今回の研究の概要(画像: 東京医科大学の発表資料より)

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 眠っている間に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群は、睡眠が浅くなってしまうだけでなく、様々な健康への影響があることが分かっている。東京医科大学らの研究グループは、ラットを使った実験により、妊娠中に睡眠時無呼吸症候群のような繰り返しの低酸素状態にさらされることで、成長期の仔に関して、骨格筋の働きや運動能力の低下に繋がることが分かったと発表した。

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 今回の研究は、東京医科大学の林由起子主任教授、和田英治講師、法医学分野の前田秀将准教授の研究チームと、東京医科歯科大学の小野卓史教授、細道純准教授、Wirongrong Wongkitikamjorn大学院生の研究チームとの共同研究チームによって行われた。そしてその結果は、12日発行の国際科学雑誌「Frontiers in Physiology」に掲載された。

 睡眠時無呼吸症候群は、10秒以上の呼吸停止が一晩に30回以上、または1時間に5回以上起こる疾患だ。無呼吸は空気の通り道が塞がることによって発生する。男性に多く、肥満や首が短かい人、舌や舌の付け根が大きい人、顎の小さい人などに多く起こる傾向がある。

 現れる症状としては、いびきや夜間の頻尿、昼間の眠気や集中力の低下などがある。この状態が続くと、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が、通常の約3〜4倍高くなることが分かっている。

 妊娠中は体重増加が起こりやすい時期であり、その結果、睡眠時無呼吸症候群も起こりやすくなる。近年妊娠中の栄養状態などの環境が、出生後に影響を与えることが、明らかになってきている。

 研究グループは、睡眠時無呼吸により生じる低酸素状態が胎児、そして出生後の成長に与える影響を調べるために、妊娠ラットを用いて研究を行った。

 間欠的低酸素状態に曝露された妊娠ラットが出産した仔は、出生時にやや低体重で呼吸状態に異常があることが判明。その後成長して大人になってからは、体重の増加や血糖値が下がりにくい状態、学習機能障害が起こることが分かった。

 今回は、出産した仔ラットを5週齢の成長期まで観察した。すると、低酸素状態にさらされた仔ラットで運動能力の低下が見られたという。また骨格筋での代謝異常、毛細血管密度の低下、アディポネクチン受容体減少などの変化が見られた。この代謝異常は、全ての骨格筋で起こっているわけではなく、呼吸筋や下腿筋のみで低下が見られたという。

 これらの結果より、妊娠ラットが低酸素状態にさらされることで様々な変化が見られることが分かった。さらなる研究により、今後人間における、妊娠中の低酸素状態が出生児に与える影響について検討され、妊娠中の睡眠時無呼吸症候の治療や対応に繋がることが期待される。