旅行中は友達やパートナーと一緒にいる時間が長くなります。仲が深まれば最高ですが、まれに友達と険悪なムードになってしまうことも…。

楽しみにしている旅行だからこそ、ちょっとの違和感が大きな問題になってしまうこともあるはずです。せっかく旅行に行くのなら、楽しい思い出をたくさんつくりたいですよね!

そこで今回は、行動心理士の長谷川ミナ先生に、旅行中の相手とのコミュニケーションの取り方やトラブルにならないためのコツなど、旅行前にチェックしたいポイントを教えてもらいました。

【INDEX】


旅行中のトラブルの原因
トラブルになる前に覚えておきたいこと
トラブル回避のためにできること
旅行中に何もしてくれない友達・パートナーへの対処法
旅行中の話し合いで意識すること
長谷川先生がおすすめする旅行中に友達と距離を取る方法
関係が悪いまま旅行を終えたときの対処法
最後に…

旅行中のトラブルの原因

普段はとても仲がいいのに、旅行中はなぜか思わぬところでモヤモヤしてしまう…。そんな経験は誰しもあるはず。よくあるトラブルと原因について長谷川先生にお聞きしました。

「旅行となると、宿や交通手段の手配、食事や観光の場所の選択など、一緒に決めることがたくさんありますよね」
「旅行にいる間はずっと友達・パートナーといることになりますから、時間の共有が必然となり、そうした中で、相手との間にトラブルが起こってしまうのです」

長谷川先生によると、よくあるトラブルの原因は、大きく分けて以下の2つだそう。


相手と自分の価値観の相違
一方に負担がかかりすぎてしまう

価値観の相違が起こりやすいケース

旅行中に相手との「価値観の違い」が、トラブルの原因になってしまうことは少なくないはず。特に一緒に過ごす時間の長くなる旅行では、 些細なすれ違いが積み重なり、ストレスになってしまうことも。自分に当てはまっていないか、以下の代表的なシチュエーションをチェックしてみて。


支度が遅すぎて乗るはずの電車を逃してしまった
宿泊先のホテルで荷物が散乱していて快適に過ごせなかった
食事中や移動中に携帯でSNSばかり見ている
相手は食事にお金をかけたいけれど、自分はホテルにお金をかけたい

長谷川先生は、価値観の違いについて次のように話します。

「これらは生活習慣や金銭感覚の違いなどの価値観の違いです。自分とは違う行動パターンや考え方の違いに直面したとき、誰しもストレスが生じてしまうのです」

一方に負担がかかりすぎるケース

旅行で計画をたてるときに役割を分担するのはとても重要なこと。どちらかの負担になれば、トラブルの元になってしまいます。一方に負担がかかってしまう場面として挙げられたのは以下の通り。


ホテルや食事の場所決めや予約などを相手に丸投げする
急に不機嫌な態度になる

このような場面について、長谷川先生はこのように詳しく説明します。

「例えば、お昼ご飯をどこで食べるか決めるときに『私はどこでもいいよ』と言ってまったく調べてくれない上に、レストランを提案してみると『今はイタリアンを食べたい気分じゃない』と返したり、旅行中に『疲れた〜』とマイナス発言ばかりにする相手にうんざりしてしまうことをよく相談されます」
「『なんで私ばかり調べなきゃいけないの!』や『旅行が楽しくないのかな?』と思うことで、自分ばかりが負担を感じてしまいイライラを募らせてしまいます。自分からしたら迷惑をかけているつもりはなくても、実は相手にとってはそれが苦痛の原因になっていることは多々あるので、注意が必要です」

トラブルになる前に覚えておきたいこと

では、トラブルを未然に防ぐにはどうすれば良いのでしょうか。長谷川先生は、相手には相手の価値観、自分には自分の価値観があるということを、頭に入れておくことが大切だと言います。

「人は過ごしている環境や育った境遇などによって、さまざまな言動や考え方、行動が生まれます。すべてが合う人はいませんし、完璧な人もいません。もし相手との相違があったとして、それに対して度々イライラしてしまうと、相手に振り回されてしまいます」
「相手に振り回されると、自分だけがマイナスの感情を背負い、結果的に損をするのは自分です。そうならないためにも、自分と相手の自我境界線を引きましょう。相手には相手の考え方があり、自分には自分の考え方があるんだと、違いを受け入れて。『こういう考え方もあるんだな』と淡々と受け流す方が自分のためになります」

トラブル回避のためにできること

旅行前の計画や役割分担でトラブルを回避できると長谷川先生は言います。必要なことを相手と共有することで事前に準備ができるので、以下のポイントをおさえておきましょう。

スケジュールにゆとりを持つ

時間の余裕は、心の余裕ともいえます。予定を詰め込みすぎるよりも時間に余裕をもって行動するほうが、気持ちにもゆとりができます。

「旅行中は、天候によるスケジュール変更や疲労など、想定外のトラブルがつきもの。そのため、いつもより多めに一息つける時間をつくるなどして、焦る気持ちが湧かないプランづくりができると良いでしょう」

あらかじめお互いの要望を共有しておく

お互いの言動にモヤモヤしながら旅の時間を過ごしては、旅行が台無しになってしまいます。事前にもっと自分のことや相手のことを知る機会を設けることも一つの対策になります。

「たとえば、『体力に自信がないからあまり長くは歩けない』や『このスポットにはどうしても行きたい』など。事前にお互いの意見を知っていれば、プラン作りもスムーズにできますし、お互いの要望が満たされることで満足のいく旅行になるはずです」

旅行中の役割分担を決めておく

自分の役割があることで自然と責任感を持つことができます。計画をよりスムーズにできるので、分担内容を明確化させておくことは、心理学的にみても効果的だと言えるそう。

「役割分担を決めるときは、相手の得意な分野や、やりたいことを尊重してあげるようにしましょう。例えば、ホテル探しを苦に感じない人に予約をお任せしたり、旅行先の食べ物に詳しい人にレストランを決めてもらう、などです」
「相手にお願いする際には、『この分担はあなたがしてくれた方がより楽しくなりそうだから』と相手が気持ちよく取り組めるような伝え方をしましょう。人から必要とされることは誰でもうれしいことですので、お互いを尊重した方法を取るようにしましょう」

事前のプランで別行動を決めておくと◎

旅行の前の話し合いで別行動を提案するのも効果的。お互いに気持ちよく旅行の目的を果たすことができれば、旅の満足度もアップします。

「それぞれが楽しめる時間を作った方が、お互いにとってストレスフリーであることも。友達やパートナーが買い物にかける時間を長く取りたいのであれば、相手にはしっかりその時間を楽しんでもらう。その間に自分の行きたいところに行く、というように、それぞれが有意義に時間を過ごした方が満足できるはずです」

寝室は別にすることもおすすめ

寝室は別にすることもおすすめ“自分だけの空間”を確保することは、トラブルを回避するのにとても効果的と言えるそう。

「旅行では毎日一緒に過ごすことになりますから、どうしても相手の嫌なところにも目が行きやすくなってしまいます。自分だけの時間、自分だけの空間を確保することで、相手のことを必要以上に見る機会を減らすことに繋がります」

旅行中に何もしてくれない友達・パートナーへの対処法

いざ旅行へ行ってみると自分の負担が大きかった、なんてこともあるはず。長谷川先生によると、そういった場合は相手に“迷惑をかけている”という認識がないことも多いそう。

「先にもお伝えしましたが、相手の考え方と自分の考え方は違います。もしかしたら相手は、自分がしていることに対して、喜んでやってくれていると思っている可能性もあります」
「相手にとっては“苦手”なことだから、お願いしたいことなのかもしれません。それは実際にお互いの本心を聞いてみないとわからないこと。何もしてくれないからと言って我慢し続けるとストレスが溜まって、必要以上に相手を嫌いになってしまう恐れもあります。まずは、自分の意見を伝えて相手の意見を聞いてみることです」

旅行中の話し合いで意識すること


感情的に不満を伝えない
相手の考えを冷静に聞いてみる

「なんでなにもしてくれないの!」と感情的に伝えるのではなく、相手と“意思疎通”をするという意識を持つようにしましょう。

「話の中で、例えば友達は道案内が苦手なことなのだとわかれば、自分がやった方がいいことだと判断できます。疲れて考えることができない状態だったのであれば、休憩時間を設けるなど対策ができるはずです」
「お互いの状況をヒアリングすることが大切です。押し付け合いのような気持ちがあると、結局どちらかが負担を感じてしまいます。ここは、お互いにとって何が一番ストレスにならないのか。それを軸に物事を決めるようにしましょう」

もしも喧嘩になってしまったら…

事前にどんなに準備していたとしても、トラブルが起きやすいのが旅行。相手との空気が悪くなったときには、早めに対処するのが吉。

怒りや悔しさのようなマイナスな感情を抱えると、心に余裕がなくなり、視野が狭くなってしまいます。それによってさらにイライラしたり、お互いに不用意な発言をしてしまう事態にも発展するそう。

「旅行中は、どうしても相手との心理的距離(親密度)が近くなりますから、相手のことに必要以上に目が行き、いつもよりイライラする気持ちが高ぶりやすくなりがちです。なので、気持ちが抑えきれなくなってしまった場合は、いったん物理的に距離を取るようにしましょう」

長谷川先生がおすすめする旅行中に友達と距離を取る方法


一人でカフェに行って心を落ち着かせる
日光を浴びながら外をゆっくり散歩してみる

まずは お互いに気持ちのゆとりをつくることからはじめましょう。きっと旅行に行くための目的は「楽しむこと」や「リフレッシュする」など、プラスな目的だったはず。

楽しい気持ちで旅行を過ごすにはどうしたら良いのか、お互いが譲歩できるポイントを探ることです。

関係が悪いまま旅行を終えたときの対処法

「お互いに『自分が思う正しさ』を主張し合って、納得できていないということがあるかもしれません。人はそれぞれ価値観が違います。相手を自分の価値観に合わせようとすることは難しいことですし、違っていて当たり前ということをもう一度思い出して」

と、長谷川先生は言います。

自分の感情を落ち着かせて

一度、自分の気持ちを整理することが重要。落ち着いてフラットな気持ちで相手を見られるように心がけてみましょう。

「相手の嫌な部分ばかりを思い返してしまうと、いつまで経っても心のモヤモヤが晴れません。自分の心の負担をなくすためにも、負の感情はすぐに手放すようにしましょう」

譲歩できるポイントを話し合う

良好な関係を築くためにはどのように接するのがいいのか、譲歩できるポイントを冷静に話し合うようにしましょう。

「自分ではそんなつもりがなかったことが、もしかしたら相手にとっては嫌味に聞こえていたかもしれません。それが判明したら、相手の前では言わないようにする、知らぬ間に迷惑をかけてしまっていることがあったのであれば、素直に謝ることが大切です」
「感情でぶつかるのではなく、思ったことを正直に伝えるようにしましょう。お互いが“前向きな意識”を持ってアプローチすることで関係の修復に繋がります」

話し合いをする

相手との関係性をきちんと理解した上で、解決できる見込みのある話し合いかどうかを見分けることが重要です。

「相手は自分に対して、もともと恨みや妬みなどが潜在意識としてある可能性もあります。もしそのような言動が見られたら、攻撃し返すことはNG。相手の気持ちの問題ですので、自分が巻き込まれる問題ではありません」
「一緒にいるときにご機嫌を取ったり、気を使わないと成り立たないような、自分が不利な立場である関係は、本来あるべき友達・パートナーではないのかもしれません。今後の付き合いは距離をとるなど、自分を守ることを優先して考えましょう」

最後に…

一生の思い出になる旅行では、「旅の目的」をきちんと決めておくことをおすすめ! 最後に心がけておきたいポイントを長谷川先生に聞きました。

「具体例としては、『名物グルメを食べたい』や『パワースポットにいく』、『温泉で癒されたい』など。お互いが旅で何をしたいのかをあらかじめ決めることで、意見の衝突もなくなりやすく、目的を叶えるためにお互いが前向きな気持ちで協力し合うことができます」
「目的が達成できると、より旅への充実感が高まり、楽しい思い出として記憶に残りやすいので是非取り入れてみてください」

旅行では友達・パートナーへの思いやりやコミュニケーションが大切! お互いが擦り合わせながら、楽しい記憶の残る旅行づくりを心がけてみては…?

■今回お話を伺ったのは…

行動心理士 長谷川ミナ先生

約10年のOL生活を経て、行動心理士に。一児の母。雑誌『with』公式サイトにて「OLセラピー」連載、「PHPスペシャル」などで執筆。日課は瞑想すること。祖母譲りの強い直感で分かるオーラに加え、行動から他人の心理を読み取り、悩みやモヤモヤをひも解く。ブログ「行動心理士 長谷川ミナの『毎日セラピー』