫られる一方、不適切会計が判明する上場企業が後を絶たず、より厳格な監査体制の確立が求められている。コロナ禍に加え、急激な物価高、人手不足などから業績悪化に陥り、不適切会計を行う企業が増えるリスクが高まっている。中小監査法人がどれだけ不適切会計を未然に防げるか、また毅然と指摘できるか、監査法人の動向もまた注目される。