ルフトハンザ航空が保有する「地下トイレ」を持つ“隠れた珍旅客機”、エアバスA340-600が今後増備される予定です。退役濃厚だった同機が一転、なぜここで運用機数を伸ばすのでしょうか。

そもそも「退役対象」だったのが一転

 ドイツのルフトハンザ航空が2023年第2四半期にも、4発ジェット旅客機「エアバスA340-600」を現在の5機体制から10機体制に拡大し、運用する予定です。同社のA340-600は、2021年3月公開の年次レポートで退役対象となっていましたが、一転して2022年夏ダイヤから商業運航へ再投入。さらに今年から、その運航機数を拡大する見込みです。なぜこのようなことが起こっているのでしょうか。
 
 このルフトハンザ航空のA340-600は、“隠れた珍旅客機”として、一部航空ファンの注目を集め続けている旅客機です。


ルフトハンザ航空のエアバスA340-600(画像:ルフトハンザ航空)。

 A340-600は、エアバスの旅客機のなかで最も長いモデルで、全長は約75.3m。ルフトハンザ仕様機では、8席のファーストクラス、44席もしくは56席のビジネスクラス、28席もしくは32席のプレミアムエコノミー、189席もしくは213席のエコノミークラスをもつ4クラス構成の国際線機材です。

 また客室のレイアウトも特徴的で、通常の旅客機であれば、客室の各区画のあいだにトイレが設置されているのが一般的です。それに対し同社のA340-600のトイレは、客室から階段で下に降りたところにも設置されています。

 機内のレイアウトは航空会社が選ぶことができますが、同モデルを導入した会社のなかでもこの「地下トイレ」を採用した航空会社は、ほぼ類をみません。このようなトイレ配置を採用した経緯について同社は明言していませんが、一般的にこのレイアウトでは、トイレを設置するスペースをそのまま座席にできることから、席数を増やせる、というメリットが考えられるでしょう。

A340-600増備の理由は座席構成?

 退役寸前だったルフトハンザ航空のA340-600が相次いで運用に復帰しているのは、その座席構成を理由としています。

 現在同社では、ファーストクラスの需要が高まりを見せているとのことですが、現在同社で運用中の旅客機で、ファーストクラスを搭載しているのは、ボーイング747-8のみとなっています。A340-600の運用復帰によって、このファーストクラス需要の取り込みを狙うと見られます。


下から見たルフトハンザ航空のエアバスA340-600(柘植優介撮影)。

 複数の航空メディアによると、今回復活する5機のA340-600は、フランクフルトを拠点とする長距離国際線へ投入される見通しとのこと。

 一方でルフトハンザ航空では、ファーストクラスを搭載した最新機材「A350-900」を今後受領する予定。それにともなってA340-600はその役目を終えると見られています。この“隠れた珍旅客機”の増備は、一時的なものと見たほうが良さそうです。

【動画】まるでダンジョン! ルフトハンザ航空のA340-600の地下トイレに潜入